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中国で会社設立(法人設立)するための8ステップを解説

前回は「中国に進出する企業のよくある勘違い」と題して中国進出に際して注意しておきたい認識のすれ違いについて共有させていただきました。

今回はいよいよ中国進出のまとめとして中国で会社設立(法人設立)するためのステップを8つにまとめて解説させていただきたいと思います。

ここでは、もっとも一般的な進出形態である、現地法人としての会社設立(法人設立)について、流れを記載します。

STEP1:中国法人の会社名(商号)の予約(工商行政管理局)

中国における会社設立の第一歩は、希望する商号、つまり会社名の予約から始まります。この工程においては、地方工商行政管理局と連携して、特定の会社名について承認を得る必要があるのです。

中国法人として会社を設立する際、自由に名前を選ぶことができるのですが、これにはある特異なルールがあります。小規模な企業の場合、会社名にその地方の地名を必ず含めるというルールがあるのです。たとえば、「上海○○○飯店有限公司」といった具体的な形が一般的で、この名前から業態が一目で分かるように構成されているものが通例です。

この商号の予約には、工商行政管理局からの書類を取得する必要がありますが、この書類を手に入れることができれば、その商号は6ヶ月間有効となります。なお、この手続きに費用がかかることはありません。

このプロセスの概要から、中国法人としての会社設立は単なる形式手続きではなく、地域に根ざした法律と規制、文化との調和が求められる一連の工程であることが分かります。企業が中国市場への進出を考える際には、地方工商行政管理局との連携や地域ルールの理解など、慎重な準備と計画が必要となるでしょう。

STEP2:董事の選任

中国における会社設立(法人設立)の重要な一環として、董事(取締役)の選任が求められます。この選任の過程は、企業が中国市場に進出する際に、多くの戦略的配慮を必要とする部分であります。

董事の選任において最も特筆すべき点は、非居住者であっても取締役に就任することが可能だということです。これは国際的なビジネス展開において重要な柔軟性を提供するもので、多岐にわたる戦略的選択肢をもたらします。

しかしこの選択には、ある重要な制約が存在します。日本から現地への董事派遣の予定であっても、会社設立が完了するまで就労ビザの申請ができないため、非居住者としての取締役就任は不可能となります。このような制約があるために、進出初期段階では企業が直接董事を選任するのは困難とされる場合が多いのです。

このような背景から、初めて中国へ進出する企業の場合、会社設立代行業者や会計事務所、日系コンサル会社などに依頼する方が一般的となっています。これらの専門的なサービス提供者が、複雑な法律や規制を理解し、適切な選任のプロセスを助ける役割を果たすのです。

董事の選任は、中国市場への進出戦略の中で、非常に微細で繊細な部分を担っており、戦略的な意図と現地の法律、規制とのバランスを取る必要があることが理解されるでしょう。このプロセスは、企業が中国市場で成功するための基盤を築く鍵となるもので、細心の注意と専門的なサポートが不可欠です。

STEP3:会社設立(法人設立)のための章程(定款)作成

中国における会社設立(法人設立)の中核的なプロセスとして、章程(定款)の作成が挙げられます。この文書は、企業の基本的な枠組みや方針、運営の基盤を形成するもので、非常に重要な意味を持っています。

現実に、章程の作成は、会社設立代行業者や会計事務所、日系コンサル会社などが提供するフォーマットに従って進められることがほとんどです。このフォーマットが存在する理由は、各項目が法的に正確で適切に記載されることを保証するためであり、その重要性は言うまでもありません。

章程には、いくつかの基本的かつ重要な事項が記載される必要があります。その中で最も重要なのは、会社名、本店所在地、業務内容、資本金額、投資者投資比率、そして投資者(発起人)の氏名・住所・職業・引受株式数などです。これらの情報は、企業の法的な位置づけや機能、責任範囲を明確にするために不可欠なものとなっています。

また、投資者が董事に就任する際には、特別な注意が必要とされる事項があります。具体的には、日本の戸籍謄本に、日本にある中国在外公館の認証が必要となるのです。このプロセスは、董事の身元確認と信頼性の保証を目的としており、その重要性を念頭に置いておくべきでしょう。

中国における会社設立の流れは、多くの細部にわたって慎重な計画と実行が求められるものです。そしてその中でも、章程の作成は、企業の存在そのものを形成し、法的な基盤を築くための不可欠なステップです。このプロセスにおける各項目の正確な記載と、適切な認証プロセスの遵守は、中国市場への成功のための鍵となるでしょう。

STEP4:政府批准及び工商行政管理局にて会社登記

中国での会社設立(法人設立)の最終段階に至るプロセスは、地方政府による外資会社の批准と、工商行政管理局(日本の法務局に相当)における会社登記です。このステップは、企業の合法的な存在と事業の開始を確定する、非常に重要なプロセスとなります。

まず、地方政府による批准の過程は、企業が中国での事業展開に際して、各種法規と調和していることを確認する重要なステップです。この段階では、企業のビジネスモデル、投資計画、利益予測などが詳細に審査され、地方政府の承認を受ける必要があります。地方政府の批准は、企業の事業が地域社会と一体となり、中国の経済発展に貢献するものであると認識される象徴的な意味も持っています。

批准が終了後、次なるステップは工商行政管理局における登記申請です。この部分は、企業が正式に法的な存在として認められ、事業活動を開始するための最終的な手続きとなります。登記申請のプロセスは細かく、法的に精確である必要があり、そのため、通常は日系コンサル会社に批准や登記依頼をすることが通例となっています。彼らの専門的な支援によって、手続きがスムーズに進行し、必要な書類や条件が適切に満たされることが保証されるのです。

この政府批准及び登記のプロセスは、中国市場への進出の冒険を完成させ、新しい事業チャンスを開始する扉を開く重要な一歩です。この手続きは企業の誠実さと責任、さらにはビジネスの強固な基盤を築くものであり、中国での成功への道のりの始まりを意味します。この重要な段階を迎える際、専門的なガイダンスと支援を受けることで、未来への安定した一歩を踏み出すことができるでしょう。

STEP5:労働許可証及び就労ビザ(居留証)の申請

中国での会社設立が完了し、次のステップとして取締役などの赴任者のビザ申請が始まる段階になりました。このプロセスは外国人就労者が中国で正式に働くために必要な手続きで、労働許可証及び就労ビザ(居留証)の申請が含まれます。

まず初めに、赴任する取締役などのビザ申請が可能になります。**ビザが取得できれば、居住取締役として就任することができます。**このビザ申請プロセスは一見複雑に見えるかもしれませんが、通常、会社設立をサポートした業者や会計事務所が対応していることがほとんどです。

具体的には、**中国の場合、Zビザを日本の中国在外公館で取得します。**Zビザは外国人が中国での仕事を始めるためのビザで、このビザ発給後、30日以内に中国居留証に変更する義務があります。

次に、Zビザを使って入国した後、その間に地方労働局で「外国人就業証」の申請を行います。この証明書は通常1から2日間で下りてきます。外国人就業証を基に、居留証の申請に進みます。居留証には居留目的が書かれ、「工作」と記載されることが一般的です。居留証の申請は、各地の出入国管理所に行い、通常、20日間くらいで認められるプロセスです。通常居留証は1年間有効です。

この一連のプロセスは、企業とそのスタッフが中国市場で効果的に活動できるようにするための必要なステップです。専門的なサポートと正確な準備によって、このプロセスはスムーズに進むでしょう。中国での新しいチャプターが始まり、企業とその取締役は、中国の経済的機会を最大限に活用し、相互の成長と成功に貢献することができるのです。

▼STEP6:第一回董事会(取締役会)開催 (書面でも可能)

中国での会社設立が無事完了し、次の重要な段階へと進みます。それは、第一回董事会(取締役会)の開催です。この段階は、新設された法人の方針を確立し、重要な役割を担うメンバーを任命する極めて重要なプロセスです。

この最初の董事会は、会社設立後に迅速に開かれ、書面での開催も可能であるため、適切な時期と方法を選ぶ余地があります。この会議の目的は、董事長の決定や董事会での総経理(日本での代表取締役社長)の選任など、会社の運営における鍵となる決定を下すことです。

最初の董事会は、新しい企業の成功に向けた基盤を築く場でもあります。董事長は、会社の方針とビジョンを主導し、他の董事メンバーと協力して会社を前進させる役割を果たします。一方、総経理は、日常業務の運営と効率的な経営を監督する重要な役割を果たします。

この董事会では、会社の基本的な方針や運営に関する規則、将来の事業計画なども検討されるかもしれません。こうした議論と決定は、企業がその市場で成功を収めるための戦略を形成する基盤となります。

最後に、この第一回の董事会は、中国市場での成功への道を切り開くための重要な一歩であり、会社の信念と価値、目標とビジョンを形成する独特の機会でもあります。正しいリーダーシップと適切な計画によって、新しい会社は、業界でのリーダーとして成長し、市場での強力な地位を築くことができるのです。

▼STEP7:銀行口座の開設と資本金資金の送金

中国で新たに設立された企業が次に取り組むべき重要なプロセスは、銀行口座の開設と資本金資金の送金です。このステップは、新しい法人が実際に業務を展開し、財務活動を始めるための基盤を形成するもので、その重要性は極めて高いものがあります。

まず最初に、設立した会社名で法人口座を開設する必要があります。この段階で、異なる銀行では開設のための手続きや期間が異なることがあるため、詳細については、会社設立代行業者や会計事務所に確認するのが最良です。彼らの専門知識と経験は、このプロセスをスムーズに進めるのに役立ちます。

銀行口座が開設できたら、資本金額を送金できます。ここで特に注意すべき点は、中国の場合、銀行口座をいくつかのカテゴリーに分類する必要があることです。具体的には、資本金銀行口座と事業銀行口座を区別し、さらに、外貨口座(その通貨別)と人民元口座といった区別も求められます。

この分類の背後には、中国の銀行制度と規制に関連する特定の要件があるため、開設プロセスの中で間違いを犯さないよう、専門家と密接に連携することが重要です。資本金の送金プロセスも同様に、適切な手続きと認識が求められるため、専門家の支援を受けることが賢明です。

最後に、この段階は、新設会社が市場での活動を始めるための鍵となります。正確で適切な手続きは、会社の信用と透明性を高め、将来的な業務展開における基盤を築くのに重要です。銀行との関係は長期的なものであるため、この初期段階で信頼と信用を築くことは、企業が持続可能で成功するために不可欠なのです。

▼STEP8:会社会計士の選任

中国での会社設立(法人設立)のプロセスが進む中で、極めて重要なのが会社会計士の選任です。このステップは、会社設立後、すぐに選任する必要があるので、計画的に進める必要があります。

会計士の役割は、業務の成長と成功にとって中心的なものであり、会計士には公認会計士の資格が求められます。彼らの専門的な知識と技能は、企業が法規制を遵守し、財務報告の透明性と精度を確保する上で不可欠です。特に、中国では毎月月次決算を申告する必要があるため、最初の取締役会で選任してしまうことが一般的です。

さて、これまでに紹介したプロセスを一つ一つ慎重に検討し、頭に入れておくことが重要です。企業の進出に関する事業戦略を策定する際に、これらのフローをしっかりと理解しておくことで、経営者はより効率的かつ守備的に事業展開を進めることが可能になります。

今回紹介したプロセスは、成功への道筋を示す基本的なガイドラインであり、各企業の独自のビジョンと目標に合わせて調整することができます。

次回、私たちはより実務的な視点から、会社設立(法人設立)時に必要な書類・準備について詳しく解説させていただきます。

これから中国市場への進出を検討している方々にとって、より具体的で実用的なガイダンスを提供する予定です。企業の成功と成長への道は長いものですが、正しい計画と戦略、専門的なサポートによって、その道のりは確実かつ効果的に進めることができるでしょう。

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