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#小説読みます その7

こんにちは。架空書店「鹿書房」店主、伍月鹿です。
先日の北海道で起きた地震、お近くにお住まいの方々はご無事でしたでしょうか。
北海道は大きな地震が少ないので、時折揺れるととても驚きますね……。その後余震などもなくて一安心です。

本日はツイッターハッシュタグ「#小説読みます」にて募集したインターネット上で読める創作作品の感想を書かせていただきます。
(順不同、短編~中編で募集したため、長編は途中までの感想となります。募集は現在締め切らせていただいております)
昨年の12月に募集し、結局6月まで引っ張ってしまい申し訳ございません。
今回で反応いただいた分は全て読ませていただきました。

なお、一部の反応いただいた方に関して、ツイッターアカウント上で作品を見つけられなかった為、今回は見送らせていただいてます。ご了承ください。


千桐加蓮様「恋して、愛してます」

カクヨムにて公開中のボーイズラブを題材にした作品です
家庭環境が複雑な主人公の少女は、兄・望の恋人である風李に恋心を抱いています
また、少女の学校の教師である向井は風李の弟であることから、向井のプライベートを少女は少しずつ知っていくことになります
それぞれの秘密が少しずつ暴かれる中、それぞれが互いを尊重して淡々と日常が進む姿がリアルさもあってすいすいと読めてしまいました
今回は13話まで読ませていただきましたが、完結済みの作品のようです。どんな結末を迎えるのが楽しみです

作中に何度か登場する「生きているだけで、誰かを幸せに出来る存在」というフレーズが素敵だと思いました
国のお偉いさまが法律を変えない理由に「生産性がないこと」をよくあげておりますが、ならば異性間でなら認められる契約自体も見直す必要があるのではないのかしらん、と天邪鬼なわたしは考えてしまいます
生産性があっても幸福でなければつまらないと思うのですが、その契約に幸福であることを求めていないということですよね
ただ、こっちは純愛でこっちはどう、という話をしたいわけではないので、諸刃の剣である純粋なフレーズを多感な時期の少女が告げることにロマンを感じてきゅんとしました

また、風李が有名である理由が芸能人であるからではなく「実況者」というのに時代を感じました
少し前の少女漫画だとアイドルとたまたま知り合いで……という展開が主流だったように感じますが、いまはそうか……実況者なのか……笑

千桐様、素敵な作品ありがとうございます


いなひ様「禍人露零と乞い言葉」

https://ncode.syosetu.com/n5495hs/

小説家になろうにて公開中の和風ファンタジー小説です
古代樹から生まれた露零は「水鏡」と呼ばれる国へ案内され、国を取りまとめる伽耶と出会います
彼女と行動を共にするにつれて自らの役割をしっていく主人公が可愛らしく頼もしいストーリーでした

様々なオリジナルフレーズや世界観が登場しますが、ルビが振られているので物語に入りやすくて読みやすかったです
街の描写や、キャラクター、出てくる物事の外見描写が丁寧でわかりやすく、未知の世界と対面するわくわくを主人公と一緒に楽しむことができました
「猫気質」「朱爛然」「天掌燁」など出てくるフレーズがとにかく美しい
20話まで読ませていただきましたが、今度はどんなことが起こるのだろうとドキドキしながら読み進められるファンタジーは貴重です。楽しかったです

作中に何気なく「和」というフレーズが登場します
先日紅茶店の方が異世界ものを読んでいたらインドの地名である「ダージリン」などが登場して、異世界にもインドがあるのかと感心した、という呟きをみたのを思い出しました
ファンタジーものでどこまで世界を作るのかは、作者それぞれの執筆スタイルによると思いますが、わかりやすさを重視した共通認識で書くのか、どこまでもオリジナリティーにこだわるのかは、永遠の課題だと思いました
(ちなみに伍月鹿作品は実在する地名が出てくる作品以外は同じ架空の街が舞台になっていることが多いですといういらない補足)

いなひ様、タグへの反応ありがとうございました


zen+様「航宙船のマスターだが食生活が最悪だったので出稼ぎします」

https://ncode.syosetu.com/n9552hw/

小説家になろうにて公開中のサイエンス・フィクション・ファンタジーです
正式タイトル「航宙船のマスターだが食生活が最悪だったので出稼ぎします【超先進科学は役立たず? 最強のはずがエネルギー無】」

不慮の事故で亡くなった主人公は、魂として航宙船に運ばれ、船のマスターとして肉体も蘇生されることになります
慣れない生活も優秀なAIとの交流で少しずつ快適になっていきますが、タイトルの通り食事が質素で落ち込む姿が冒頭に描かれます
転生ものは様々なバリエーションがありますが、主人公が現代の人間として生きていた頃の価値観をしっかりと持っていて、それでいて新しい状況にポジティブに受け入れたり、改善を求める姿が共感しやすくて好印象でした
魔法が使えることにテンションあがったり、集団生活で起こりそうなトラブルや主人公の日本人らしい着眼点は、誰もが身近に感じることのできるストーリーなのではないでしょうか

ご飯が美味しくないのは、テンションさがりますね……
以前おすすめされた喫茶店でサンドイッチを頼んだら挟んであるトマトが美味しくなくてショックを受けたことを思い出しました。その経験をしてから、その土地に行った際は迷わずチェーン店でご飯を食べることにしています笑

zen+様、フォローありがとうございます。毎日更新お疲れ様です


玄野クロ様「夜のショタカフェへようこそ!〜僕は愛する人に身請けされる〜」

pixivにて公開中のボーイズラブ作品です
コンカフェ【仔猫-コネコ-】でショタを演じる主人公アヤ
昼間はショタカフェ、夜は娼館として営業をするカフェで、アヤに一目ぼれをしたという客から身請けの話を持ち掛けられます

特殊な設定とお店の様子を第三者のような目線で語ったあと、自然とアヤの目線に戻っていく導入が印象的です
上手だなあと何度も読んでしまいました
個人的に18禁シーンは作業だと思っているので、煽情的な濡れ場が書ける方を尊敬します
私は特に喘ぎ声を書くのが苦手でしょうがないため、最近はAIに頼っています。変な頼り方をしている罪悪感がすごいです
まだ作品は3話までの公開のため、アヤの今後がどう変化していくのか楽しみです

玄野様、タグへの反応ありがとうございます


恵介様「触れる」

pixivにて公開中のこちらも創作BL作品です
通う大学を卒業した作家の手伝いバイトをみつけた主人公は、訳アリの作家の家で書架の整理をすることに
見た目に反して本が好きな主人公と、生きること全般に興味がなさそうな気だるげな作家の対比が素敵

随所に描かれる主人公の本の扱い方から、作者様が本当に読書が好きで文章を書かれている方だということが伝わってきます
書きやすいボールペンに恋をして、スマホの使い方がわからなくて、相手のことはよくわからないままに匂いに惹かれる
そんなゆっくりとした恋ともなんともつかない居心地の良さで進んでいくわたし好みの話でした
決定的なものを持たないのに心地よく清算される人間関係や、魅力的なキャラクターに夢中になって読みました。映画を観たかのような満足感があります

「文学雑誌はあまり読まないから知らない。ダ・ヴィンチでさえ。だって好きな作家を追いかけると、きりがない。」
とてもわかります。とても、わかります
私は電子書籍に切り替えてから新刊書店に足を運ぶことが減りました
本屋をふらふらして、偶然の出会いに一喜一憂していた頃が時折懐かしくもあります。しかし、電子書籍で買えるたくさんの作品が収録された古典作品を、時間かけて読んでいるときの充実感も捨てがたい
どちらにせよ積読の量が減ることはないのが不思議です

恵介様、素敵な作品ありがとうございます


企画が終了して

改めましてお付き合いいただき、ありがとうございました
私自身、あまり人様の作品を読む習慣がなかったため、創作アカウントを通していろいろなジャンルや作家様に出会えて新鮮でした
思わず唸ってしまうような文章に出会うことも、つまりこの話はどういうことなんだろう、と描写に首を傾げることもありましたが、多くの方がこの途方もない「小説を書く」という行為を楽しんでいるのだと知れて嬉しかったです
文章の好み、作品の好みはそれぞれで、スタイルも目指すものも様々なので、全ての作品、全ての方と気が合うわけではないと思いますが、
企画を通して触れることができた方々に少しでも「鹿書房」の存在を伝えることができていたら、とも思います
今後はいいなと思った作品のレビューも習慣にしていきたいです

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