「共用部だからこそ、みんなが関わっていい」(後編)

前編にて管理会社に頼れないケースとしてご紹介した「豪雨時」ですが、
マンションの居住者の性格がよく表れます。
私が担当している2つのマンションを例に説明したいと思います。

「なぜAマンションは、ルールや取り決めがないのに動くことができるんですか?」

Aマンション、Bマンションは、水はけが良くない場所に立地しており、豪雨時には浸水します。そのため数年前より管理組合備品として、止水板や土嚢を購入しました。
豪雨の警報が出ると、Aマンションでは、入居者が1階共用部に自然と集まってきて止水板や土嚢設置の準備を始めます。一方、Bマンションでは、誰も入居者は土嚢等を準備せず、管理会社に連絡する方もいました。

こういった状況を受けて、Bマンションの会合の際に、豪雨時には、管理会社も駆けつけることができない旨を改めて説明し、土嚢の作り方の実演を行いました。
すると、入居者の方から次のような意見が出ました。
「なぜAマンションは、ルールや取り決めがないのに動くことができるんですか?」
「土嚢設置を始めるタイミングについて、豪雨警報発令を基準とするのはわかりづらいような…」

私にとってこの意見は興味深く、色々考えることができました。

ルールや取り決めがないと、動くことができない。これはまさに「共用部だから、勝手なことはできない」という心理だと思います。
その場でビシッと回答することはできませんでしたが、Aマンションでは、ルールや取り決めを超えた「自分たちのマンションを守ろう」という気持ちが、入居者の方たちを動かしていると、私自身は考えます。

「共用部だからこそ、みんなが関わっていい」

それでは、Aマンションではどのように「共用部だから、勝手なことはできない」状態から「共用部だからこそ、みんなが関わっていい」という風土に変わっていったのでしょうか。

Aマンションでは、新築時より、お花が好きな入居者の方が数人おり、マンション敷地内の花壇に苗を植えて日ごろから手入れをされています。マンション敷地内の花壇については植栽業者にお任せしているケースが多く、入居者の方自身で手入れをしているマンションは少ないように思われます。

またマンションのエントランスの机に、季節にあわせて折り紙や陶芸などを飾ってくださる入居者の方もいます。


ちなみにマンション全体の反応も好意的です。「花壇の手入れやエントランスの机に飾りつけをしてくださる方に御礼を伝えたい」という声があがり、定例の会合の際にこれらの活動を取りあげて、感謝の意を伝える場を設けることができました。

Aマンションでは、以下のようなサイクルがあるといえると思います。

①共用部内でアクションを起こす人がいる
②マンション全体もそのアクションに好意的・寛容である
③そのアクションに対してフィードバックがある

これらが「共用部だからこそ、みんなが関わっていい」という文化を作り出しており、「自分たちのマンションを守ろう」という意識につながっているように私は思います。

次回は実践編として、Bマンションにおける「共用部だからこそ、みんなが関わっていい」という文化を作るチャレンジについて書きたいと思います。







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