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ナスの主要病害と九つの処方箋

前回は「露地ナス栽培で発生する病害の特徴と対策」と題して、周年でナスの栽培をするためにも露地ナス栽培で被害を及ぼす病気、害虫の特性と、被害を防ぐ方法について紹介させていただきました。

ナスの栽培において、病害に悩まされることは多いものです。しかし、わたしの畑でも栽培の最適化を図ることで、無農薬栽培が可能となりました。

無農薬栽培を実現するためには、いくつかの重要な取り組みがあります。まず、健全な種苗の選定が必要です。感染していない健康な種苗を使用することで、病害の発生リスクを低減することができます。

また、土壌管理も重要です。土壌のpH調整や有機物の添加、水分管理などを適切に行うことで、健康な土壌環境を整えることができます。

さらに、生物的防除も有効な手段です。有益な生物を利用して害虫や病原菌を制御することで、農薬の使用を最小限に抑えることができます。

良好な栽培環境の維持も重要です。温度管理や通気、日照、水分管理などを適切に行うことで、ナスの健康な成長を促すことができます。

以上の取り組みを組み合わせることで、農薬を使用せずに健康的なナスの栽培が可能となります。ただし、病害の監視や早期発見、迅速な対処は欠かせません。定期的な畑の巡回や病害の兆候の確認を行い、必要な措置を適切に実施しましょう。

以下にご紹介する病害は、その症状の重さにはバラつきがありますが、症状が軽い場合には放置されがちです。
しかし、軽い症状でも放置してしまうと、年間を通して見ると収量や品質に大きな影響を及ぼす可能性があるため、むしろ注意が必要です。

根腐疫病

根腐疫病は、フィトフトラ属菌によって引き起こされる病害です。この病気は露地栽培では特に定植直後の6月頃から発生し、梅雨期に急速に増加します。

感染すると、根部が褐変し、根の量が減少し、細根はほとんど存在しなくなります。この病気の特徴として、指で根をつまむと側根の表皮が簡単にはがれ、中心柱だけが残ることが挙げられます。この特徴を観察することで、比較的容易に根腐疫病を判別することができます。

半身萎凋病

半身萎凋病は、糸状菌のバーティシリウム属菌によって引き起こされる病害です。

この病気は、七月上旬に冷涼地での露地栽培において頻繁に発生します。

初期の発病では、下葉に褐色斑が点在し、葉が次第にしおれてきます。

葉の状態の観察方法として、まず葉脈間が部分的に黄化し、その後徐々に褐変していきます。

ただし、この病気に似た症状を示す青枯病も考えられます。しかし、半身萎凋病では下葉の片側から黄化が始まることはありません。また、半身萎凋病では株の一部または全体が急に水分を失い、青いまましおれる特徴があります。

青枯病

青枯病は、ナスにおいて最も被害の大きい病害の一つであり、その病原体は細菌のラルストニア属です。この病気は高温時に発生し、露地栽培では梅雨明け頃から発病する傾向があります。

青枯病の特徴は、病勢の進行が非常に速く、発病後数日で株全体がしおれ、青枯れの症状が現れます。その後、約一週間程度で株は完全に枯れてしまいます。

また、青枯病は隣接する株にも容易に感染するため、注意が必要です。

この病害の早期発見と適切な対策が重要です。

褐色腐敗病

褐色腐敗病は、育苗期の後半に発生することが多い病害です。この病気は糸状菌(カビ)のフィトフトラ属菌によって引き起こされ、育苗用土に感染している場合、定植後にも発病します。特に露地栽培では、降雨が多い梅雨後半から九月にかけて被害が顕著になります。

褐色腐敗病の症状は、苗の地際部に淡褐色の水浸状の病斑が現れ、葉がしおれてしまいます。病斑部はくびれてきて、最終的に苗は枯れてしまいます。また、葉や葉柄は熱湯をかけたような見た目になります。

定植後には地際部や根が侵されることもあり、自根栽培に限定されることが一般的です。この病害は収穫後にも発生することが多く、出荷先でクレームの原因となることもあるため、注意が必要です。

褐色腐敗病は無視できない病害であり、適切な管理と予防対策が重要です。

褐紋病

褐紋病は、糸状菌のホモプシス属菌によって引き起こされる病害です。ナスでは最も一般的に発生し、特に暖地では被害が大きくなります。

この病気は、梅雨明けの頃から発症が多くなり、盛夏を過ぎるとさらに増加します。

褐紋病が進行すると、ナスの実はヘタの部分から脱落したり、乾燥してミイラのような状態になります。また、ナスの輸送中にも発病することがありますので、注意が必要です。

褐紋病は収穫後にも症状が進行することがあり、販売や流通に支障をきたす可能性があります。そのため、適切な管理と予防策を講じることが重要です。

茎腐細菌病

茎腐細菌病は、エルウィニア属の細菌によって引き起こされる病害です。特に九月の降雨が続くと多発する傾向があります。

この病気では、収穫期において株の一部の枝が黄化や萎凋の症状を示します。被害の範囲は「接ぎ木部の上部」と「芽かき部」の2つに分けられます。

接ぎ木部の上部の被害では、接ぎ木部から上方約20〜30㎝の茎の表皮が褐変し、株全体が萎凋や枯死に至ります。一方、芽かき部の被害では、芽かき部を中心に茎の表皮が褐変し、上部の葉が黄化や萎凋し、最終的に枯死してしまいます。

枯死の症状は青枯病とも類似していますが、茎腐細菌病では病斑が表皮全体に均一に褐変し、根は健全な状態を保っていることから区別することができます。

うどんこ病

うどんこ病は、糸状菌のスファエロテカ属菌によって引き起こされる病害です。この病気は、株が繁茂する夏から秋にかけて発生し、主に中から下位葉などの部位で多く見られます。

被害は主に葉に現れ、初期段階では葉表面の一部に、まるでうどん粉をふりかけたかのような白色のカビが生じます。その後、病斑は次第に葉全体に広がります。

うどんこ病は、葉の健康状態や収量に影響を与える重要な病害です。適切な管理や予防策を講じることで、被害を最小限に抑えることができます。

褐色円星病

モザイク病は、主にモモアカアブラムシやワタアブラムシなどのアブラムシ類によって媒介されるキュウリモザイクウイルス(CMV)に感染して発病します。

したがって、アブラムシ類の防除対策を積極的に行うことが重要です。

初期の症状としては、成長点に近い葉に不明瞭なモザイク状の斑紋が見られる場合があります。

病気が進行すると、明瞭な黄斑のモザイク症状が現れます。

重度の感染では、果面が赤褐色になり、草丈がやや低くなることもあります。

モザイク病の感染が進行すると、収量や品質に影響を及ぼす可能性があるため、早期の発見と適切な対策が重要です。アブラムシ類の防除や感染源の除去を徹底し、病害の拡大を抑える努力を行いましょう。

以上、九つの病害についてご紹介させていただきました。

ナスの栽培では、常に植株の状態を観察し、異常な症状や被害の早期発見に努めることが重要です。病害が発生した場合は、適切なタイミングで適切な処置を行うことで被害を最小限に抑えることができます。

定期的な植株の点検や葉の裏側の確認、病害虫のモニタリングなどを通じて、異常な兆候を見逃さず対策を講じることが大切です。また、栽培環境の適切な管理や衛生対策の徹底も欠かせません。

ナスの株は豊かな収穫を約束するポテンシャルを持っていますので、適切な管理と病害対策を行うことでそのポテンシャルを最大限に引き出しましょう。健康で豊かなナスの収穫を目指して、栽培に励んでください。


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