妊活記録8.体外受精(B病院採卵二回目)~ケタミンを上回る悪夢~

※不妊治療中で採卵前の方はあんまり読まないほうがいいかも…。
あったことを体験通りに書いてるんですが、いやーな体験記になっちゃった…
こちらを読んだことで怖くなってしまっても、当方は責任を負いかねます…大丈夫、私も耐えられないのはこの一回だけだったし、そのあとの採卵は痛いけど耐えられる程度だし、昔と違ってかなり針も細くなっているようです。
好きな香りのオイルをしみ込ませたタオルハンカチを持っていくといいですよ

***

B病院の技術にはかなり期待をしていたのだが、一つだけの凍結胚を移植して陰性だったので、採卵からやり直しになった。
初診時から、低刺激法は採卵回数多くなりがちだし、すぐ結果が出るものではないと言われていたので、説明通りだから仕方ない。

今回の通院回数は全3回で、まあまあ…スタンダード…な診察頻度だったため、そんなに苦じゃなかった。
この病院で採卵2回目で、だいぶ通い慣れたのもある。

どこかの内診で、こんな一幕があった。
いつものように左卵巣奥が見えづらいらしく、ぐりぐりやられていて
間が持たないので、
「見づらいですかー?「見づらいですねー」
「今回も取りづらそうですねー前の病院でも全身麻酔だったけど左の奥がぐいぐいやられて麻酔から起きてつらかったんですよーケタミンだったんですけどー」
「ケタミンですかーあれはよくないですよねー(通じた!!)」
「そうなんですよ!脳にも悪い気がして!」
と楽しく会話。
この方はひそかに私が気に入っている診療部長?で、見えているものをすべて教えてくれるいいひとなのだ。
今思えば、この会話は完全に前振りだった。
普段の問題ない内診なら、こんなに会話ができるほどの時間はかからない。
さっと卵を見つけて、きゅっとモニター上に線を引くと、その線ですぐに卵の大きさがわかる。
採卵と違って内診は卵の大きささえわかればよいので、その一瞬で十分なのだ。
3回の診察で左に主席卵胞ともう一個の卵が育ち、右にももう一個あるのがわかり、採卵は日曜日に決まった。
その前後も出張が入っていて、この日に決まってくれなきゃほかの方に迷惑かけちゃうよ~💦
と焦っていたなかの唯一の空白の日で、なんて親思いの卵なんだ!と私は感心した。えらいぞ!でかした!
エストロゲンが低いと言われて少々不安だが、これはフェマーラの副作用でもあるそうなので、そこまで気にしなくてよいらしい。

順調ではあったが、前回移植不成功時に院長に勧められた検査に関してひと悶着もあり、私はだんだんB病院に通うことに疲弊してきた。
最初は好ましく思えた医師とのワンオンワンも、こちらを尊重してそうしてくれるならいいんだけど、そうじゃないんだよなぁ…。
話を聞いてくれもしないのに対面しなくちゃいけないのは、どうもプレッシャーに感じて気が重かった。

それはともかく卵が取れなきゃどうにもならないので、採卵当日。
前回と同様に準備をし、与えられたベッドに入り、順番を待つ。
もちろん緊張はあるが、前回耐えられないほど痛くなかったし、院長先生がやってくれると思うし大丈夫でしょう~♪と高をくくっていた。
この時の油断がいけないよ…。

呼ばれて手術室に入ったところ、軽いショックを受けた。
なぜか勝手に採卵は院長先生がやるものだと思っていたが、そこにいて手袋をはめているのは、この病院の若い常勤医師だ。
い、いや、この人だって毎日毎日多数の患者に採卵してきてるんだろうし、私だってそんなに難しい体質なわけじゃないだろうし、大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせる。

で、いよいよ激痛の局所麻酔が終わって、開始。
いやもう痛かった。惨いっていうか、酷いっていうか(どっちもむごいと読みます)。
痛いという表現がこの一語なことがもどかしい。
ちくんとかずきんとかじゃなくて、ごりごりのぐりゅぐりゅのぐおんぐおんみたいな。
普通採卵の痛みというのは局所麻酔を入れるときにずきん!とか、採卵のために針を刺す際のちくん!とかの痛みがメインになるのだが、
この医者は違うの(語りかける)!
下半身が見えないのでおそらくだが、この医者は卵を補足するためのプローブをやみくもに動かし、その動きで膣の内壁をごりごりに削ってきていた。
どこかに大きめの切り傷を負って、その治りかけのところを三角定規みたいなやつでえぐられるみたいな痛みに似てる…かな…

そしてそれが長い。いつまでやってんのって言いたいぐらい長い。
痛くても時間が短ければ耐えられるが、これには終わりが見えない。
なんとなく患者側でも音とか連絡の声で状況がわかるのだが、ことこの時に至っては何かが進んでいる様子はない。
どの段階でこんなに痛いのかもさっぱりわからない。

比較的容易と思われる右で、ごりゅごりゅ無遠慮にプローブで内臓をこすられ削られ、そして力が弱いのか針を入れても貫通させられないような動きを何度もされ、普段は人前で泣き言を漏らすことを恥だと思う武士の私でも、
さすがに「いだい…いだいい…早くおわってえ…」と遠慮なくうめいていた。
右でこれだぜ?左、どうなっちゃうんだよ…

このあたりで私も、こいつがとんでもなく不器用もしくは経験が浅いのではないかということに気づき、かなりの絶望感を味わっていた。
意識がある状態で何をされてるのかなんとなくわかるからこそ、技術がない医者がやみくもかつ無闇に体内を探り、しかも凶器を持っている状態なのがこんなに怖いものと思うのは初めてだった。
たぶん状況的には、最奥のすっごいアクセスしづらい奥歯とかに、超絶不器用な歯医者が、どこが虫歯かよくわかってない状態で、時間がギリギリで焦って全然別のところを削ろうとしているのと似ているのじゃないかと思う。
違うのは、口の中は見えないし何をされてるのかわからないし、口を開けてればいつかは終わるけど、採卵は卵が取れてるかどうかわかるし、卵が取れるまで、というか見えてる卵胞がなくなるまでは、終わらないということかな…。

右だけでもすでに限界だったのだが、終わったらしく「左にいきますねー」という絶望の宣告があり、わかっちゃいたが、左のぐりぐりはもう耐えられるもんじゃなかった。

もう何か思う余裕もなく「いだいー!!!!いだいー!!!やめてー!!」
と叫ぶだけの人体と化した私に、医者がひたすら滅茶苦茶に左奥をごりごり削ってくる。
永遠に終わらないかと思った。
本当の本当に医者も集中して見ているようだが、ぜんっぜん見えないらしい。
私の左卵巣はへその左側をぐいぐい押さないと見えないらしいので、この医者も片手でお腹を押し、片手でプローブを動かしている。
どこかで針を刺す動きに変わったらしいが、さっきの右卵巣で両手でも苦戦していたこやつが、片手で正確に刺せるわけがない。
力が弱いのか針を入れても一思いに貫通させられないとみえる痛みが何度も何度も何度も何度も体の中で暴れまわっていて、痛みが閾値を超えちゃって痛い以外の何も考えられない。
私の肩を無意味にさすっていた看護師もお腹を押さえる役に変わったが、あまり役に立っていない。
(よくトントンしてくれる白衣の天使が~みたいなレビューをあちこちで見かけるのだが、難航して痛かった時の何もできないおろおろしている看護師は憎たらしさしかなかった)
このやられている間、私はずっと痛みで叫んでいた。
受けている側からして、いける気配がしなかった。この痛み苦しみは一体いつ終わるんだろう

とっくに限界は超えていたが、もうすこし続いたら暴れだすか、緊急停止を叫ぶかと迷っていたあたりで、突如医者があきらめた。
あきらめて、院長先生を呼んできた。

院長先生は頭を低くしてお尻のほうを高くするなどして内診台の位置を変えたり、お腹を押す力も強かったりして的確な施術をしてるっぽいのはわかったが、それでも左は難航しているらしい。
ほどなく、ひときわ内臓に針が刺さるような痛みがあって、飛び上がれないけど体が飛び上がる感じだった。
い、いたい!!という声が勝手に出た。これが最後だったらしく、左が終わったような感触で抜けていってほっとした。
…が、まだ終わりではなく。また院長が右に移ろうとして思わず抗議した。「まだやるんですかぁ…!?」
「うん最後にもうちょっとだけねー」
と言われて絶望したが、これはすぐ終わった。
このぐらいの痛みなら全然いける。
明けない夜はない。ようやく地獄が終わった。体感としては、拷問だった。

地獄のような時間がやっと終わって、お礼を言って台から下がって、達成感でいっぱいでベッドに戻ってまた点滴をうけたが、こんな思いをしたんだし、長かったから当然前回より採れてるだろうし、成熟卵がたくさんあったからこんなに大変な思いをしたんだろうと思った。
この採卵一回で終わればいいけど、もしこんなことを何回もやれって言われたら、耐えられないかもしれない…。
とベッドでずっと思っていた。もう続行不可能かも。

ここの看護師さんはみんな優しくて世話を焼いてくれ、水が欲しいと言ったらすぐ持ってきてくれて、さっきのはぬるかったから冷たいのをもう一回持ってきたよ!と二回目も持ってきてくれて、皆さん本当にやさしくて天使のようだった。
採卵後は結果への期待もあってだいぶ気持ちも明るくて、終わってよかった~の気持ちだった。
ロビーに戻って夫の笑顔を見て安心し、すごく大変だったんだよ!労われ!と訴えたのち、今回の精子の結果はどうだろうね~よかったらふりかけ法やってみたいね~ときゃっきゃした。
このあとは培養士に呼ばれて、診察を受けて、今日の結果を聞いたら終わりだ。

問診室で結果の紙を見せられて、絶句した。採卵数は1個。
しかもモニターを見るとSサイズだから、たぶん成長していた主席卵胞じゃない。
え、じゃああの長い時間、何をしていたの?空胞だったということ?
右から一個、左から一個せめて採れてないと、苦痛に見合ってないじゃん。
私はショックで何も話せなくなってしまった。
いつも最悪の結果を考えて生きてるから、こんなにショックを受けたのは久しぶりだ。
あとは質問する気力もなく、はい…はい…。顕微で…。オプションも前回同様で…と話すので精いっぱいだった。
家に帰るまで、いや帰っても、もう無理かも…続行できないかも…とぐるぐるショックが回っている。

後日、嫌だったし悪い結果なら聞きたくなかったけど、もう10時になっちゃうので意を決して電話。
これだけ結果を聞くのが嫌だったということは、私は半ばダメな結果を予知していたようで、男性培養士から
「今回は…受精していたのち、胚盤胞まで培養させていたところなんですが…成長が停止してしまったため、培養を中止しました」
と言われ、ショックを受けつつも割と平静ではいられた。

そうかー…。この人が悪いわけじゃないけど、ひたすら物悲しい気持ちだ。
電話で教えてくれるのかなと思ったけど、どの段階までは生きてたのか聞きたくて、いつ成長が止まっちゃったのかと聞いたところ、ちゃんと教えてくれた。受精の次の日だそうだ。
ええー…。受精したのが16日夜だとしたら、17日~18日には死んでたってこと??
それって…染色体異常なのかな??そもそも生命力の問題なのかな?
あんなにきつかったのに、あんなに痛かったのに、運動もわりと頑張ってたのに、こんな結果じゃ立ち上がれないよ。

採卵の痛みが耐えがたかったせいで1週間ずっと転院先を調べ続けていて、これで胚盤胞になっちゃったらすぐ転院できないな、無駄に検査もさせられそうだし、ここでは受けたくないな、いっそだめになっちゃったら転院すぐできるのになとか罰当たりなことを思ったせいだったのだろうか。

まあ…この結果でこの病院についていけるほど、私は忍耐強くないかな…。
私はこの電話を職場からかけた。
ショックが抜けなくて、どこか一人で考えられる場所がほしいのだが、職場にそんな場所はない。
そもそも何を考えればいいのかわからないし、どうしたらいいのかもわからない。
転院する?もう一回今の場所で頑張る?…結論は出ない。だが同じ状況であの医者に採卵やっていただくのはもう絶対に不可だ。断固としてNO。
それなら転院を考えなければならないが、いったいどこへ…。とにかく採卵が痛いのはもう嫌なのだが、保険適用だとろくに静脈麻酔を使ってくれないし、使ったとしてもケタミンだったらそれはそれでいやだし…。

高刺激でないと自分の年齢体質的にもったいないとは思ってたけど、数が多いと採卵の刺突回数も時間もかかるし、だから低刺激なら耐えられるんじゃないかと思ったけど、それで採卵時間がかかる上に、取れる数が少なくなった挙句、全滅とか最悪じゃん…。何のために一か月頑張ったんだ。

B病院に決めた段階で、私はこれ以上調べられないほどに調べて、悩んで決めているので、もう何を調べて頼りにすればいいのかわからない。
泣いても仕方ないと思うから滅多に泣かない性格で、いつも日記に文字で気持ちを吐き出して書き留めて自分を落ち着かせるのだが、今回ばかりは2日ぐらい泣いて夫にあたった。
そもそも私の中では夫がメインの原因で不妊治療をしているので、こんなに私が苦労しなければならないのも夫の体質が不甲斐ないせいである。
あんまり思わない言わないようにしていたのだが、今回ばかりはそれを言わずにはいられなくて、けっこうひどいことも言ってしまった。

A病院からB病院に転院したときは期待も希望もあって意気揚々としていたのだが、この状態でどの情報を仕入れたらよくなるのかもわからないし、
採卵はその病院で一度やってみなければ何もわからないが、死ぬほどもう採卵が嫌なので、にっちもさっちもいかない。
詰んだ。


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