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小さなお花屋さんのお話④〜花屋の名前〜

自然が豊かな町にある、
小さなお花屋さんのお話。

お花が大好きな店主がお店に立つ
小さなお花屋さん。

そこは時間がゆっくり流れるような
のんびりした場所。


暑い日差しが降り注ぐ夏の日。

遊びに来ていた常連の男の子が店主に聞いてきました。

「ねぇ、このお花屋さんの名前なんて読むの?
どんな意味?」

店主は少し恥ずかしそうに話します。

「"ゆう"って読みます。意味はね、友を結びますように。」
「実は私、友だちと呼べる人が1人もいないの。お花が大好きなだけで人間の友達がいなくて、友達ができたらいいなぁと思って。
この花屋が友だちを結びつけてくれますようにってつけました。」

常連の男の子がにっこりして言います。

「じゃあ叶ってるね。
僕たちはもう友達だもんね。
それにたくさんの人が笑顔になってまた来てくれるし。
みんなお花屋さんのこと大好きって言ってるよ。」

店主の顔がほころびます。

「そうだねー。叶ってるねー。
花たちが結びつけてくれたねー。
こんなにかわいい友達ができてたんだねー。」

「大切に思い合える人たちは友達だよ。」

男の子の言葉は、店主の"友だちの定義"をふわっと緩めてくれました。


「そうだ!」
店主は何やら思い立ったように軽い足取りで
花苗を集めてきます。

「何するの?」

「チームを作ります。」

素敵な花言葉を持った花たちが
たくさん集まって寄せ植えになります。
来てくれるお客様をお迎えしましょうと。

マリーゴールド
ミニバラ
ペチュニア
オレガノ
ホワイトラブ
カリブラコア
アンゲロニア…


出来上がった寄せ植えを見て

「いろんな種類の花が集まってて楽しそう!
何だか強そうだし。」
と男の子が、

「ひとつでも可愛いけど、集まるとまた違う顔になって素敵。」
と店主が言います。

店主は
寄せ植えを入り口の看板の下に置いてつぶやきます。

カラフルで涼しげな花たちが
ここへ来てくれる人たちを優しく結び、
心やすらぐ時間にしてくれますように。


ここはお花が大好きな店主の小さなお花屋さん。


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