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「1日1食」で3時間睡眠のショートスリーパーになれる?

日本人の5人に1人が悩んでいると言われる「不眠症」。どうすれば、朝までぐっすり眠ることができるのか? スッキリ目覚めるには、どうすればよいのか? そんなお悩みを持つ方におすすめしたいのが、精神科医・岡田尊司先生の『人はなぜ眠れないのか』です。今夜から試せる「睡眠コントロール術」が満載の本書より、一部を抜粋してご紹介します。

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ナッツには安眠効果がある

日中の規則正しい適度な運動は、良好な睡眠を促す効果がある。ただし、夜間の運動や激しすぎる運動は、逆に脳や体を活性化させ、交感神経が優位な状態をつくり出すことで、かえって眠りにくくしてしまう。

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また、寝る間際の大食は、夜中に胸焼けや胃部不快感で、眠りが浅くなる一因となる。

心を落ち着かせる働きのある伝達物質セロトニンは、アミノ酸の一種トリプトファンから合成されるが、トリプトファンは、ナッツ類や種子、チーズ、牛乳などに多く含まれている。ナッツやヒマワリの種などをとることは、うつの予防や安眠に間接的に効果が期待できる。

ただ、トリプトファンだけをいくら摂取しても、炭水化物が不足していると取り込まれにくいため、ほどよく炭水化物もとる必要がある。ダイエットのために、極度に炭水化物の摂取を避ける場合があるが、それは、うつや不安、不眠の原因にもなる。

安眠物質のメラトニンの原料となる物質も、チーズやカボチャの種、鶏肉などに豊富である。

牛乳は安眠効果があることが知られるが、トリプトファンを豊富に含んでいることからも、よい効果が期待できる。空腹を抑える効果もあるので、夜おなかが空いて眠れないときなどには、最適の飲み物である。

食事と睡眠の関係は、短い睡眠で過ごさねばならない人にとっても重要である。経験的によく知られていることだが、食事をたくさんとると、多くの眠りを必要とするようになる。

音楽家の三枝成彰氏は、かつて一日三時間しか眠らないで作曲できる秘密を、一日一食しかとらないことだと述べていた。彼によると、一食食べるごとに、人は三時間眠らないといけなくなるという。

一日一食で暮らしていたという点では、あの哲学者のカントも同じであった。彼は夕食をとらなかった。というのも、彼は夕方六時から十時十五分前まで読書をする習慣になっており、夕食をとると、その時間に眠気がさして、集中を妨げてしまうからである。

頭を冴えさせようと思えば、たらふく食べていたのではダメなのである。

昼のコーヒーが不眠の原因になる?

また、温かいお風呂で体を温めることは、安眠効果がある。リラックス効果とともに、いったん温められた体が冷まされて体温が下がっていき、眠りを誘発しやすくなるためである。

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夜間、メラトニンの分泌が活発になることで体温が下がるが、このタイミングと合うと、いっそう眠りに入りやすい。

湯上がりの直後は体温がまだ上がっているため、かえって眠りにくい。寝る直前に入浴するよりも、少し早めに入浴し、火照りが落ち着いてきた頃に床に就くのがよいとされる。夏場では二、三時間前、冬場は一、二時間前が一つの目安である。

夜、コーヒーを飲んでも、まったく睡眠に影響のない人も多い。しかし、不眠症がある人では、神経過敏の傾向があり、カフェインに敏感なことが多い。カフェインは、神経細胞の中のカルシウムの濃度を高める作用があり、それによって神経細胞の興奮性が高まる。その作用時間は、かなり長く、敏感な人では二十時間も持続する

つまり、昼食のときに飲んだコーヒーが、翌朝まで影響することがある。カフェインに過敏なことが多い不眠症の人では、少なくとも半日程度は影響が出ると考えて、飲用時間を考慮したほうがよい。

できれば朝だけ、せいぜい昼食までが安全限界である。午後三時頃飲むと、夜中の二時、三時まで眠れなくなっても、まったく不思議はない。

コーヒーがもっとも影響しやすいが、緑茶も覚醒作用が強く、不眠傾向のある人では影響が出る場合がある。それ以外にも、カフェインや刺激物質が入った飲食物、たとえばコーラやチョコレートを一日の後半に摂取するのは、避けたほうが無難だろう。

タバコに含まれるニコチンも覚醒作用がある。喫煙する人では、寝る間際にタバコを吸うことは避けたほうがよい。

ホットミルクのような温かい飲み物は、安眠効果がある。先述したように牛乳には、安眠効果とともに、空腹を緩和してくれる作用もある