見出し画像

『ゲ謎』みてきた 子供向けではないって話

 先週末に見た映画、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』についての感想。
ゲゲ郎〜〜〜〜〜…______


 物語の舞台は戦後日本、主人公の一人である水木の職場の様子や電車内での喫煙シーンからもわかるように、今や平成も終わり令和の子供達には考えられないような「非コンプラ」な日常が送られていた時代、昭和31年である。本作はゲゲゲの鬼太郎の最新作であり、鬼太郎の親に焦点を当てた作品であるが、原作の冒頭につながる正確な時間軸なのかはわからない(調べてない)。

 鬼太郎は墓場から生まれた。そして目玉親父が鬼太郎の父親の精神を宿した目玉であることは誰もが知っている。2000年代に生まれた私は小学生の頃にゲゲゲの鬼太郎のアニメや実写映画を見ていたが、死んで墓に埋められた妊婦の腹から赤ん坊が生まれ、腐り切って溶けた死体の一部、しかも水分量が多く真っ先に腐りそうな目玉が動き出し、少女アニメの相棒キャラクターの如く主人公についてまわる、その設定のグロテスクさは今思うととてつもない。私は子供ながらにこれらの設定を把握しながら、健全に鬼太郎作品に親しんでいたのだから絶妙な塩梅である。

 しかしながら今回の『ゲゲゲの謎』はあの「鬼太郎」のアニメ映画でありながらPG 12指定のホラー作品であり、怪奇的な何かによって次々に人が死んでいく村、そこで明かされる鬼太郎誕生の謎に迫るストーリーである。また、今作におけるダブル主人公(と私は思っている)、鬼太郎の父(のちの目玉親父)と東京から来た記者水木を中心とする登場人物も、インターネット上で熱心なファンを産む理由となっている。

 子供の頃から現在に至るまで、漫画やアニメ、映画、朝ドラ等の多くのメディアを通して鬼太郎及び水木しげるの作品に触れてきた世代は、一反木綿やねずみ男など水木作品に登場する多種多様な妖怪たちの知識だけでなく、水木しげるの戦争体験とそこからくる反戦への思いを少なからず知っているのである。『ゲゲゲの謎』はそうした背景知識を持つ大人たちが改めて、水木作品において妖怪たちが体現する人間らしさ、そして帝国・植民地主義の劣悪さと根深さを再認識させられる作品である。

 私としては今後、『ゲゲゲの謎』が鬼太郎も戦争も知らない世代に見られるようになって欲しい。しかし殺人などのシーンだけでなく、子供への虐待や性加害が醜悪なものとしてだが物語の重要なシーンで描かれている点を踏まえると、子供向けに改変するのも難しく、ゲ謎は初めから大人に向けて作られた作品だと言えるだろう。

 そろそろクリスマスや年末で、冬休みだし映画でも見ようということがあるかもしれないが、鬼太郎の映画だからと内容を知らないまま子供連れで『ゲゲゲの謎』を見にいくべきではないので、世のご家庭は注意してほしい(大人はいっぱい見てください)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?