土屋信

詩作、読書、映画鑑賞 https://garnet1789.blog.fc2.com/

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最近の記事

見えない扉

夜の底の壁を叩けば 奇妙な筏は漂ってゆく 君と君の魂を乗せて ネジをくるくる回して外すと 多次元は君の暗い部屋の 時間と距離の枠を取り払う 視よ、われ戸の外に立ちて- 黙示の頁が翻って 次元の結節点に灯火が揺らめく 牢獄の壁を見つめながら もう一人の自分が見えない扉を開く 焼き増しされた写真が舞う

    • 春の釭(ともしび)

      ガラスの脆い球が 母なる闇の中から 転げ落ちる その中で完結して 一つのドラマから もう一つ物語へと 手品のように 変わってゆく  しかし 決してゴングが 鳴ることはない 答えは他所にあるから 春の釭のように ※ふかき夜を花と月とにあかしつつよそにぞ消ゆる春の釭(ともしび) 藤原定家

      • 記憶のない場所

        迷路の隘路がすべてじゃない 出口は一つだから  レッテルしか信じない 乞食は道に迷う 自分の御旗と心中するのは あなたの勝手  旗は勝手に飜る 狂信的な 信者が何人死のうが関係ない 先に有るのは形のないもの 型にはめる馬鹿らしさ 気が付いたら始めとは似ても 似つかないあなたがいる ゲームの始まりのように 場所の記憶もない

        • ポッケに入れた月

          ポッケに入れた あなたの知らない世界 地球の内側から あなたの 内なる宇宙へと 吐息に揺らめく頁が開き 羽毛が靡き蠢く胎動  カオスに滑る氷の刃 完璧と言う名の嘘 瑕なき作品のつまらなさ エントロピー崩壊の 新たなる予感

          天使の分け前

          絵筆がキャンバスをうねり 結晶の奥のエメラルド 翠の瞳の眠る岩肌 女神の眼差しをよぎる風 みなものざわめきを越えて 青銅の沈黙に沈んでゆく 呼ぶ声は失われた天使の分け前 パズルのピースのひとカケラ 知っていても触れ得ない 張り巡らされた思いだけが 繋ぐ証し悪魔の取り分

          天使の分け前

          鳥は卵から脱出するために戦う。卵は世界。生まれようとする者はまず世界を破壊しなければならない。鳥は神のもとへ飛ぶ。神の名はアブラクサス 『デミアン』 ユングとヘッセ

          鳥は卵から脱出するために戦う。卵は世界。生まれようとする者はまず世界を破壊しなければならない。鳥は神のもとへ飛ぶ。神の名はアブラクサス 『デミアン』 ユングとヘッセ

          ブックダーツ

          銅のブックダーツが頁に 留まって豚の子は 野原を散歩する 鳥は卵を暖め 世界の崩壊を予感する 錆びついた剣を研いで 殻の上に座り 溢れる水を見ている 小人の老人 年老いた眠り姫は 古いヨーロッパ街道を 夢に見る 毒から逃れたつもりで ブランコに乗ったまま 爆弾を解除出来ない

          ブックダーツ

          分身

          眠っていた繊毛がふるえ 春の岸辺のめざめた 若草の萌え出る芽のように 黄金の頁は心の海と空に 広がる 燻み錆びついた扉は 開かれ時間の制約を解き放たれて 無重力の空間で 自分なかに降りてくる その時それは特別なものになる それ以外では何ものでもないものが 自分の分身になる

          欠片

          日差しが零れ落ち 夕陽の車輪が駆けて行く 内にも外にも音の調べが 響き合い記憶の部屋を 渡ってゆく 縦書きの原稿用紙 つけペンの息遣い インクの海から 釣り上げることばで 余白に描くプラネタリウム 星の誕生と死 死の欠片が 生の沈黙の叫びを呼び込む 死ぬ為に生まれた来た意味を

          一人でお茶を

          赤く燃える頁の縁が ピアノの音に乗って漂う 孤立する緑の中の青 黒いカードが反転し 赤いカードになる 三島由紀夫の切腹 老いさらばえることを 嫌ったローマ戦士の自死 機械で生かされている人達 死病の癌に慄き車に 轢かれる男 いつでも平等な死神は お気楽にお茶を飲んでいる

          一人でお茶を

          未完の告白

          フレームに 切り取られ肉体  壁に貼られた頁の コラージュが予感に慄く 素肌に散りばめた 不完全な記号 星の鼓動に呼応する 沈黙の音 息遣いが冷たい闇に白く漂い 秘密の出入り口を行き来して 完璧の嘘を告白する アンバランスの魅力を 吐き出しながら 不協和音があなたの裸身を包む

          未完の告白

          憂鬱

          形の不揃いな茶色い角砂糖 不戦勝の憂鬱は 蒼白い仮死の夢に沈み 霜月の朝の現の閾に微睡む 燃える短い蝋燭の炎を 向う側に幻視する時 鼓動するミクロとマクロは 同期し動悸する 蒼白い殻を破り転げ出る 赤裸々の魂が 翼を広げ飛び立つ

          夢想

          朝と夜がひっくり返り 夜の底が白くなった 白妙はしじまを覆って 黙った世界を包んでいた 蜜柑は炬燵の上で 夜を反芻し冬の到来を 告げる空の手紙を読んでいた 仄明るいランプのほやを 小さな子供の手が掃除する 道は通じていた山小屋から 海岸まで 岸の騒めきは 夢想の小部屋に打ち寄せる

          ひとつ目

          日記帳の表紙に描いた瞳 眼が一つ表紙のど真中に 夏休みの日記帳 女先生は聞く 何で書いたの? 好きなものを書けって言うから 書いただけ 子供は答えに困って 黙りこくった 当時テレビでやってた 刑事物のドラマのイメージがあった 説明が面倒だから黙ってた 先生は諦めて解放してくれた

          ひとつ目

          昼下がりの上弦

          天の川に浮かべた 星の船に乗る 二次元の地図と ウワバミの帽子 裏を抱え 陰を抱え 何処にも同じものはなく 全てがルビーの狂った輝き  フィルターと色眼鏡で 特別を平凡に置き換える 概念の嘘 名もない星も 名もない微生物も 鼓動するあなたの身体を 流れゆく

          昼下がりの上弦

          ゼロの起源

          灰色の自画像に滴る 赤い血 閉じられた窓の 緑の窓枠が慄く 星の光が目覚める夜 窓は開いて 彷徨う魂を迎え入れる 入り組んでいても 同じ流れを辿って アメーバーと象の夢に 流れ込み星の死と誕生の   揺籠の中で目覚め 閉じられていても 開かれている円の ゼロの起源に収斂し 放射する

          ゼロの起源