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ミナミキイロアザミウマとダニ類の対策

前回は露地ナス栽培で発生する虫害の特徴と対策についてご紹介しました。

対策方法は、虫の種類によって異なる場合があります。以下では、具体的な対策方法についてご紹介いたします。

① ミナミキイロアザミウマ

ミナミキイロアザミウマは、成虫でも幼虫でも、横長の紡錘形をしており、黄色い模様が特徴です。成虫は体長が約1㎜程度で、翅をたたんだ状態で見ることができます。背面から尾部にかけて中央部に縦に黒い線が走っているので、見つけやすいです。

ミナミキイロアザミウマに対する具体的な対策方法は以下の通りです。

  1. 生息環境の改善

    • ミナミキイロアザミウマが好む湿度や温度を制御することが重要です。室内の湿度を下げ、乾燥した環境を作ることで、彼らの生息場所を制限します。

    • 家庭内での対策としては、換気や湿気対策を行い、部屋の通気性を高めることが有効です。

  2. 掃除と衛生管理

    • ミナミキイロアザミウマの好む食べ物や巣となる場所を取り除くために、定期的な掃除を行います。特に、食品のこぼれや残りカスをしっかりと片付け、ゴミ箱を清潔に保ちましょう。

    • 虫の巣となりやすい場所や隙間も掃除し、衛生的な環境を維持します。

  3. 予防策

    • 害虫駆除業者に相談し、ミナミキイロアザミウマの対策方法や駆除方法を尋ねることをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、効果的な駆除方法を実施しましょう。

    • ミナミキイロアザミウマが侵入しやすい場所には、防虫ネットやシーリングテープを使用して虫の侵入を防ぐことができます。

  4. 化学的駆除

    • 駆除剤を使用する場合は、必ずラベルや説明書に従って正しく使用しましょう。また、家庭での使用に適した安全な駆除剤を選ぶことが重要です。


露地でのナスの栽培において、ミナミキイロアザミウマは特に重要な害虫として知られています。この害虫の被害は、7月頃から成虫が出現し始め、8月以降に急速に増加していきます。成虫はナスの植物に寄生し、吸汁を行うことで栄養を摂取します。

ミナミキイロアザミウマによる被害は、主にナスの皮に特徴的な傷や黄色い斑点として現れます。これらの傷は、害虫がナスの葉や茎に寄生し、吸汁を行うことによって引き起こされます。成虫が多くなると、被害は急激に広がり、ナスの成長や収穫量に大きな影響を及ぼす可能性があります。

ミナミキイロアザミウマの被害が増えると、ナスの皮には火傷のような傷が生じ、これによってナスの商品価値が低下します。この傷は、チャノホコリダニによる被害と非常に類似しており、初見では区別が難しいことがあります。しかし、ヘタの内部を観察することで、ミナミキイロアザミウマの存在を識別することができます。

ヘタの内部にミナミキイロアザミウマが生息している場合、食害による傷跡が見られます。これは通常、ナスのヘタ部分を切り開いて確認することで判別できます。ヘタを切り開いた際に、虫の活動によって生じた食害痕や黒い粘液などが確認されれば、ミナミキイロアザミウマの被害があることを示します。

したがって、ミナミキイロアザミウマとチャノホコリダニの被害を識別するためには、ナスのヘタ部分を注意深く観察することが重要です。ヘタの内部に食害痕や粘液が見られれば、ミナミキイロアザミウマの存在が疑われます。このような兆候が見られる場合は、適切な対策を講じてミナミキイロアザミウマの被害を防ぐ必要があります。

ナスの栽培においては、ミナミキイロアザミウマとチャノホコリダニの両者が混在して被害を引き起こすことが多いです。そのため、ミナミキイロアザミウマの防除用薬剤を散布しても被害が減少しない場合は、チャノホコリダニによる加害も考えられるため、チャノホコリダニの防除も同時に実施する必要があります。

ミナミキイロアザミウマとチャノホコリダニは、被害の現れ方が類似しているため、初めは判断が難しいですが、異なる防除方法が必要となります。ミナミキイロアザミウマに対する薬剤を使用しても被害が改善しない場合は、チャノホコリダニの存在が考えられます。

チャノホコリダニの防除を行うためには、適切な農薬を選定し、散布や処理を行う必要があります。農薬の使用に際しては、安全性と効果を考慮し、指示書や専門家のアドバイスに従って使用量や使用頻度を調整します。

重要なのは、ミナミキイロアザミウマとチャノホコリダニの両方に対する防除対策を継続的に実施することです。両者の被害を最小限に抑えるためには、定期的な監視と早期発見、適切な農薬の使用、栽培環境の改善など、総合的なアプローチが重要です。農薬の使用に際しては、法規制や指示に従い、環境への影響を最小限に抑えるように心掛けましょう。

畑での防除方法として、うね上にシルバーポリフィルムを使用したマルチが効果的でした。この方法は、蛹化の防止や成虫の飛来を抑制する効果があります。

また、ヒメハナカメムシ類などの土着天敵に悪影響が少ない薬剤を使用して防除を行いましょう。これにより、有用な天敵の生態系を維持しながら、害虫の被害を抑えることができます。

防除においては、適切な薬剤の選定が重要です。土着天敵に対して悪影響を与えず、同時に害虫に効果的な薬剤を選びましょう。専門家のアドバイスや農薬の指示書に基づき、安全性と効果を確認しながら使用量や使用頻度を調整します。

総合的な防除策として、マルチングや天敵の活用に加えて、定期的な監視と早期発見も重要です。畑を定期的に巡回し、害虫の被害や天敵の存在を確認しましょう。早期に異常を発見すれば、迅速な対策を講じることができます。

以上の対策を総合的に実施することで、害虫被害を最小限に抑えつつ、健康な作物の育成に努めましょう。

② チャノホコリダニ

チャノホコリダニを判別するための方法は以下の通りです。

チャノホコリダニは、ホコリダニ科に属する微小なダニであり、成虫は透明感のある乳白色をしています。体長はわずか0.2㎜程度であり、肉眼ではほとんど観察することができません。しかし、虫眼鏡や拡大鏡を使用することで観察が容易になります。

判別方法としては、以下の特徴に注目します。チャノホコリダニは細長い体型を持ち、光を透過するような乳白色をしています。また、四対の微小な足を持っています。

チャノホコリダニの判別は、注意深くナスの葉や茎の表面を観察することで行います。特に虫眼鏡や拡大鏡を使用するとより詳細に観察することができます。

なお、チャノホコリダニの正確な判別や防除方法に関しては、農業専門家や植物保護の専門家に相談することをおすすめします。彼らは経験豊富であり、より具体的なアドバイスや適切な対策を提供してくれます。

チャノホコリダニの初期被害は梅雨明けから観察され始めますが、被害は8月から9月にかけて最大化します。

チャノホコリダニの被害を抑制するためには、土着天敵だけでは十分な効果を得ることは難しいです。なぜなら、土着天敵の数や活動範囲が限られており、チャノホコリダニの被害を完全に制御することは困難だからです。

そのため、チャノホコリダニの防除には薬剤の使用が必要となります。適切な農薬を選び、指示書に従って使用量や使用頻度を調整することが重要です。ただし、薬剤使用に際しては環境への影響や安全性に配慮し、使用法を守ることが必要です。

また、チャノホコリダニの防除には予防的な対策も重要です。以下の対策を実施することで被害を最小限に抑えることができます。

健康な植物は病害虫に対して強い抵抗力を持ちます。適切な栄養供給や管理を行い、植物の健全な成長を促すことが重要です。それには定期的に畑を巡回し、チャノホコリダニの被害の兆候を注意深く観察することが重要です。

初期の被害を早期に発見し、迅速な対策を講じましょう。土壌の保水性や排水性を適切に管理し、植物の根の健康を維持します。これによって植物のストレスを軽減し、チャノホコリダニの被害を抑えることができます。

チャノホコリダニの侵入を防ぐために、防虫ネットを使用することが有効です。畑やハウスに適切に設置し、害虫の侵入を制限します。

これらの対策を総合的に実施することで、チャノホコリダニの被害を最小限に抑え、健全な作物の育成を目指しましょう。

チャノホコリダニの防除において、薬剤中心の対策は一般的ですが、注意が必要です。遅れた防除では、一カ月以上にわたって収量が激減する可能性があります。

チャノホコリダニは繁殖力が高く、被害が急速に広がるため、早急な対策が求められます。防除が遅れると、害虫の数が増え、植物への被害も急速に進行します。その結果、ナスの収量が一カ月以上にわたって大幅に減少する恐れがあります。

このような事態を避けるためには、以下の点に留意する必要があります。

防除対策の早期実施
畑を定期的に監視し、チャノホコリダニの被害の兆候を早期に発見することが重要です。初期の被害が確認された場合は、すみやかに適切な防除措置を実施しましょう。

複数の防除手段の組み合わせ
防除効果を高めるために、薬剤だけでなく、他の防除手段も組み合わせることが重要です。例えば、天敵の活用や植物の健全な成長を促すことで、チャノホコリダニに対する防御力を向上させましょう。

防除スケジュールの適切な立て方
チャノホコリダニの発生予測や畑の状態を考慮し、防除スケジュールを適切に立てましょう。適切なタイミングで薬剤を使用することで、害虫被害を最小限に抑えることができます。

追加的な対策の検討
防除が遅れた場合や防除効果が不十分な場合は、追加的な対策を検討しましょう。畑の管理方法や栽培環境の改善、防虫ネットの使用など、チャノホコリダニに対する対策を強化することが必要です。

これらの対策に留意することで、チャノホコリダニの被害が広がり、収量が激減するリスクを最小限に抑えることができます。早期の対策と継続的な管理が重要です。

注意点としてチャノホコリダニの被害株の周囲には、見た目上は健全な株でも実際にはダニが寄生している可能性があるため、畑全体に薬剤を散布する必要があります。

被害株の周囲にダニが寄生している場合、それらのダニは他の株へと広がる可能性があります。見た目上健康な株でも、チャノホコリダニの感染による被害が進行することがあります。したがって、防除のためには被害株だけでなく、畑全体に対して薬剤を散布することが重要です。

畑全体に薬剤を散布することにより、未感染の株を保護し、チャノホコリダニの感染拡大を抑えることができます。薬剤の散布は、予防的な措置として効果的です。

ただし、薬剤の使用に際しては、指示書や専門家のアドバイスに従って正確な使用量と使用方法を確認してください。また、環境への影響や安全性に留意し、農薬の使用を適切に行いましょう。

畑全体への薬剤の散布は、チャノホコリダニの被害を最小限に抑えるために重要な手段です。経済的な被害を防ぐためにも、畑全体の防除に取り組むことが推奨されます。

③ ハダニ類

ハダニ類の中でも、特にナミハダニについてご紹介します。ナミハダニは最も頻繁に発生するハダニの一つです。

ナミハダニは、非常に多くの農作物や野菜に対して被害を引き起こします。特に温暖な気候や乾燥した環境に適応しており、発生が多い傾向があります。彼らは微小な体サイズを持ち、肉眼ではほとんど観察することができません。

ナミハダニは、植物の葉や茎に寄生し、吸汁によって栄養を摂取します。その結果、葉の黄変や葉の表面に白い斑点や黄色い斑点が現れることがあります。被害が進行すると、葉が萎縮し、成長や光合成が妨げられます。これにより、作物の生育や収量に影響を与える可能性があります。

ナミハダニの発生を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  1. 環境管理: ナミハダニは乾燥した環境を好むため、適度な湿度を保つことが重要です。定期的な潅水や湿度管理を行い、乾燥を防ぎましょう。

  2. 天敵の活用: ナミハダニの天敵となる捕食性の昆虫や寄生性のハチを利用することで、自然なバランスを保つことができます。天敵の存在を促進するため、農薬の使用を控えることも重要です。

  3. 防虫ネットの使用: ナミハダニの侵入を防ぐために、防虫ネットを使用することが有効です。畑やハウスに適切に設置し、害虫の侵入を制限します。

  4. 適切な農薬の使用: ナミハダニに対して効果的な農薬を使用することも防除対策の一つです。農薬の使用に際しては、安全性や環境への影響を考慮し、指示書に従って正確な使用量と使用方法を守りましょう。

以上の対策を総合的に実施することで、ナミハダニの発生を抑え、作物の健全な成長を促進することができます。定期的な監視と早期対策を行い、作物を守りましょう。

カンザワハダニは全国的に発生するハダニですが、関東地方以北では比較的少ない傾向があります。

カンザワハダニは、ナミハダニと同じく植物に寄生し、吸汁を行います。彼らも微小な体サイズを持ち、肉眼ではほとんど観察することができません。

一般的に、カンザワハダニの発生は関東地方以南や暖かい地域でより多く見られます。温暖な気候や乾燥した環境に適応しており、これらの条件下で発生が増加します。一方、関東地方以北では気温や湿度の条件が厳しいため、カンザワハダニの発生は相対的に少ないと言われています。

ただし、地域によっては気候変動や環境条件の変化によって、カンザワハダニの発生状況も変動する可能性があります。そのため、地域ごとの監視と対策が重要です。関東以北の地域でカンザワハダニの発生が観察される場合には、早急な対策を講じることが必要です。

ナミハダニと同様に、カンザワハダニの防除には適切な環境管理や天敵の活用、必要に応じた農薬の使用などの対策が有効です。地域特性や畑の状況に合わせた対策を実施し、作物を守りましょう。

ナスの定植後、しばらくするとハダニの発生が始まり、特に梅雨明け後の7月中旬以降に集中的に増加します。

梅雨期においては、晴天が多い年には特にハダニの発生が多くなる可能性があります。乾燥した環境がハダニにとって好条件であり、晴天が続くことで湿度が低下し、ハダニの発生が促進されるのです。そのため、梅雨期においては特に注意が必要です。

ナスの栽培においては、この時期にハダニの被害が深刻化することが多く、作物の生育や収量に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、梅雨明け後の期間にはハダニの発生に対する注意が必要です。

防除対策において、薬剤散布の際にむらが生じると、そのむらがハダニの発生源となり、再度急激な増加を引き起こす可能性があるため、薬剤散布には細心の注意が必要です。

ハダニ類の発生を抑制するためには、土着天敵であるハダニアザミウマやヒメハナカメムシ、カブリダニなどを活用します。これらの土着天敵はハダニ類の天敵として働き、ハダニの発生を制御する役割を果たします。

ただし、土着天敵には合成ピレスロイド系や有機リン系などの非選択的な薬剤が大きな影響を与える場合があります。そのため、土着天敵に悪影響を与えない薬剤を選び、使用することが重要です。

合成ピレスロイド系の殺虫剤や有機リン系の殺虫剤は、ハダニだけでなく土着天敵にも影響を及ぼすため、控えるべきです。代わりに、土着天敵に影響の少ない薬剤を選択し、防除を行いましょう。

土着天敵に影響の少ない薬剤としては、生物農薬やハーブエキスなどがあります。これらの薬剤はハダニに対して効果的でありながら、土着天敵への影響が少ない特性を持っています。環境への負荷を軽減しながら効果的な防除を行うため、適切な薬剤の選択が重要です。

薬剤散布時には、散布範囲や散布量、散布タイミングなどをていねいに考慮し、土着天敵に悪影響を与えずに効果的な防除を実施しましょう。土着天敵の活躍を促し、生態系のバランスを保つことが重要です。

それでは今回はここまでとします。また、お会いしましょう!

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