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書き散らし

数年ぶりにTwitterへログインした。
どうもログインしていない間に、名前がXへと変わっていたらしい。

おすすめタブや、レイアウト、知らない機能もいくつか。
幸運の青い鳥もどこかへ飛び去り、自分のツイートもはるかな昔で止まったままだ。そう言うと、ツイートじゃなくてポストだよ、と訂正された。
ポスト?ポストってなんだ。もう何もわからない。

たった数年いなかっただけで、気分はすっかりインターネット浦島太郎だ。
そんなことを思いながら、自身のプロフィールを開く。

目に入るのは「歌劇団」の文字。遠い日の記憶がよみがえる。

そういえば、かつての私は歌劇団だった。


富士葵さんというバーチャルYoutuberがいる。

聞いた話では、今年で活動6周年を迎えるらしい。実におめでたいことだ。

「歌劇団」というのは彼女のファンネームだ。
歌を得意とし、ミュージカルが好きな彼女が、そう名付けた。

私は彼女の歌が好きだった。
この空を超えて、世界のどこまでも響くような、そんな彼女の歌声が大好きだった。

たくさんの歌を聞いた。動画も見た。歌っている時の美しさと、奇想天外の企画動画のギャップにやられ、その魅力に酔いしれた。
彼女の羽化も見届けた。ライブにも行った。イベントにも参加した。コメントも、リプも送った。

かつては確かに、最前列で彼女の応援を受け取っていた。



いつから見なくなったのだったか。
何がきっかけだったのかももう覚えていない。
きっと大したことではなかったのだろう。
触れられないほど熱せられた鉄球でも、いずれはその熱を失うように、まるで自然の摂理がごとく。

Twitterを離れ、Youtubeを離れ、歌劇団という肩書だけをそこに残し、私はこの界隈に背を向けた。
歌劇団を名乗る宙ぶらりんのアカウントだけが、かつて熱を持っていたことだけを忘れ得ぬまま、静かにインターネットの海へと沈んでいた。


他方、時は無情なまでに過ぎていく。

毎週のようにたくさんの動画が公開され、生放送、コラボも増える。
いつの間にやらキクノジョーも戻ってきて、2人3脚で歩み始める。
オフィシャルコミュニティが生まれ、完全独立も果たし、富士葵の躍進は止まらない。

有機的パレットシンドローム、シンビジウム、THINK YOUR WORLD。
OVERTURE、CYMBIDIUM、CAROL。
数々のシングル、アルバムが生まれ、ライブでも歌いきれないほどにたくさんのオリジナルソングが、世に送り出された。

元々素晴らしかった歌にも、さらに磨きがかかった。
明るくカラフルな歌、沈み込み、寄り添うような歌、軽快に飛び跳ねるような歌。そのどれをも歌いこなし、表現の幅はとどまることを知らない。
全歌劇団が待ち望んでいた、歌ってみた動画も解禁(この表現が正しいのかはわからないが)された。

サシトーク、ファンミーティング、大葵菊祭。
画面の向こう側から、一方的に歌い、語り掛けるだけでなく、歌劇団からも思いが伝えられる機会もずいぶん増えた。



去る11月17日。

舞台は渋谷O-EAST。

富士葵活動6周年記念ライブ「Aria」。

これからは完全に独立して、道なき道を進んでいく。
その覚悟を込めた、富士葵の「独唱」だった。

舞台に独り立つけれど、決して孤独ではない。
キクノジョーがいる。歌劇団がいる。積み重ねてきた年月がある。

6年間の重みと、自信と、誇りが、少女の姿をかたどって、そこに立っていた。





白状しよう。

忘れたなんて、そんなものは嘘っぱちだ。

片時も、一瞬たりとも忘れたことなどなかった。

彼女の輝きに脳を焼かれ、身を焦がし。声も。姿も。何もかも。

歌劇団としての活動をしていなくても、彼女の目には映らなくても、自分自身がそうであるという自覚すらなかったとしても。

それでも到底忘れ得ぬほど、彼女が好きな私は、どうしようもなく歌劇団だった。

結局のところ、これはただそれだけのお話。





「久々にTwitterにログインしたら、色々と思い出した」というだけのことを、ずいぶん長々と書いてしまった。

ただの書き散らしであり、別段、この記事を通して伝えたいことというのもないわけだが、それではここまでお付き合いいただいた方にあまりに申し訳ない。

あえて何か言うとするなら、「葵ちゃんが好きなのであれば、ここではそれ以外には何もいらない」ということだろうか。

時間が取れずに長く前線から離れている人もいれば、メンタル的に今は応援できる状態にないという人、金銭的な支援が難しい人、各人に各人の事情があることだろう。

そりゃあまあ、行けるならライブには行った方がいいし、動画も見たほうがいいし、ファンクラブにも入ったほうがいい。
だけれども、同時に、それがすべてというわけでもない。

一番原初の、はじまりの気持ち。

「葵ちゃんが好き」というそれさえ忘れなければ、私たちは何度だって、どこからだって、そう、スタートできる。


本記事は、ファン主催の企画『富士葵ちゃんと振り返る Advent Calendar 2023』に寄稿したものであり、その募集要件にも「葵ちゃんが好きであること」と記載がある。
それ以外はダメダメなこんな記事でも、その要件だけは残念ながら満たしてしまっている。

ほか歌劇団員たちの力作がそろっているのだ。
一つぐらいこんな駄作があってもご容赦願いたい。


それではまたどこかで。



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