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ナスと農家に優しい畑のグッドデザイン

前回は「促成ナス栽培の省エネルギー技術」と出して露地栽培の夏秋ナスから離れてビニールハウス栽培についての省エネルギー技術などを共有させていただきました。

今回は手間のかかる灌水について省力化技術をご紹介させていただきます。

野菜の栽培においては、種をまくことや収穫することは重要な作業ですが、それだけではありません。実際に野菜を育てるためには、さまざまな作業が必要です。

例えば、土壌の準備や肥料の施用は、野菜の生育に不可欠な要素です。適切な土壌のpHや栄養バランスを整えることで、野菜の根の発育や栄養吸収が促進されます。

また、水やりも重要な作業です。野菜は適切な水分を必要とし、乾燥や過湿の状態は生育に悪影響を及ぼします。適切な時期と量で水やりを行うことで、野菜の生育環境を整えることができます。

さらに、病害虫や雑草の管理も重要です。適切な防除や除草を行うことで、野菜の健全な成長を促進し、病気や害虫の被害を最小限に抑えることができます。

他にも、摘果や剪定、支柱の設置など、野菜の成長に合わせた管理作業があります。これらの作業を適切に実施することで、野菜の品質や収量を向上させることができます。

野菜の栽培は、種まきから収穫までの一連の作業を適切に管理することが重要です。各作業を適切なタイミングで行い、野菜の生育環境を最適化することで、より良い収穫を得ることができます。

今後の本マガジンでは、手間のかからない灌水設備の設置方法や、豪雨に負けない排水路の配置、メンテナンス不要な防風ネットの張り方、ソルゴーを活用した防風兼天敵温存用作物の栽培方法、毎日の仕事が楽しくなる休憩スペースの作り方、JGAP基準に適した資材置き場の構築方法、作業用車両の安全性を考慮した進入路の設計、電源がない場合における太陽光発電の配置方法などについて検討していきます。

これらのテーマについて、具体的なアイデアや実践的なアグリハックを提案し、農業経営の効率化や生産性向上につながる情報を共有していきます。

また、これらのテーマについては、農業関係者や専門家との意見交換や実証事例の共有も行っていきます。これにより、より実践的な情報や効果的な手法を提供することができるでしょう。

本マガジンを通じて、農業経営者や関係者の皆さんがより効率的で持続可能な農業経営を実現し、楽しく充実した作業環境を築く手助けとなることを目指しています。引き続き、アグリハックの共有や情報発信を通じて、農業の発展に貢献していきましょう。


圃場設計とデザイン 手間のかからない灌水設備

ナスは八月に入ると、一株当たりで最大6リットルもの水を必要とします。

そのため、毎日の灌水は非常に重要であり、水の管理が不適切だと収量に大きな影響を与えることがあります。

適切な水管理を行うためには、以下のポイントに留意することが重要です。

水量の調整
ナスの成長段階や気象条件に応じて、適切な水量を与える必要があります。水不足や過剰な水やりは作物の健全な成長に悪影響を与えるため、土壌の湿度や植物の水分需要を注意深く観察し、適切な水量を調整しましょう。

時間帯の選定
ナスは特に乾燥した気候下では早朝や夕方に水を与えることが効果的です。これにより、水の蒸発を最小限に抑え、根に効果的に水分を吸収させることができます。

散水の均一性
灌水時には、均一な散水を心掛けましょう。均等に水を与えることで、根系全体に水分が行き渡り、作物の健全な成長を促進することができます。不均一な灌水は根の部分的な乾燥や水logging(過剰な水分による根の酸素不足)を引き起こす可能性があります。

水の品質
水の品質も重要な要素です。ナスは特に塩分に敏感であり、高濃度の塩分を含む水を使用すると、根の機能や成長に悪影響を与える可能性があります。適切な水質を選ぶか、必要に応じて水を浄化する方法を検討しましょう。

これらのポイントに留意しながら、ナスの毎日の灌水を適切に行うことで、作物の水分需要を満たし、収量や品質の向上につなげることができます。水の管理には注意が必要ですが、適切な水管理を行うことで、ナスの健全な成長と収穫の成功を目指しましょう。

畑の用水路から畝間に水を流す際には、水の取り口を設けて導水路を作り、畝間に水を流し込むデザインにする必要があります。畑の地形を均平に整えることも重要です。畝間に水を均一に流すためには、以下のポイントに留意することが重要です。

畝間の均一性
畝間を均一に整えるために、水平な土地を確保しましょう。不均一な地形では、水の流れが偏ったり、一部の場所に水たまりができたりする可能性があります。畝間の地形を平らにするために、土を均等に盛り上げたり、削ったりして調整しましょう。

導水路の設計
導水路は水を畝間に均一に流すための重要な役割を果たします。導水路の設計には、水の勾配や流れる速度を考慮する必要があります。水が畝間に均等に広がるように設計し、水の流れを制御することで、均一な灌水を実現しましょう。

土壌改良
土壌の保水性や浸透性を向上させることも畝間への水の均一な流入を促進するために重要です。適切な土壌改良材料を使用し、土壌の保水力や排水性を調整しましょう。これにより、畝間に水を均一に浸透させることができます。

以上のポイントに留意して、用水路から畝間に水を流す際には、水の取り口と導水路の設計、畝間の均一性や土壌改良に注意を払いましょう。これにより、畑の水はけや病害虫の発生リスクを最小限に抑えながら、均一な灌水を実現することができます。

黒マルチの下にかん水チューブを通して畝上灌水を行っています。水源からナスの畝より高い位置にローリータンクを設置し、ポンプを使用して水を汲み上げておくことで、畝に加圧せずに水を供給することができます。ただし、濾過が必要となるため、ポンプで加圧することが望ましい方法です。以下はその手順です。

  1. 水源からローリータンクに水を供給します。

  2. ローリータンクをナスの畝よりも高い位置に設置します。

  3. ポンプを使用して、ローリータンクから水を汲み上げます。

  4. 汲み上げた水はかん水チューブを通じて畝に供給されます。

  5. 畝に水を供給する際に、濾過装置を使用することで畝に砂や異物が入らないようにします。

  6. ポンプによる加圧が可能であれば、より均一な灌水が実現できます。

この方法により、畝上灌水を効果的に行うことができます。ポンプによる加圧が望ましい理由は、水の供給量や圧力を調整しやすく、畝に均等な水を供給することができるからです。濾過装置を使用することで、畝に異物や砂が混入することを防ぎ、水の品質を保持することができます。

以上の手順を実践することで、効率的かつ均一な畝上灌水を実現し、ナスの生育や収量を向上させることができます。

ナスの畝は高畝を基本とし、堆肥の施肥は「溝施肥」と呼ばれます。溝施肥では畝の中心部分を深耕して堆肥を施すため、黒マルチの外に水が漏れることはありません。

ただし、雨水の排水には注意が必要です。畝間の通路にわずかな傾斜をつけ、雨水を集めやすくすることがポイントです。また、雨水を畝の端に集めるために通路の傾斜を活用し、圃場の隅に水を集めて効果的に排水するデザインにします。

これにより、雨水を効果的に排水し、圃場外に配水することができます。畝の高畝や溝施肥によって畝内の水の保持力が高まり、水の外部への漏れを抑えることができます。同時に、通路の傾斜や水の集め方を工夫することで、雨水の排水を効率的に行い、圃場内の水の管理を行うことができます。

畝の高畝や溝施肥に加えて雨水の排水にも配慮することで、効果的な水の管理を実現できます。

土壌の透水性を向上させるためには、以下の手順を踏むことが重要です。

1.有機物の施用

堆肥や他の有機物を土壌に施すことで、土壌中の微生物や土壌中生物の活動を活性化させます。これにより、土壌の団粒構造が形成され、透水性が向上します。

2.多様性の維持

土壌中の生物の多様性を保つことも重要です。異なる種類の微生物や生物が共存することで、土壌の生態系が健全に機能し、土壌の透水性が改善されます。

これらの手法を組み合わせることで、土壌の透水性が向上し、水分の浸透がスムーズになります。地下の水の循環が促進され、作物の根が水と栄養を十分に吸収できる環境が整います。

注意点としては地下水位が地表に近い土壌では、水の迅速な排出が重要です。その場合は、サブソイラーと呼ばれる地下排水システムを畑に設置することで、地下へ浸透した水を効果的に畑の外へ排出できます。適切なサブソイラーの設計と配置を行い、水の排出を迅速かつ効率的に行えるようにしましょう。

また、地下水を集めるための暗渠を設けることも考慮しましょう。畑の周囲に暗渠を配置することで、地下へ浸透した水を効率的に受け取り、外部へ排出することができます。

さらに畑の通路にも排水設計を行うことが重要です。通路には適切な傾斜をつけて水がスムーズに流れるようにし、作業性の改善を図りましょう。通路に水がたまらないようなデザインを行うことで、作業効率が向上します。

これらの準備を事前に行うことで、地下水位が高い土壌でも迅速な水の排出が可能となります。適切な排水設備の導入により、畑の水はしっかりと管理され、作物の生育環境を最適化することができます。

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