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アートワークで振り返る2022年のSKE48

いつのことだったかはっきりと覚えていませんが、2022年が始まったばかりの頃、知人のデザイナーから「これすごいよね」と言われたのがSKE48の10代メンバーから選出された『プリマステラ』のロゴでした。「かっこいい」でも「かわいい」でもなく「すごい」と形容されたこのロゴデザイン。
「やっぱりすごいよね」「このグループは衣装もね…」と当時は少しピントがずれてしまった会話。

じゃあ一体何が「スゴイ」のか、知人の言った「スゴイ」とは違うかもしれませんが、自分なりに解釈していってみよう。。。

という感じで考え出したのは良いのですが、これはなかなか面白いことが起きているなと思いだしたので、どうせなら色々ひっくるめて2022年という年を『SKE48』がリリースしたアートワークに焦点を当てて振り返ってみようかなと思います。

2021年の終わり頃から、、、もう2022年縛りから外れてしまいますが、自分が変化の兆しを感じたのがこれなので、どうしても外すことが出来ず、ここから話していきます。2021年の終わりにいったい何があったのかというと、これです。

『Akari Suda sing with the guitar ~花車と六弦琴~』

ここで展開されたメインビジュアル。

自分が初めて見たのは動画配信だったと思うのですが、流行りのレトロな手書き風のイラストを配置し、やはり流行りのラフな手書き風のタイトル。ここまで尖った「今」を表現した作品を打ち出すのはかなり勇気がいります。

少し意地の悪い表現を使います。(ファンの方で気を悪くされる方がいらっしゃたらスミマセン)
「人気のあるメンバーで且つ一定の動員もマネタイズも期待できるから実現できたデザインなんだろうな、ここまで尖ったことは一回限りで『SKE48』本体では出来ないだろうな」と思っていました。
ですが、ご存じの通りこのデザインの流れは2022年秋に日本ガイシホールで行われた『須田亜香里卒業コンサート@日本ガイシホール ~君だけが瞳の中のセンター~』まで引き継がれることになります。


プリマステラ

ここでようやく序盤に話した『プリマステラ』のロゴに触れることが出来ます。
色々なあれで当初の予定とは異なる形で開催された「New Year Live Event 2022 SKE48 新春LIVE~プリマステラとカミングフレーバー~」を前に、するりと発表されたロゴデザイン。

いくつかのデザイン候補の中からメンバーが選んだものと記憶しています。じゃあ一体なにが「スゴイ」のか、もちろんロゴに込められた意味などはありますが、前述のデザイナーはそういう前提知識は持ちあわせていない為、デザインだけを見てそう表現したことになります。

それを自分なりに解釈すると、「絶妙にアンバランス」で「なんとなく不安定」に着地しました。美しい星形の五芒星を思わせるデザインと斜体のカタカナ、一文字ごとに色を置き換えたセリフ体のフォント。
一見不安定なレイアウトにペールトーン※(1)のシアンブルーとマゼンタピンクの2色を配色しバランスがとられています。

これを感覚で選びとれる嗅覚はとても羨ましいです。

※(1)ペールトーンは淡く澄んだトーン群を差します。『PANTONE』が発表した2022の流行色のカラーパレットにも比較的多く使われている今年を象徴する色彩グループの一つです。

パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー 2022
https://www.pantone-store.jp/coy2022/palette.html

ここまでで3つのキーワードが出てきました。

  1. レトロ

  2. アンバランス

  3. 不安定

この3つのキーワードを軸にして2022年は展開していきました。(いったように見えました)

「心にFlower」とニュートロの打ちだし

実はこの文章2022年の6月頃に書いたものを焼き直しています。なのでまだ3月の話題なのですが、少し着地点が見えてきました。

出てきました。『ニュートロ』です。
これを最初に書けばそれで終わりじゃん。こんな洒落臭い説明口調の文章いらないよねと自己嫌悪が襲ってきました。

この『心にFlower』のジャケット、今年みたジャケットの中で1番好きです。この「好き」を書きたくてここまで文章を組み立てて来ました。

2019年頃から続くレトロブーム、ブームの背景には色々な理由と解釈があり一概には言えませんが、一説には完成され(過ぎ)た、調和のとれ(過ぎ)た様々な様式や、なし崩し的に管理社会化されつつある空気感からの無意識の抵抗がどこか不格好でアナログ的なものや「偶にはエラーくらい起こすよね」といった90年代~2000年代初頭のコンピュータ的な不安定なかわいらしさを欲望したとも言われています。

チェキやフィルムカメラへの憧憬もこのあたりに理由がありそうです。(もちろん無理やりのこじつけです)

そこでこのジャケットです。およそ可読性からかけ離れたタイトル周り、コミックのコマ割りのように賑やかに分割されたレイアウトに淡い背景色を配置し、グラデーションの枠組みで四隅を囲っています。

ニュートロの手法をそのまま用いたら冷たすぎる。日本の風景にはなじまない。そこをうまく人物の表情や仕草で整えて「日本風・ニュートロ」として完成させています。

ニュートロっていったいなんだ

これについては僕があれこれ言うよりもこの方のTweetを見ると一目瞭然なので貼っておきます。

4枚の画像でとてもコンパクトにまとめられています。
3枚目が「ニュートロ」ですね。webデザインでもとてもよく見かけます。
WEBの企画書を見ていると割と高確率でこんな感じのデザインが紛れています。ちょっと前はこれをパララックス(視差効果)を使って動かしたりしてユーザーに嫌がられたりしていました。

2枚目の「グリッチ」は「TikTok」のアプリアイコンに近いです。
『愛を君に愛を僕に』のジャケットはこのあたりの文脈に近しい気もします。

そして4枚目。「シティーポップ」です
そろそろ着地点が見えてきました。

2022年も終わりを迎えようとしています。
アドベントカレンダーのお話しを「栄、覚えていてくれ」さんから頂いてからなるべく遅い時期に投稿したいなと思いました。
理由は簡単で『超世代コンサート』で何かあるかもしれない。『時間が無い公演』で何か起きるかもしれない。です。

この文脈なので、もちろん『時間が無い』のアートワークに触れておきたいと思います。

『ストップ!! ひばりくん!』と『時間が無い』

「16人」のチームKⅡのメンバーのイラスト、髪とネオンカラーがメンバーカラーを表しています。イラストに描かれた表情は、知るはずの無いあの頃を想起するような刹那的な浮遊感を表現をしているようにも思わされました。

ここでも淡いペールトーンがデザインを支えています。
そしてタイトルとイラストに施されたネオンをイメージした発光色で整えられています。

「シティーポップ」はさきに上がった近年のいくつかの手法のなかでも最も「らしさ」を表現することが難しいです。コンピュータやフィルムカメラや玩具といったフィジカルな「素材」は実物や資料からなんとなくそのスタイルを模倣したり表現することは出来ますが、「シティーポップ」は軸が「体験」です。この「体験」を表現に落とし込んで共感を得ることはかなり難易度が高い作業です。

こんな感じで1年を通してデザインの作法に注目してきたつもりでしたが、このジャケットを見た第一印象は「あっ『ストップ‼ひばりくん!』だ!!!」でした。

シティポップには「わたせせいぞう」でも「Studioぴえろ」※(2)の魔法少女シリーズでもなく「江口寿史」が馴染んだようです。

※(2)Studioぴえろ

最近は動画は1.5倍速、ギターソロは飛ばされる。そんな寂しい視聴スタイルが好まれるそうです。
せっかく溜めた間も、小指の皮が擦り切れるほど練習した速弾きも台無しです。ジェームズ・ディーンのため息もスキップです。

「そんなに急いで何をするんだろう、もっとゆったりでもいいじゃん」という疑問がぬぐい切れないですが、
このアルバムは久しぶりに全編を通して、もちろん余白を含めて一つの作品として楽しめる作品でした。

終わりに

いきなり舵をきりますが、とてもとても不安で先行きの見えない数年間です。でしたと言えないのがつらいところです。そんな中でも回転することを止めなかったグループが、少しだけ光が見え始めた2022年にリリースした作品たちが切りとったのは、誰かの言葉を借りれば、この時代に確かにいたという『刹那の今』のようにもみえました。

何が「表」で何が「裏」かはどこに身を置くかによって変わって来ると思います。この期間エンタメの業界ではステージに上がる演者たちも大変なダメージを受けましたが、それを支える「裏方」たちのモチベーションを維持することも同じくらいに困難だったことでしょう。

そんな裏方たちの仕事に焦点をあてつつ、自分の思考整理も兼て、まるで「空の青さ 説明する」かのような賢しい文章をでっちあげてみました。

全く関係のない「自分にとって都合のいい」事実をだけを組み合わせて理屈を組み立てることは陰謀論だとか、昨今別の意味をはらんできたナラティブに近しい手法ですが、
その手法を逆手に使って、エンターテインメントとして、「こんな見方もできるよね?」という楽しみ方を提示してみたつもりです。

「note」もSNSである以上、あまり自分の考えを表現することは避けてきましたが、どうやら今年で使い始めて8年目だそうです。いつもは釣りとか深海魚とか野鳥とかそんな内容のことを書いて来ました。個人名こそなるべく出さないようにしましたが「アイドル」について書くのは多分初めてです。

これがはたして「推し活」を描いたことになるのか不安ですが、だいたい書きたいことは書いたかなと思います。こんな感じでいいかな?

それでは最後にこの人の歌詞を引用して終わりたいと思います。と思ったら、ご本人のそのものズバリのTweetがあったのでそれを貼り付けておきます。
読んで下さった方がいらっしゃったら、ありがとうございます。
おやすミッフィーちゃん!


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