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読書感想 菊池寛 島原心中

菊池寛の短編小説です。

小説のネタを考えている語り手は、中学校の同級生で法律事務所に勤めている綾部という男に話をききにいきます。語り手はそこで、綾部が検事時代に経験した話をきくことになります。それは、島原遊郭で起こった女郎と客との心中事件でした。

 遊郭の建物の描写、女の遺体の描写、そして死にきれなかった男を尋問する描写……。
どれもこれも、実際に菊池寛がその目で見たのかな?って思うくらいの情景描写です。

なので、読んでいるこっちまで綾部と同じような気持ちを抱いてしまいます。綾部は女に同情してしまうのですね。

綾部は死にきれなかった男に尋問します。
男の主張は、女が先に自ら短剣で頸動脈を切って、その後自分も同じことを試みたが結局死にきれなかった、というものでした。
しかし尋問を進めるうちに、自殺幇助(自殺を手助けすること)の事実があったことがわかりました。ようは、中途半端に首を切って苦しんでいる女に男がとどめをさしたということです。

なかなか自分では、首の頸動脈を一発でしとめられないと思うんですよ。職業軍人でさえ、ピストル自殺に失敗することがあるみたいですもんね。私は絶対に無理です。
やるなら服毒か首つりか飛び降りですね。
(やらないけど……)

鬼滅の刃の無限列車編で、夢の中で自決を繰り返す炭次郎に対し魘夢が
「このガキはまともじゃない」と思うのは至極当然だと思います。
鬼にこいつはまともじゃないって思われるってすごいね。笑

この作品は、男の罪についてではなくて、この世の虚しさみたいなものを読者に問いかけている感じがします。

貧しい家に生まれたがために遊郭に売られ、十年以上苛まれ、それでも借金から逃れられず死を持って脱するしかなかった女の薄命について。

楼主のおかみが、死んだ女の指にはまっていた指輪を盗もうとしたことについて。そしてそれを阻止した綾部の「憤慨とも悲しみとも憂愁ともつかない、妙な重苦しい、そのくせ張り裂けるような」感情について。

思うことは人それぞれなのだろうなと思いました。






 

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