妊活記録6.体外受精(B病院採卵一回目)

B病院での採卵周期に入った。
生理開始後まもなく卵胞チェックのために、朝の電車で病院に向かう。

受付は自動化されていて、モニターがいたるところに頭上に設置されており、ここに自分の番号がチャイム音とともに表示されるそうだ。
でも2秒で消える。
そんなときはメールでも配信されているから、それを確認すればいいそうだ。
前の病院ではフルネームで呼ばれていたので、しかも自宅に近い病院だったので、ひどい呼び出し方法だと常々思っていた。
ずいぶんハイテクになったなぁ。

驚いたことにここは採血スタッフが常時複数人が待機しており、採血室がきちんと備えてあった。
A病院は物置も兼ねた雑然とした部屋で、絶え間なく後ろを看護師がうろうろしている中で失敗されながら採血されていたのだ。
しかも採血スタッフがみなさん若くてきちんとしており、それでいてものすごく手早かった。

ほどなく内診室に呼ばれ、内診台に腰かけたところ、完全自動化されたタイプの内診台だった。
台というか、もはや開脚させられるリクライニング椅子だ。
このタイプの内診台は初めてではないが、A病院は今まで自分でまたがって「前のほうにずりさがってくださーい」のタイプだったので、ここでもちょっと感動した。
病院側と患者側の間もきちんとカーテンがかかり、カーテンの向こう側は照明も落とされており、恥ずかしくないような配慮もされている。
卵胞チェックのプローブ(エコーかける機械)の扱いも非常に丁寧で、全然痛くない。
前の病院も痛いわけではなかったが、なにせ忙しい中で医師が一人でやっているため、その…扱いが雑というか…。

ここまでで、すっごくちゃんとした病院だ、と思った。
設備がすべて整っていて、清潔で、目的にかなうように最適化されている。
患者への細かいところの配慮がすごい。

医師の診察でホルモン値が問題ないこと、薬の処方指示を受け、この日の診察は終了した。
薬は、フェマーラなるレトロゾールを一日2錠、5日間。
次の診察日は4日後とのことだ。

採卵周期2回目の通院で、前回の流れをもう一度繰り返し、だんだんこの病院の流れが飲み込めてきた。
内診の結果も教えてくれ、12ミリ越えが一つ、ほかに小さいものが8つほどあるとのこと。
ここで初めてわかったが、私の左卵巣は子宮の裏だか奥だかにあるとのことで、比較的すぐに見つけられる右卵巣と違い、かなりプローブを奥におしつけて、時にはへその左横をぐいぐい押さえつけないと見えないらしい。
あー、A病院で麻酔中に目覚めたのは、たぶんこの時に痛かったからだな…

さて、診察でおなじみのゴナールエフ皮下注ペンの注射を指示されるとともに、もう一度4日後の通院を行ったうえで、おそらく採卵日は6日後の予定とのこと。
ゴナールエフ皮下注ペンはこの日に150単位を一回、翌々日にもう一度150単位を注射した。

順調に進んでいるのでこのあたりでほっとしたが、やはり通院回数は増えている気がした。
移動時間が長くなっていることもあり、仕事との両立が難しい午前診察に変わったこともあり、体感として、前よりは通うのが大変だ。
ただまあ、思った通り卵は複数育っていて、これならば低刺激でも複数個取れるだろうし、設備もよくなっているので、転院してよかったと心から思った。
いままで胚盤胞移植を2回してどちらも陰性だったので、着床障害検査をする提案もあったが、一応こちらの病院の移植を体験してから、ということにした。

だいぶB病院への通院も慣れてきて、流れもわかって意気揚々と通っていたのだが、採卵周期3回目の通院で、

●卵胞が右20.9ミリ、左10.4ミリでかなり育ってきている、あとほかに卵胞5個ぐらいあった。全部で7個かな?
●LHも上がって来ていて排卵しそう
●なので採卵は明日にしましょう。いいですか??
と突如問われ、(えっ…出張…)と思ったが、行けます!と言うほかなかった。

ちょうどよく夫も休みだったので、現地まで連れてこれそうだ。
話がとんとんと進み、看護師に採卵前の薬の説明を受け、
排卵トリガーを入れるためのブセレリン点鼻薬を丸一本と、
今日の18:00、22:00、24:00に入れる、排卵ストップのためのボルタレン座薬をもらった。
一回目採卵時では高くて期限がすぐ切れるという噂の点鼻薬の処方はなかったが、とうとうここで登場してしまった。
言われた通り鼻に勢いよく噴霧したが、微妙に嫌な感触の薬で、できてるのかどうかよくわからなくて不安だし、時間差で喉に降りてきておえ~となるので、私はあまり好きではないなと思った。

説明してくれた看護師に移植スケジュールについて聞いてみると、すべて医師の指示にはなるが、低刺激法の特徴として、すべて凍結というわけではなく、移植可能という判断があれば、新鮮胚移植にすぐに入れる場合もあるそうだ。
凍結胚は凍結・融解によるダメージもあるものなので、新鮮胚だと針で刺される以外のダメージ受けなそうでそちらも期待した。

もちろん採卵はトラウマなので、採卵は恐怖そのもだった。
家で、一人で頭を抱えて嫌な気持ちに浸る。
こんなに何かがいやだいやだと思うのは、高校生の時のマラソン大会以来である。
採卵やだな…局所麻酔してもどうせ痛いんだろうな…細かろうがなんだろうが針は針だもんな…

当日は昼の移植で、仕事の出張先からバタバタと皆さんに謝り倒しまくりながら急いで病院に向かったため、そこまで恐怖感を感じられる余裕がなかったのでかえってよかったのかもしれない。

あれよあれよとナースセンターで一通り説明を聞いて、更衣室で手術着に着替えてトイレ行って、ベッドで待つようにという指示だったので、いつ呼ばれるのだろうとドキドキしてベッドで待つ。

昨日説明のときは10分遅れたら許されないぐらいの感じだったのですぐ呼ばれると思ったが、待ってても一向に呼ばれない。
寝転がっててもいいんだろうけどそういう感じじゃないなぁ。
10分経っても、20分経っても、30分経っても多分呼ばれなかった。
初めは悶々としていたが、途中で待ちくたびれて、もう早く終わらせて楽になりたい、という気持ちに変わっていた。

とうとう呼ばれてしまい、トイレを済ませて先導されて手術室に入った。
A病院よりは薄暗くて、そこまでの圧迫感を感じないというか、広々としている。中の人が多すぎて、圧倒されてなにか考える余裕はない。
いよいよか、と思いながら言われるがまま台にこしかけ、足上げて、ベルト巻かれて、もうなすがまま。
消毒の不快感はそりゃあるけど、前の病院よりずいぶんましだ。

いよいよか…と緊張で息を荒くしたが、中をエコーで見た院長先生から、
「やっぱり一番大きな主席卵胞は排卵しちゃったみたいなんですけど、あといくつか残っていて、あと主席卵胞も卵胞液に残ってるかもしれないので、採卵でいいですか?」
と合意形成があり、この状態でいいえってことはできないだろうと思った。
そりゃあ、昨日の時点で2センチに迫ってたもんな…。
あーあ、やっぱり20.9mmのビッグエッグはなくなっちゃったか。悲しいなぁ。

「じゃあちくちくしますよー」
の声掛けがあり、いよいよか、と思った直後、すんでのところで先生は私が局所麻酔希望者だったとわかったらしく、
「あれっ局所麻酔するんでしたっけ?しますか?」と聞いてくれた。

「ぜひ!」と答えて危なく麻酔なしのところを免れた。
が、この麻酔が痛い。ずぐんともどごんとも感じる、味わったことのない痛みだった。顔が歪んだ。
看護士が「だいじょうぶですかー」と聞いてくるのだが、こんなのどう答えればいいのやら。だいじょうぶじゃないですー

いやでもこれは本番じゃないはず、読んだ体験記の痛みはこんなものではなかったはずだ。
これ以上の筆舌に尽くしがたい苦痛は一体いつ来るのだ。
麻酔が終わった後、先生はもごもご「ちくっとしますよー」と言っている気がするが、はじめの右?のほうはあー痛いのかな?なんか当たってる感じはするな、ぐらいで、そこまでの痛みとかではない。
圧迫感はあるかな?
左に移った後、ものすごく取りづらかったらしく、
「おなか押しますよ」
と言われて、本当にぐいぐい腹を押されぐえっと声が漏れたぐらいつぶされたが、そして膣?にぐいぐい押し付けられて別の意味で苦しいが、
「これは取りづらい位置にあるっていう…?」と聞いたところ、
「そうなんですよー!奥にあってー!」
と返事が返ってきて、変なことだが返事に安心して深呼吸ができるようになってきた。うん、耐えられないぐらいじゃない。

ケタミンの悪夢と、麻酔覚めかけ時の痛みはこんなものじゃなかった。そして、あの時の痛みも左側だったから、苦戦していたんだろうと思う。
そんなわけで最後におなかをぎゅうぎゅうに押されて膣も押し付けられてぐいぐいされてたときが最大の難関で、まだあるのかと思って「まだありますか…?」と聞いたら「終わりですよー」と言われてえっ!?もう終わったの!?と思った。
まだまだあると思ってたし、前哨戦の感じの痛みだったので、こんなもんじゃないと思ってた。よかったー

前回は全然別の種類の苦痛さなので比較はできないが、もちろん嫌だったし不快だったし好き好んではやりたくないが、これなら全然耐えられる、と思った。
耐えられるレベルの痛みだった。
麻酔が一番激痛だったが、そこがピークで、それを乗り越えればなんとかなった。
お腹を全力で押しながら刺してた院長先生は大変そうだったが、お上手なのかそんなに長時間でもなかった。
排卵済みだったのは残念だったけど、まだ機会はあるだろうから、ここで頑張ろう!

一時間ほどの抗生物質点滴のあと、培養室に呼ばれて、今日の結果と、受精方法の確認。
採れたのは未成熟卵2つだそうだ。ちょっとショックを受ける。
8つはあったはずなんだけどな…

まあ、仕方ない。低刺激だし、排卵済みだけど採卵しますかの選択肢は私にあった。
それで、未成熟だから成熟を狙う、だそうだ。
もう知ってるけど、丁寧に体外受精と顕微授精の違いを説明され、やっぱりおすすめは顕微授精だそうなので、あっさり顕微にした。
体外受精もしたいけど、いつもいつも精子濃度の数値が悪いから…。
濃度を聞いてみたら、今回は40万だったそうだ。微増。

最後、IMSIとPICSIの違いと、私がIMSIをしたからと言って見た目が形態良好でも染色体異常がないわけではないのかきいたら、やはりそうだと言われた。
見た目の相関性もあるが、染色体異常をなくせるのはPICSIだそうだ。
ということでオプションでPICSIをお願いした。

最後に、院長先生の診察。
「今回はね、残念ながら一番大きい卵は排卵しちゃってたということで、でも小さいものが二個取れましたからね~、
これが成長してくれたら胚盤胞にできますからね~」
と言われる。

未成熟卵だと、なかなか期待は薄いだろうな…。
この病院での採卵は初回だから、仕方がない。
初めは全部で8つほどあったはずだから、ずいぶん減ってしまった。
次回は調整してくれるだろう、と次に期待だ。
そういえば局所麻酔だからわかったが、2個しか取れてないのに今回5回ぐらいは刺してた気がする。
取れる卵のおよそ二倍刺すとしたら、取りづらい位置にある卵を、いっぱい刺す系のさらに医師だともっと刺すとしたら、前回40回ぐらいは刺突されてたのでは…?
そりゃ卵巣腫れるよー。OHSSがあの程度でよかった…

二日後、病院に受精確認の電話。ここは電話で聞くことになっているのだそうだ。
未成熟卵だったのでかなり覚悟して聞いたら、
2つのうち一つは受精できずダメになってしまったとのことで、培養停止。
一つは受精して、培養中。
次は胚盤胞になったかどうかの確認で5日後に電話してくれだそうだ。
まだ安心できないが、もう一つが残ってくれてよかった。

5日後、だめだろうな、と自分に予防線を張ってから、培養室に電話。
たったひとつしか受精できてなかったし、いつもより待ち時間が長かったので、これはだめだったんだろうな…と悲しい気持ちでいたが、なんと胚盤胞が一個育ったそうだ。
す、すげえ!!!たった一個しかなかったのに!?
これが噂の培養技術か…。何が違うんだろう???
うれしい。今回は主席卵胞は排卵してたしダメだと思っていた。

後日、医師の診察を受けるために来院し、ここでグレードを告げられたが、
3ABとのこと。
A病院では特に卵の評価はなかったので、これがはっきり言われた初めての評価だ。
けっこういい!うれしい。

採卵結果
採卵できた卵の数 2
成熟卵 0 未成熟卵 2
正常受精 1
凍結できた卵の数 1

あなたとともに頑張ります。