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#小説読みます その3

こんにちは。架空書店「鹿書房」の店主・伍月鹿です。
TOP4のオールナイトニッポン聞きました。
いつものラジオ動画のようなグダグダもありつつ、はじめて聞くリスナーや4人の全てを追いかけているわけでもないリスナーをフォローするような声の掛け合い(ちょっとしたエピソードの補填など)が絶妙で、
第一線を走り続けているだけのことはあるなと改めて実感しました。
牛沢氏のファンとしては、彼の淀みない提供読み上げに興奮しました。
声のお仕事いっぱい増えるといいな……と思います。

本日もツイッターハッシュタグ「#小説読みます」にて募集したインターネット上で読める創作作品の感想を書かせていただきます。
(順不同、短編~中編で募集したため、長編は途中までの感想となります。募集は現在締め切らせていただいております)


阿々亜様「死神はそこに立っている」

「カクヨム」にて公開されている全18話の完結済み作品です。
東亜医科大学附属病院初期研修医が主人公の医療サスペンス。
彼は寝坊をするし医師とぶつかり合うしで、研修医としては器用とはいえない様子ですが、医者として有利なある特技を持っています。

患者として病院に来た同級生と再会した主人公は、彼女に憑いた死神を祓おうと悪戦苦闘します。
簡単な治療で改善するという診断に納得できず、たった一人で戦う主人公がかっこいい。
展開と続きが気になって夢中で読ませていただきました。

医療ものは「チーム・バチスタの栄光」の田口・白鳥シリーズなどを少し読んだことがあるレベルです。
専門知識なのも何もない素人ですが、細かい描写や丁寧な描かれ方がリアルで、阿々亜様の取材力と知識が伺えます。
読んでいて楽しい上に勉強になるのは最強だと思います。このようなクオリティの高い話を読むことができてうれしいです。

主人公も作中に
「そんなものが見えて、今後自分はまともでいられるだろうか?」
と自問自答します。
物語の終結でそのフラグは丁寧に回収されますが、誰にも理解されない「不安」がずっと続くストレスに主人公はどんな変化をしていくのか想像してしまいました。
ここ何年か、医療従事者の方の負担は倍増していると思います。
医療の道を志す方に改めて尊敬の思いを抱くきっかけにもなりました。

阿々亜様、RTとリプライありがとうございました。



夢神蒼茫様「ボサボサ赤毛の眼鏡姫と吸血鬼になった少女」

https://ncode.syosetu.com/n3100hy/

ツイッターアカウントはジマー軍曹様、
作品のペンネーム夢神蒼茫様の「小説家になろう」公開作品です。
眼鏡をかけた赤毛のお姫様と、吸血鬼になった少女のやり取りを描く、愛と感動のヒューマンドラマ。
ファンタジーなのに描かれている登場人物たちの思考は現実的でもあって、すんなりと特殊な世界観に入り込める作風が印象的でした。

ところで、眼鏡っていいですよね。
わたしは昔から眼鏡キャラが好きです。
作品において眼鏡は知的なイメージをつけるアクセサリーかと思いますが、眼鏡に頼らないと何もできないという弱点を持つということでもありますね。そんな無防備さにきゅんとしてしまうようなところがあります。

父の狩りに連れられてきた森で、帰路を失ってしまう主人公。
まとまらない赤毛と、本に齧りつくことで視力を落とし眼鏡を手放せない身体になってしまった彼女を周囲は「ボサボサ赤毛の眼鏡姫」と揶揄しますが、本人は知らぬ顔。
良家の「姫」でありながら度胸と知識で森を進む姿に期待しか抱かない冒頭がわくわくさせてくれました。
読み進めていくうちに主人公の名が明かされるシーンは、思わず唸る上手さ。作者様もきっと様々な本を読まれるのだろうなと嬉しい思いになりました。

様々な種族が住まう城に辿り着いた主人公はタイトル通り吸血鬼の少女と対面しますが、二人のやり取りもまた痛快。
因縁やそれぞれの立場で生きるか死ぬかのやり取りが続きますが、主人公のレスバの強さが冒頭の設定に存分に活きています。
「神に反逆した」彼女はきっとこの先もたくましく試練を乗り越えていくのだと思います。
派手な吸血シーンやバトルはないのに、読み終わったあとに訪れる満足感。吸血鬼をテーマにした作品は大好きです。

ジマー軍曹様、RTとリプライ、ありがとうございました!



空川億里様「リア充爆発」

「カクヨム」にて公開のショートショートをおすすめいただきました。
タイトルがもう共感しか抱かせない。
インパクトのあるタイトルから続くSF展開に、楽しい気持ちで読み終えました。

世界にばらまかれたリア充爆発ウイルス。
それに対抗するワクチンと、ワクチンが効かない変異株……。
ここ数年ですっかり耳馴染みのある言葉になってしまった単語たちに、リアルタイムで生活し創作をしている人間の作品を、同時期を生きる人間が読む醍醐味のようなものを感じました。
リア充爆発ウイルスは例えばどこで爆発の火種をつけるのか、男女が二人きりで会えば「リア充」してる判定なのか、恋愛感情がないならセーフなのか、では愛が冷めきったカップルや夫婦は……、などとくだらないことを考察したくなる作品です。

空川様の他の作品もいくつか読ませていただきましたが、どの話もいまの世の中にちょっと疑問を抱くような切り口のストーリーでした。
わたしは接客業をしているので眼鏡の話にはあまり共感ができなかったのですが……、レーシックや眼内コンタクトレンズより眼鏡が安心なのはとてもわかります。(上記参照)

空川様、ハッシュタグへの反応とリプライ、ありがとうございました



西岡咲貴様「冥界の双翼」

「エブリスタ」にて公開されている近未来SF「冥界の双翼(そうよく)」
過酷な労働ストレス社会とベーシックインカムをテーマにしているとのことで、ストーリーは「住みたい国ランキングの上位」になった日本から始まります。

「AI人格インストール」と呼ばれる新技術により平和でストレスのない社会になった生活と、新エネルギーで豊かになった日々は夢のように描かれています。
しかし、物語は突如一転し「非労働者処置法」にて厳しく管理された世界が描かれ始めます。
親友を失い外務省の人間に協力を持ちかけられた主人公は、非労働者コミュニティがある山奥へ向かいます。そこで様々な現実に立ち向かうストーリーには一貫した怒りのようなものと芯の通ったテーマを感じました。

オリンピックやマイナンバー制度など、現代を生きるわたしたちにとって馴染みのものを未来の目線から語っているのが印象的でした。
様々な制度を用いて変わった社会も、目線を替えるとそれが救いであるのかはわからないのがリアルで切ない。

いわゆる「企業勤め」というものをしたことがない(ずっと接客業)ため、「労働のストレス」に関してピンとこない部分も多いのですが、世の中の人は毎日同じ時間に起きて仕事をし、当たり前のように五連勤をこなしていると思うと尊敬します。
なんならそんな生活ができる気がしなくて接客業を選び、昇進もしないままのんびり働いているので、社会をよくしようと積極的に思えないわたしは政府のいい餌なんだろうなと、作品を読みながら感じておりました。
作者様の実際の体験が元になっている部分もあるとのことで、自身の体験や考えを物語に昇華できる強さのようなものを勝手に感じております。

西岡様、いいねとリプライ、ありがとうございました。



Bird様「Fake Earth」

https://ncode.syosetu.com/n0556fr/

「小説家になろう」にて公開されているゲーム系エンタメ小説です。
今回はプロローグ部分から一章を読ませていただきました。

物語の冒頭、教師は新たに受け持ったクラス生徒にデジャブを覚え始めます。
最初は奇妙に感じ思い悩みましたが、次第にそれを活かして生徒たちのプロファイリングを作り上げていきます。
生徒を理解した教師が導くクラスは活気を持ち、優秀な人間として巣立っていく。そんな充実感を覚えていた頃、誰の面影にも重ならない生徒に出会います。
そんな不思議な少年・藤堂頼助が偽の地球を舞台にしたゲーム「Fake Earth」に挑戦する……というストーリーです。

状況の説明やコマンドなどの機能が多く、独自の題材を使用している部分でも読みやすく親切な設計です。
オープンワールドでゲーム世界を実際に歩いているかのような体験ができるゲームは増えていますが、似た感覚で読めるのは文章力のなせる技のように感じました。

所謂最強主人公である藤堂がかっこいいなあと思える演出が多く、頭の中で自然と映像が浮かぶのがすごい。
こういった仮想空間をくみ上げるのには、作者の知識や創造が絶対的に必要な反面、思い込みやメアリー・スーを徹底的に消す必要があるように個人的には思います。主人公が世界に疑問を持ちすぎるのも、適応しすぎているのも不自然になるものですが、そういった読む人間の想像を邪魔するものが出てこないのが印象的でした。
ニーアの世界に初めて触れたときのような感動を思い出しました。

Bird様、リプライありがとうございました。


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