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家族で考える地球のためにできること

それでは編集者目線で気になった本をご紹介させていただきつつ、「エコロジカル・フットプリント」について共有したいと思います。今回はこちら「21世紀こども百科 地球環境館」です。

この書籍は、地球環境とその保全について子どもたちにわかりやすく教えるためのものです。何が特に印象的かと言えば、まずそのビジュアルが挙げられます。豊富な図解と写真が使われており、子どもたちが興味を持ちやすいよう工夫されています。次に、この本は情報の整理が非常にうまく行われている点が特徴です。章立てやセクション、さらには各ページで取り上げるトピックがしっかりと計画されており、読者が混乱することなく一貫した情報を得られます。

また、この書籍の最も強力な点は、子どもたちが自分自身で地球環境を守るために何ができるかを考えさせる内容になっていることです。具体的な行動指針や小さなプロジェクト例も豊富に紹介されており、単に知識を提供するだけでなく、実践へとつながる情報が満載です。

このような特色から、教育関係者や親、さらには子どもたち自身にも非常に有用なリソースといえるでしょう。特に、環境教育が今後ますます重要になってくる中で、このような優れた資料は貴重です。

全体として、「21世紀こども百科 地球環境館」は、子どもたちに地球環境の大切さを教えるだけでなく、具体的な行動を促すための素晴らしい書籍です。

生態系の壮大な舞台に立つ主役は三者三様

植物が「生産者」として、太陽の光と二酸化炭素、水の素材を駆使し、美味しそうな炭水化物を生み出します。その後、舞台に登場するのは動物たち、我々「消費者」です。自然の食堂で炭水化物を楽しみ、エネルギーをチャージするわけです。そして最後に、この壮大な劇の裏方を務めるのが「分解者」。彼らは死んだ生物をエコフレンドリーな方法で土に還す、自然界のリサイクルマスターです。

この素晴らしい関係性は「生態ピラミッド」の名の下に称賛されています。しかし、ここで人間が演じる角色が問題です。私たちは地球の深い階層から、何百万年も前の生物たちの残骸やそのエキスを掘り起こします。それが「化石燃料」です。この化石燃料を用いて、私たちは物質文明を築き、飛行機からスマートフォンまで多くの製品を生み出しています。

だからといって、この絶妙なバランスを維持できているわけではありません。化石燃料の大量使用は気候変動の主犯であり、それがもたらす災害は、自然界だけでなく人類にも甚大な影響を与えています。言い換えれば、私たちが行っているのは、時間を遡って生態ピラミッドのバランスを崩すことです。

この全体像を理解することで、私たちは自然界との共存、さらには持続可能な未来への道を模索する起点を得ることができます。人間が自然界の一部であり、そのバランスに敬意を持つべきであるという認識を深めることが、何よりも重要なのです。

スイスの先鋭的な科学者、マチスワケナゲルが登場して思いっきりゲームチェンジャーになりました。彼が提案したのは、「エコロジカル・フットプリント」という名の全く新しいパラダイムです。この革新的な考え方は、人間の生活や経済活動が地球のどれだけの「生態的面積」を占有、そして圧迫しているのかを数値で示すための計算手法です。言い換えれば、これは地球が持続可能な範囲で供給できる資源と、私たちが現実に消費している資源との間のギャップをはっきりさせる道具とも言えます。

エコロジカル・フットプリントはただの抽象的な概念ではありません。それは具体的な算出法を持ち、人一人一人が地球上でどれだけの土地と水を消費しているのかを計測します。具体的には、食品生産から住居、交通、商品、サービスに至るまで、一人当たりが生活を営むのに必要な「生産可能な土地面積」を計算するのです。それだけではなく、この面積計算には海で取れる魚や他の水産資源の利用も含まれています。

一見単純なこの数値が示すのは、私たちのライフスタイルが地球の資源にどれほどの重圧をかけているか、そしてそれが持続可能かどうかの真実です。エコロジカル・フットプリントを理解し、活用することで、私たちは地球との共存を考え、より持続可能な未来に向けて意識的な選択ができるようになります。このエコロジカル・フットプリントこそが、持続可能な未来を目指す上での必須の知識となるでしょう。

エコロジカル・フットプリントの計算は、ただ何となく地球が疲れていると感じるだけではなく、具体的な数字でそれを示すすごくスマートな方法です。この計算には様々な要素が織り交ぜられており、1つ目は化石燃料の消費による二酸化炭素吸収のための森林面積です。具体的には、我々がどれだけガソリンを使い、電力を消費するかが直接森林がどれだけ必要かにつながるのです。

次に、2つ目は都市化に伴って使われる土地面積です。新しいビルが建つ度、新しい道路が作られる度に、その土地は元々何か別の目的で使われていた可能性があります。多分それは食物を生産する農地だったかもしれませんし、何らかの自然環境だったかもしれません。

そして、3つ目は食糧生産のために必要な土地面積です。私たちが毎日食べるお肉、お野菜、穀物は、どれも何らかの形で土地を使って生産されています。この面積は人口が増えるにつれてますます広がりを見せています。

最後に、4つ目は紙や木材の生産に必要な土地面積です。例えば、家具や書籍、雑誌などで使用される木材や紙も、その生産には広大な土地が使われます。

これらの要素を合計してエコロジカル・フットプリントが計算されます。この数値が示すのは、我々の行動が地球環境に与える具体的な影響の大きさです。この「地球の自然生態系を踏みつけた足跡」とも呼べる値が高いと、それだけ地球に負担をかけていることになります。この理解を持って、より持続可能な生活への道を探ることが、次世代へと美しい地球を残す鍵となるでしょう。

数字は時に言葉よりも強力です、そしてエコロジカル・フットプリントの計算はその最たる例です。考えてみてください、アメリカ人一人当たりのエコロジカル・フットプリントは9.6ha、カナダ人は7.6ha、そして日本人は4.4haです。一方で、地球全体の生物生産力は、公平な割り当てをした場合、人一人当たり1.8haなのです。このギャップが示すのは、持続可能な暮らしへの道のりがいかに遠いかということです。

特に注目すべきは、もし世界中の人々が日本人のような暮らしをした場合、地球が約2.4個も必要になるという驚愕の事実です。これは単なる数字以上の意味を持っています。これは、私たちが現在進行形で地球に与えている負荷が、この惑星が支えられる限界をはるかに超えているという現実を突きつけているのです。

日本に限らず、先進国、途上国を問わず、人類全体が考え直さなくてはならない時間が来ています。具体的には、日本人一人一人が、現在の経済や消費活動を大幅に見直し、そのスケールを2分の1以下にすることが求められているのです。これは単なる選択肢ではなく、生き残るための必須条件とも言えます。次世代に繁栄と安定を約束するためには、これからが勝負です。現行のライフスタイルをどれだけ効率的かつ持続可能なものに変えられるかが、我々の未来を左右するのです。

驚くべきことに、日本のエコロジカル・フットプリントの70%近くは日常生活から生じています。これは重大な知らせでありながら、同時に一縷の希望をも秘めています。何故なら、私たち一人一人が日々の生活でどれだけ環境に配慮できるかが、この数字を減少させるカギとなるからです。このフットプリントを減らす取り組みは、個々の家庭だけでなく、産業界全体にも波及します。家庭の消費パターンが変われば、企業もそのニーズに応じて生産効率を高め、環境に配慮した商品を増産するでしょう。

逆のシナリオを考えてみましょう。もし地球上のすべての人々がアメリカと同じ生活スタイルを採用したら、なんと地球が約5.4個必要になるという。これは極端な例かもしれませんが、その数字から逃れることはできません。この数字は、地球が今直面している「生態的赤字」の深刻さを如実に示しています。

エコロジカル・フットプリントは単なる指標以上のものです。それは、私たちが自然環境に与える影響を具体的に、そして非常に分かりやすい形で示してくれます。さらに、この指標を見てどれだけその「赤字」を減らすべきか、具体的な行動目標を立てる際の手引きにもなるのです。環境に対する認識を変え、行動を始める一歩として、エコロジカル・フットプリントは不可欠なツールとなっています。だからこそ、この指標を深く理解し、一日でも早く行動を起こすことが必要なのです。

このエコロジカル・フットプリントの概念は、ただ個々の家庭や地域社会に留まらず、国際レベルでの政策立案や研究にも欠かせないツールとして認識されています。その証拠に、国連や各国政府、さらには各地の自治体まで、この指標を真剣に取り入れて環境政策を練っています。それだけでなく、環境保全に特化した国際NGOやNPO、例えばWWF(世界自然保護基金)やワールドウォッチ研究所なども、このエコロジカル・フットプリントを重要なデータソースとして活用しています。

学校教育においても、このコンセプトは急速に導入されつつあります。実際、日本の環境省が発行する『環境白書』にもこの指標が取り上げられているのです。これは、次世代がこの地球とどう共存していくかを考えるうえで、非常にポジティブな動きだと言えるでしょう。

最近では、政府の動きも活発化しています。特に注目されるのは、英国ウェールズ議会がエコロジカル・フットプリントを持続可能性の公式指標として採用したこと、そしてロンドン市がこの指標に基づく環境報告書を公開したことです。これらは、エコロジカル・フットプリントが地球規模での課題に対する有力な解決策として、ますます重要視されている証拠です。

その核心には、我々が地球が産み出す自然資源の限界内で、そしてそれを公平に共有する生活を目指さなければならないという至極当然ながら深刻な使命があります。この方向性を確立するために、エコロジカル・フットプリントは避けて通れない道しるべとなっています。だからこそ、この重要な指標をもっと広め、理解し、そして行動に移す時が来ているのです。


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