ポッドキャストを始める覚悟を決めたら、なぜか広告代理店時代を思い出した
「かわちゃん、すぐクライアントに電話して。」
広告代理店に勤めていた頃、よく先輩にせっつかれた。オフィスの「島」の先頭のデスクで、椅子にもたれのけぞった先輩の声は低く、黒縁メガネの奥の眼差しが鋭く怖かった。
「はい。」
私は、小さな声で返事をして、固定電話の番号を指で押した。クライアントの番号はもう暗記している。心臓はバクバクしているのに、頭は妙に冴えわたっていた。
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来年からポッドキャストを始める。
先週そう決めてから、なぜか10年以上前に働いていた広告代理店時代のことをよく思い出すようになった。
思えば、あの頃は毎日が「限界突破」の連続だった。
期限ギリギリで提案書を仕上げたら、すぐに高圧的なクライアントに電話をかける。緊張で心臓がバクバクし、汗が滝のように流れても、目の前の仕事を止めるわけにはいかなかった。
不景気の中、やっと潜り込んだ会社だったし、他に行くあてもなかったから、「やらなければ先がない」というシンプルな事実だけが私を支えていた。
でも今振り返ると、あの時期こそが人生で最も成長した時間だった気がする。
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そんな感覚が、noteを連続投稿しながらさらにポッドキャストに挑戦しようとしている今と重なる。
40代から新しいことを始めるのは、とても怖い。しかも自分を公に晒すなんて! でも、過去の経験から、ここから新しい景色が見えることがわかっている。
今回は「やらなければ先がない」ではなく、「やらなければ進まない」だけど。
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新しい挑戦を前にした今、あの頃の恐怖と緊張を思い出しながらも、時代が変わったなぁと感じずにはいられない。
何者でもない一個人が、音声配信を気軽に始められるなんて、想像もしていなかったから。
そしてまた思い出してしまった。あの頃の私にとって「音声配信」といえば、ラジオだった。
皇居のそば、半蔵門にあるTokyo FM。広告代理店時代、クライアントが協賛していたラジオ番組の収録立ち会いで何度か訪れた。
高見恭子さんがパーソナリティーを務めている番組で、私は特に何をするわけでもなく、ただ台本を抱きしめて収録を見守っていた。
あの頃は、いつも濃紺や黒色のワンピースを着ていたっけ。代理店の私は裏方、私は黒子。 そういう美意識を持っていて、いつも演者よりも目立たないよう地味な色の服を好んできていた。
今思うと、そこまで気にすることでもなかったけれど、私は美意識に基づいた選択をするとき、とてつもなく頑な性質があるのだ。
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ポッドキャストのタイトルはどんなものにしようかな? サムネイルはどんな色にしようかな?
まいにちワクワク考えている。
広告代理店からITに移って今に至るけど、実はずっとクライアント企業のコミュニケーション戦略を一緒に考えてきた。
(私が勤めていたIT企業は、ソーシャルメディアの統合プラットフォームを企業に提供している)
私は別にクリエイティブ職ではなかったけど、自分が好きで得意で続けてきたことの延長線上だから、やっぱり楽しい。
ここ数年は、いろんな理由で迷い、ほとんど忘れかけていたけど、思わぬところで自分のルーツを再発見できて嬉しかったりもする。
こうして、自分の内面を探るプロセスを言語化していると、今まで気づけなかった視点が広がるし、これがまさにコーチングでクライアントと向き合う中で得られる感覚なんだと思う。
今回違っているのは、私はもう「黒子」じゃないってことだ。
サムネイルは、黒とか濃紺じゃなくて、うんと鮮やかな色にしたいと思っている。
それではみなさん、ごきげんよう。