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「出荷から逆算する生産計画」ナスの生育ステージの推移

前回は「ナスの生育ステージを分解して再構築」で、農業経営において、ナスの栽培リズムやパターンを把握することは重要であるという位置づけから開花状況や摘心時期の把握により、収穫の計画や作業のスケジュールを立てることができるという話をしました。

バランスの調整や気温変動に対する対策を行うことで、品質や収益性を最大化できるので、農業経営者はこれらの情報を経営戦略に活かし、効率的かつ持続可能な経営を実現することが求められます。

そこで今回はスケジュールの基礎となる軸をどこに置くかについて私の考えを解説したいと思います。

私の栽培スケジュールの基礎となる考え方は、お客様の要求に応じた出荷スケジュールから逆算して生産計画を立てることです。

例えば、量販店などの流通先が入荷スケジュールを持っている場合、それに合わせて販売計画を立てることができます。このような提案のできる生産者は、需要に合わせた生産を行えるために選ばれやすくなります。

そのため、私は流通の現場で一般的に使用されている「52週」という表現を採用して栽培スケジュールを作成しています。この考え方では、1年は12ヶ月あり、それぞれを52週に分けることで週単位のスケジュールを立てることができます。
このスケジュールを基に、作物の生育期や収穫時期を計画し、需要に合わせた生産を実現しています。


5月下旬(22週)

この時点では、ナスの株は成長を続けており、最初の果実である第1果は徐々に大きくなっています。主枝の成長も進み、第1主枝と第2主枝には第1花が咲いています。これは受粉を経て実として成長していく可能性が高い花です。

さらに、第3主枝と第4主枝では、新しい脈芽が第一節位に現れてきました。脈芽は将来的に側枝や花を形成する可能性があります。これはナスの成長と発展の兆しとして重要な段階です。

以上のように、ナスの株はこの時期において活発な成長と花の開花が進んでいます。株の管理や受粉の促進など、適切な対策を行うことで、健全な収穫を期待することができます。

6月上旬(23週)

この時期になると、第1主枝と第2主枝では二番目の花が咲き、同時に第3主枝と第4主枝の第一花も開花しています。このように、主枝ごとに花の開花が進行していく様子は、ナスの成長における自然の仕組みの一部であり、その規則性に改めて驚嘆します。

一般的なナスの株では、第1主枝は第3節位まで、第2主枝は第4節位まで成長していることが多いです。節位とは、主枝上における花や脈芽の発生箇所を指し、それぞれの節位によって花の出現順序や側枝の発生が決まってきます。

このような成長の観察は、自然界の驚くべきメカニズムを垣間見ることができるものであり、ナスの栽培においても重要な指標となります。これらの観察結果を踏まえ、株の管理や収量向上のための対策を講じることが求められます。

6月中旬(25週)

25週に入ると、第1主枝の第1節位と第2節位、第3主枝の第3節位、第4主枝の第1節位から出た最初の側枝が開花しています。この時点での開花数は合計で10花となっています。

この時期から開花する花の数が急激に増え始めるため、作物の栄養要求量も増加してきます。十分な肥料を供給することが重要です。株全体の成長と花の形成に必要な栄養素をバランスよく与えることで、健全な花の発育と収量の向上を促すことができます。

肥料の管理には注意が必要であり、株の成長や花の数に合わせて適切な時期と量で施肥することが求められます。栽培状況や地域の気候条件に応じて、適切な肥料管理計画を立てることが重要です。

6月下旬(26週)

一年の折り返し地点に入ると、日照不足が続いていた環境でも14花が開花していました。

この時期になると側枝の伸びは自由に許されますが、手入れを怠ると首が細くなるなどの不良果が多く発生する傾向があります。側枝の成長を放置しすぎると、株のバランスが崩れて果実の形や品質に影響を与える可能性があります。

適切な手入れを行うことで、側枝のバランスを保ちながら良質な果実の発育を促すことが重要です。側枝の伸び具合や間引きのタイミングに注意しながら、適切な摘心や支柱の設置などの管理作業を行うことで、ナスの健全な生育と収量の向上を図ることができます。

7月中旬(29週)

各主枝は順調に伸長を続け、成長を遂げていました。この時期になると、過密状態や成り疲れにより、落花する花が多く出現する傾向が見られます。

成り疲れによる落花は、ナスの生育過程で一定の現象として起こり得ます。花の数が増えるにつれて、株全体のエネルギーが分散され、果実の発育に必要な栄養が不足することがあります。

これを防ぐためには、適切な株間・株数管理や栄養の供給、適切な摘心や支柱の設置などが重要です。これにより、ナスの株全体の負担を軽減し、適切な花や果実の形成と成長を促すことができます。

また、病害虫などの管理も適切に行うことで、花や果実の落花を減らし、収量と品質の向上を図ることができます。環境や栽培条件に応じた対策を継続的に行い、ナスの健全な生育をサポートしていきましょう。

7月下旬(30週)

主枝は摘心位置まで成長し、ナスの樹の形が完成に近づいていました。枝の伸長に伴い、開花数も大幅に増加し、ピーク時には合計33花の開花が確認されました。

この時期には、主枝に着く花の数はほぼ終了し、側枝の花が主な開花源となりました。また、下部の節位では二次側枝も徐々に増えている様子が観察されました。

これらの花や側枝の成長は、ナスの収穫量と品質に大きく影響を与えます。適切な栽培管理を行い、栄養の供給や病害虫の管理を適切に行うことで、健全な花や果実の形成と成長を促進することが重要です。

さらに、枝の管理や支柱の設置なども忘れずに行い、植物の安定した成長をサポートしましょう。ナスの成長過程をよく観察し、必要な対策を適時に行うことで、収量や品質の向上を図ることができます。

8月上旬(32週)

主枝の先端部分でも側枝の開花が始まりました。

この時期は日照量が十分で気温も高いため、側枝は上方に伸びやすくなります。適切な手入れと肥培管理を行うことで、側枝の落花を最小限に抑えることができます。

側枝の成長をサポートするために、必要な支柱やトレリスなどの支持材を適切に設置しましょう。これによって側枝が安定した位置に成長し、開花や果実の形成が円滑に進むことが期待できます。

また、肥培管理においては、適切な栄養素の供給と水分管理を心掛けましょう。十分な栄養と水分は側枝の成長と花や果実の発育に不可欠です。しかし、過剰な施肥や水やりは逆効果となり、落花や品質の低下を引き起こす可能性があります。適正な量とタイミングでの施肥と水やりを行い、バランスの取れた肥培管理を心がけましょう。

側枝の健康的な成長と開花を促進することで、収量や品質を最大化することができます。注意深く栽培状況を観察し、必要な措置を適切なタイミングで行ってください。

八月のお盆過ぎから九月下旬まで

主枝の先端部分でも側枝の開花が始まりました。

この時期は日照量が十分で気温も高いため、側枝は上方に伸びやすくなります。適切な手入れと肥培管理を行うことで、側枝の落花を最小限に抑えることができます。

側枝の成長をサポートするために、必要な支柱やトレリスなどの支持材を適切に設置しましょう。これによって側枝が安定した位置に成長し、開花や果実の形成が円滑に進むことが期待できます。

また、肥培管理においては、適切な栄養素の供給と水分管理を心掛けましょう。十分な栄養と水分は側枝の成長と花や果実の発育に不可欠です。しかし、過剰な施肥や水やりは逆効果となり、落花や品質の低下を引き起こす可能性があります。適正な量とタイミングでの施肥と水やりを行い、バランスの取れた肥培管理を心がけましょう。

側枝の健康的な成長と開花を促進することで、収量や品質を最大化することができます。注意深く栽培状況を観察し、必要な措置を適切なタイミングで行ってください。

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