見出し画像

#4 人間関係がみるみるよくなる「……の?」というひと言

国民的ベストセラーとして一世を風靡した『置かれた場所で咲きなさい』。著者の渡辺和子さんが逝去された現在も、幅広い読者に読み継がれています。しかし、この作品に「続編」があることを、みなさんはご存じでしょうか? 『面倒だから、しよう』は前作で語りきれなかった、より深いメッセージが詰まった「隠れた名作」。そんな本書から、中身を少しだけご紹介しましょう。

*   *   *

「の」の字の哲学とは?

私が勤めているノートルダム清心女子大学では、卒業間近の学生が神父さまのお話を聞く時間があります。

画像1

弁護士の資格も持つ神父さまは「僕は神父で結婚していませんが、弁護士としてさまざまなご夫婦の相談を受けます。そこで、あなた方に夫婦円満の秘訣を教えます」と話し始められました(三十年ほど前ですから、今と違って早く結婚する人も多かった頃です)。

「もし、夫が仕事から帰って『あぁ疲れた』といったら、『疲れたの?』といってあげてください。夏『暑かった』と帰宅したら、『暑かったの?』といってください。これが“の”の字の哲学です」とおっしゃいました。

「相手が『疲れた』といった時に『私だって疲れています』とか、『暑かった』という言葉に『夏だから当然よ』といえば喧嘩になります。まず、相手の気持ちを受け止めてください。自分の言い分もあるでしょう。しかし、その気持ちを少し抑えて相手の気持ちになる。それがとても大事なのです」と、おっしゃいました。

これは私たちにとっても大切なことです。

例えば、友だちの話の途中で、自分が話し始めていませんか? これは“の”の字の哲学をしていないことになります。

時には、それなりの応対をしなければならない場合もありますが、相手の気持ちを思いやり、ぬくもりのある応対をしましょう。“不親切ではない”ことに甘んじないで“親切”を心がけましょう。“冷たくない”だけでは不十分です。“ぬくもりのある”応対が求められています。

人づきあいの「2つのルール」

成熟した人に必要な民主的人格性の特徴に、「誰とでも温かくかかわっていける」、そして「思いやることができる」ということがあります。それは例えば、自分のすること、しなかったこと、つまり、行為・不行為と呼ばれるものが他の人に及ぼす影響を考えられる人になる、ということです。

画像2

「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなた方も人にしなさい」、これは聖書の中のゴールデンルールと呼ばれています。孔子の言葉にも、「己の欲せざる所は人に施す勿れ」とあります。

自分がされて辛いことを人にしない、こちらはシルバールールと言ってもいいかもしれません。そのゴールデンルールとシルバールールを私たち一人ひとり自分のものとしたいものです。

学生たちが話し合っているのを聞くともなしに聞いていると、一つのグループの中の一人が、「私はこの夏ハワイヘ行ってきたの」といっていました。するともう一人が、「あら、私はヨーロッパへ行ったわ」と、ハワイヘ行ったことを話したい学生の話の腰を折ってしまったのです。

私たちはとかく人の話の腰を折る、遮る、ということをしがちですが、気を付けたいと思います。民主的な人格性、つまり、私たちが大人としての特徴をあらわにするものの一つとして、相手の言うことに耳を傾ける、そしていうべき時にはいうけれども、いわなくていいことを相手の話を遮ってまでいわない。そこに「思いやり」があるのです。

それは自分の行為・不行為がどれだけ相手の人に迷惑をかけているか、いやな思いをさせているか、または幸せにしているかを意識して行動する、ということになります。

私たちには、耳が二つあって口が一つしかないことを覚えておきましょう。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!