gold 〜異能力デスゲーム〜3話

「おい、いるんだろ。」どうせはったりだ。息を殺せ、俺。ドクドク。ピッピッピッ。
「俺と同じ神に選ばれた候補者がよ。」はったりだ。はったりだ。ドクドク。ピッピッ。待て?こいつ神に選ばれた候補者って言ったか?俺と同じにこいつもあのネズミのホログラムを見たのか?そしたら俺はこいつと殺し合いをしないといけないのか?いやだ。いやだ。死にたくない。こいつは銃を持っている。ここでバレたりなんかしたら殺される。
「じゃあ、もういいや。」やっと諦めたか。
ブスー。ふすまの破ける音とともに針状の鉄棒が自分の目のほんの右を通り抜ける。
「うわー。」
「いるじゃねぇか。」
勢いよく戸を押し倒す。逃げなきゃ。逃げなきゃ。
よろけながら玄関まで行く。
パーン。左ふくらはぎに銃弾が撃たれる。血が。血が。
靴も履かずに玄関を出る。痛い。歩くたびに痛い。逃げなきゃ。死ぬ。
2階だ。やつが来る。死にたくない。跳ぶしかない。覚悟を決めろ、運上光。
ヒュッ。目を瞑る。左の脇腹から着地する。痛え。鉄球で殴られたような衝撃が腹に来る。
早く。早く。息が浅くなりながら逃げる。
遠くに。銃で撃たれたからショックなのか思考がうまくまとまらない。
大きめの倉庫のようなところに逃げ込む。
はぁ。はぁ。上に羽織っていた上着のシャツでふくらはぎをギュッと絞る。俺、ここで死ぬのかな。あー俺の人生ってなんだったんだろ。いろんな人間に巻き込まれて。なんかそう考えてたら腹が立ってきた。眠い、もう疲れた。
ピッピッ。もうわかってきた。この頭のピッピッは近づいたらわかるやつなんだ。だから俺がカフェにいた時もわかったし、アパートの部屋に隠れてたのもバレたんだ。カフェの店員さんを思い出す。大丈夫ですか?世の中にも優しい人がいるんだ。なのになんで殺すんだよ。お姉さんのためにも一矢報いてやる。
倉庫の大きな扉が開かれる。そこから光が倉庫内に木漏れ日のように入ってくる。
「おー探したぜ。」やつが入ってくる。この暗い中だったら奇襲が決まるかもしれない。
やつはゆっくり歩いて、こちらに向かってくる。列になっている棚に隠れる。
パン。銃声音が倉庫の中を反響する。
「出てこいよ。」
相手が歩いてきた方向と逆向きに棚を沿って移動する。
「逃げてばっかいないで。お前の能力はなんなんだよ。」能力?能力ってなんだ?記憶を思い返す。ネズミのホログラムが言っていた。確かに言っていた。俺の能力はなんなんだ。
「どうせ、逃げてばっかだ。クソ雑魚能力なんだろうが。」やつは高らかに笑う。
「しょうがねー。こんなんやってたら俺がいじめっ子みたいになっちまうだろうが。冥土の手土産に俺の能力を教えてやる。俺の能力は武器を形成する能力。」
武器。それで納得がいった。だからこの銃規制社会でやつは銃を持ってるのか。それに針状の剣をアパートのとこで作り出せたのか。
「俺は、神様に感謝してるんだ。こんな力を与えてくれたことにな。」
でもそれは人を傷つける力じゃないか。
今だ。勢いよく。棚を押し倒す。
やったか?
ウィーンウィーン。
「このやろう。」チェーソーで俺が押し倒した棚をぶったぎってくる。
やばい。
チェーソーで全部を切り掛かって薙ぎ払ってくる。 
階段を使って2階に行く。走りながら考える。
もう時間はもうない。もう勝てる手立てがない。やつを怒らせてしまった。楽には死ねないだろう。あいつに会いたいな。好きな女の子の顔を思い浮かべる。あいつの笑った顔、あいつのちょっと怒った顔。涙がポロリポロリと顔から溢れてくる。なんで俺なんだよ。階段を駆け降りる。
外に出る。早く逃げなきゃ。どこまで逃げればいい?そう思った瞬間外に出るレールに足が引っかかる。
やべ。引っかかってこけてしまう。やつがチェーンソーを持ってこっちに向かってくる。けつが地面についたまま手で後ろに逃げる。
「よくも俺を傷つけてくれたな。」
ガサ。
銃を構えられる。

ああ死ぬんだ。目を瞑る。

運上光の能力。

パーン。

「物体の状態を元に戻す力。」




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