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精神科医が分析する「大塚家具」お家騒動の真の原因とは? #1 きょうだいコンプレックス

きょうだいといつも比較されて育った。きょうだいに嫉妬や怒り、憧れをおぼえる。特別扱いされるきょうだいがいる。きょうだいのために我慢してきた……。少しでも当てはまると思ったあなたは、「きょうだいコンプレックス」を抱えているかもしれません! 精神科医、岡田尊司さんの『きょうだいコンプレックス』は、そんな「きょうだいコンプレックス」の実態と、克服法を教えてくれる本です。一部を抜粋してご紹介しましょう。

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家族心理に根ざした対立構造

先頃、某大手家具店の内紛劇が、巷でも話題になり、連日のようにマスコミを賑わせた。一代で会社を急成長させた会長と、跡を継いで社長となった長女との間の確執は、経営権をめぐる争いにまで発展した。父親側には専務である長男がつき、長女の側には残りの他のきょうだいがつくという構図であった。

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長男は芸術系の大学の出身で、経営にやや疎いこともあり、父親の考えを従順に受け入れていたという。一方、長女は有名な国立大学経済学部出身で、経営にも自分の考えをもっていた。そのため、父親と対立することとなったのである。

他のきょうだいたちが長男ではなく、長女の側についたのは、長女が弟妹たちの母親代わり的な存在だったためとも報じられているが、もう少し穿った見方をすれば、長男がとりわけ可愛がられていたことへの反発が、他のきょうだいの間で共有されていたのではないか。

と考えると、父親と母親と長男の三人vs他のきょうだい全員という対立構造になった理由も、納得できる気がする。

権力は、もっとも幼い自己愛となじみやすいものである。会社という権力構造も、一つ間違って掣肘機能を失い、ワンマン社長の帝国と化すと、自己愛の帝国となる。ワンマン社長の自己愛を満たすことが、会社の無意識的な目的となる

社員たちは、好むと好まざるとにかかわらず、帝王として君臨するワンマン社長の自己愛を満たすために動かされることとなる。

「同族経営」によくある悲劇

親族で会社を経営しているという場合には、親やきょうだいの関係が、そのまま権力構造や利害関係となって表れるので、きょうだい間の葛藤やコンプレックスが、より先鋭化した形をとりやすい。

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きょうだい同士が争うような場合でも、そもそもの原因を作っているのは、ワンマン経営者でもある父親(母親の場合もある)であるという場合がほとんどだ。

父親は父親であると同時に、同族会社の頂点に君臨する経営トップでもあり、一般家庭の父親よりも大きな影響力と存在感をもつことになる。企業のトップである父親は、必然的に万能感や支配欲、征服欲に満ちた自己愛的な性格をおびる。自分の意思や基準が絶対であり、それに反するものはことごとく否定される。

子どもは幼い頃から、そうした父親の支配を受けて育つ。そのため弱い者を思いやる共感や自分を振り返る内省よりも、優越や支配への意志ばかりが肥大しやすい

もともとは優しい気質の持ち主の人でも、育った環境の力は大きく、思いやりを失い、冷酷で傲慢な人格になってしまう場合もある。それも結局は親から子どもに向けられた横暴な支配の圧力が、今度は子どもからもっと弱い立場の者に向けられているにすぎない。

子どもが成長し、経営にかかわり始めると、親子の間で、また、きょうだい間で、軋轢が生じ始める。それまで単なる家庭内のいざこざやきょうだい間のケンカにすぎなかったことも、社員や関係者を巻き込んだ対立に発展しやすい

それを収拾しようとして、トップである親が介入し、一方の側に有利な裁定を行ったりすると、問題は解決するどころか、もっと厄介で恨みのこもった事態にこじれていく。

それも、問題の根っこがどこにあるかを理解していない、親の表面的な対応の結果である。

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きょうだいコンプレックス 岡田尊司

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