見出し画像

事業継承をし、挑戦するベンチャー化を目指せ!

それでは編集者目線で気になった本をご紹介させていただきたいと思います。

今回はこちら「起業するより会社は買いなさい サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ」です。

この驚くべき時代は、サラリーマンが「会社を買う」と宣言する時代なのです。あなたが「サラリーマン卒業」を考えたことがあるなら、今がその瞬間です。もちろん、現在の職場で活躍している人々にはすでに多くの充実感がありますが、一方で「どうしても思い通りにならない」と頭を抱える日々を過ごしている人も少なくありません。では、そんな方々にとって、何が最も気になるのでしょうか?その答えは、新たなフィールドへの挑戦、或いは全く別の企業への転職です。

時代が変わるごとに、業種や職種に対する考え方も進化していきます。今は新たな道を切り開く、新たな挑戦をする時代です。これはただのサラリーマンでいることに飽きた人、さらなるステージを求めている人、自分が積み上げてきたスキルをどこか新しい場で発揮したいと考えている人、全ての人に向けたメッセージです。新しい扉を開く勇気を持つことで、あなた自身が新たな人生のステージに立つチャンスが広がっていくのです。

本書には、東京・千代田区でコピーセンターを手に入れたり、副業として学習塾を運営したりする事例が数多く紹介されています。しかし、今回は特に興味深い事例として、神奈川県内で250万円で購入したロボット学習塾の話を取り上げたいと思います。

このロボット学習塾は、元々はIT会社に勤めている一個人が副業として運営していました。前オーナーは、週に一度、なんと30名もの生徒にロボットに関する知識と技術を教えていたのです。彼はロボット学習塾を創設し、その人気を築き上げるまでに多くの時間と労力を注ぎ込んでいました。しかし、次第に本業が忙しくなり、この学習塾を維持するのが難しくなったそうです。

そこで、前オーナーは一つの重要な決断を下します。それは、多くの生徒が集まっているにも関わらず、この塾を手放すという選択でした。彼は、生徒たちにとっても、急な閉鎖は大きな迷惑となるであろうと考え、事業を売りに出すことを決意したのです。

この事例から学べることは多々ありますが、特に強調したいのは、事業を手放す決断もまた、事業を続ける以上に重要な選択であるという点です。前オーナーは、自分一人の力で成し遂げられない状況に直面したとき、教え子たちに対する責任を考え、自らの限界を認め、新しいオーナーにそのレガシーを託したのです。そしてそれが、このロボット学習塾が継続して価値を提供できる道を開いたと言えるでしょう。

この舞台の新たな主役は、42歳のサラリーマンであり、上場企業に所属していますが、副業としてこのロボット学習塾を引き継ぐという勇敢な決断をしました。彼が独立を考えるきっかけとなったのは、周りの上司たちが役職定年に達して、かつての部下たちの指揮下で不自由な環境で働く様子を見てきたからです。その光景を目の当たりにし、「自分は早くから独立できる力をつけておくべきだ」という強い意志が芽生えたのです。

彼がこの塾を250万円で購入したとき、その価格には教材や備品も含まれていました。これは非常に計算された投資であり、事業の収益性もある程度保証されていたため、リスクを抑えつつスムーズに運営を引き継ぐことができたのです。副業とはいえ、安定した売り上げと既存の教材・備品を活用して、事業を効率よく運営することが可能でした。

この話には数々の教訓がありますが、最も強調すべきは、自分のキャリアを自分自身でデザインする重要性です。彼はサラリーマンとして安定した職を持ちながらも、将来の不確実性に備え、独立した事業を持つ力を身につけました。そして、それを副業としてバランスよく行うことで、独立するための第一歩を踏み出したのです。これは、単なる職業の選択以上の意味を持つ、人生そのものの設計に近い行動だと言えるでしょう。

この42歳のサラリーマンは、仕事での頻繁な海外出張が体調を崩すきっかけとなり、出張の少ない部署に異動されることで、副業という新たな道を真剣に考えるようになりました。すでに教育事業に対する強い情熱を持っていた彼は、この学習塾を購入することで、その夢を現実に一歩近づけたのです。購入の成約を結ぶ前には、奥さんと二人で現場を確認に行くなど、非常に計画的かつ真剣にこの事業に取り組んでいます。

副業という性質上、自分一人で全てをこなすわけにはいかないため、奥さんが手伝う意志があるかどうかが重要な要素でした。結果として、現場を訪れた奥さんも「これなら私も手伝える」と即座に賛成。その奥さんの同意が、最終的にこの買収決断を後押ししたのです。

この一連のエピソードから我々が学べることは、一つの仕事や職場にしばられず、自らの生き方やキャリアパスを自分で選択して構築する大切さです。このサラリーマンは、自らの健康や人生観をきちんと評価し、それに基づいて行動を起こしています。さらに、家族との協力も上手く活かし、共に夢を追求するという貴重な経験を手に入れました。このようにして、人は副業や新しい事業を通じて、自身の人生に多角的な価値を加えていくのです。

売り手と買い手が初めて交渉のテーブルについてからわずか1ヵ月で成約に至るという驚くほどスムーズな取引が行われました。このサラリーマンが買収を完了するやいなや、新たな生徒の獲得にエネルギーを注ぎました。結果として、生徒数は50名まで飛躍的に増加。この増加の背後には、彼自身の技術的なバックグラウンドが大きく影響しています。

このサラリーマンの主な仕事が技術系であったことから、ロボットに関する専門的な技術指導ができるという点が高く評価されました。この点が口コミで広まり、それが更なる生徒の増加を招いたのです。新たな生徒たちは特に、一般的な学習塾では得られないような専門的な知識を求めてこの塾に足を運びました。

この一連の成功体験は、仕事のスキルとパーソナルな趣味や興味をうまく融合させることで、ビジネスチャンスを広げる可能性があるということを教えてくれます。こういった多角的なアプローチによって、彼は事業をさらに拡大し、自分自身も成長しているのです。

この本が目指すテーマは、個人や中小企業による小規模M&Aと事業承継です。多くの人が考えるように、M&Aは巨大企業が行い、莫大な費用と時間がかかるというのは、必ずしも全ての場合に当てはまらないのです。実際に私自身が経験してきたように、規模が小さい会社や個人事業主によるM&Aは、比較的スピーディに、そしてリーズナブルな仲介料で進行することが可能です。特に近年では、このような小規模M&Aがさらに活発になっています

この本で特に強調されるのは、会社を買った後にその経営に深く携わる人々です。もちろん、投資として会社を買うだけで、経営は他人に任せたいというスタンスを取る人も存在します。しかし、本書の焦点は、会社を買って自らがその舵取りをする人たち、もしくは経営に深く関与する人たちです

M&Aを単なる投資手段としてではなく、自らのビジョンを具現化する道として考え、実践する人々。それがこの本で取り上げられる主要なテーマとなっています。なぜなら、一度オーナーになると、会社の未来は自分の手に委ねられるからです。この責任感と期待感が経営者にとっての大きな原動力となり、多くの場合、その会社を成功に導く要素となるのです。

この本では、新しい事業に対する「未来のイメージ」を、興味深い形で「妄想」と表現しています。著者によれば、経営者の最大の特権は、この妄想を自由に膨らませることです。未来の製品、サービス、お客様の笑顔など、まだ具現化されていないものを心の中で描き出し、それが現実のものとなるように導く。この過程は極めてエキサイティングで、まさにビジネスの創造性の源泉です。

インターネットの進化によって、M&Aの手法も多様化し、そのアクセスが容易になりました。特に、個人事業や中小企業においては、M&Aが以前にも増して活発になっており、それが経済全体の流動性を高める効果をもたらしています。このような流れが、新しい事業創造に挑戦する個人や中小企業にとって、大きなチャンスをもたらしています

最終的には、全てはあなたのアイデアと勇気にかかっています。市場に新しい価値を提供するアイデアと、それを具現化するための勇気。この2つが揃えば、個人でも中小企業でも、大企業にも負けない素晴らしい未来を手にすることができます。

事業の未来を「妄想」することが、単なる遊びや娯楽ではなく、ビジネスの未来を切り拓く重要なステップであるとこの本は教えてくれます。そして、その妄想を現実に変える力となるのが、インターネット時代における新しいM&Aの形だと、この本は力説しています。

本書はM&A(企業の買収・合併)の実態について独自の視点で分析しています。特に、M&Aの成功と失敗についての事例が豊富に紹介されているのが特長です。これらの事例から得られる知見は、「会社を買う」という行為に必要な力を理解する上で非常に有用です。

欧米では特に、中高年世代が自分で立ち上げた事業を他人に譲渡することが一般的です。それが成功の証とされ、多くの人たちがリタイア後に軽装で世界を旅行するライフスタイルを楽しんでいます。実際、日本の主要な観光地、たとえば浅草や京都でよく見かける外国人中高年カップルたちは、その象徴的な存在です。これが示すように、海外では会社を売ることは「成功者の証」であり、M&Aはその成功を証明するものとされています。

これに対して、日本ではまだM&Aが一般的でなく、ネガティブなイメージで見られることが多いです。しかし、この流れは変わりつつあります。特に、日本経済の活性化や人材の有効活用という観点から、M&Aが新たな可能性として注目されています。今後、M&Aは日本でも有効な手段として認知され、中小企業にとっても積極的に採用されるでしょう

中小企業がM&Aを使いこなせれば、その経営環境は劇的に変わる可能性があります。そして、その変革が日本全体の経済活性化につながるのです。この点において、私は楽観的な見方をしています。実際、中小企業の積極的なM&A活動が経済全体を活性化する可能性は極めて高いと信じています。

したがって、本書はM&Aの新しい局面を切り拓くための実践的なガイドとも言えます。M&Aに対する認識や態度が、個々の企業だけでなく、一国の経済に与える影響は計り知れないのです。

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!