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ウクライナ応援コンサートに行って

一昨日、ウクライナ応援コンサートに行ってきた。
【コバケン(小林研一郎)とその仲間たちオーケストラ】と【豊島区】との共催で、1週間ほど前に急遽決まったイベントらしい。
私は、フォローしている作家の絲山秋子さんのリツイートで知った。

仕事を早めに切り上げた妹と一緒に、17時ちょっと過ぎに、会場となった池袋西口公園に着いた。
コンサートは17:30からで、すでに黒山の人だかりだった。
あちこちにウクライナの旗やウクライナ・カラーの物を身に付けた人がいた。
暖かい日でもあり、また人数も多かったせいか全く寒さを感じない。
そして、みんな、とても静かだった。
コロナ禍ということもあるだろうけれど、
ロシアの侵攻を受けているウクライナの惨状を思うと、言葉が出ないのかもしれない。

野外コンサート会場が青と黄色にライトアップされて、コンサートが始まった。
フリーアナウンサーの朝岡聡さんの司会で、豊島区長と豊島区議会議長が登壇した。
豊島区は、LGBTQを意識した町づくりに熱心で、公園整備などの文化事業にも積極的だと聞いている。
今回のロシアによるウクライナ侵攻にも区議会としてノーを宣言して積極的に活動しているらしい。
池袋西口といえば、歓楽街の代表格で、私の少女時代は小説『池袋ウェストゲートパーク』シリーズのイメージが強かった。
今は、東京でも数少ない大型書店が多く残る町であり、東京藝術劇場もあって、サブカル含め様々なカルチャーの発信地となっている。
立教大学に縁がある私としては、豊島区から反戦の声があがるのが、なんだか嬉しかった。

オーケストラの演奏の前に、ウクライナ人でオペラ歌手のオクサーナ・ステパニュックさんがウクライナ国歌を歌ってくれた。
言葉は分からないけれど、とても力強く心に響く歌だった。
帰宅してからネットで歌詞の意味を調べた。

ウクライナの栄光は滅びず 自由も然り
運命は再び我等に微笑まん
朝日に散る霧の如く 敵は消え失せよう
我等が自由の土地を自らの手で治めるのだ
自由のために身も心も捧げよう
今こそコサック民族の血を示す時ぞ!
(Webサイト「世界の民謡・童謡」より引用
http://www.worldfolksong.com/sp/national-anthem/ukraine.html)

同サイトによると、この歌は、ロシア革命の年に独立したウクライナで国歌として採用され、ソ連から独立後に再び国歌となった。

ウクライナの人々が、今どれほど強く、この歌詞を噛みしめているかと思うと胸がつまる。

グローバル化が進んだ現代にあって、様々な政治的駆け引きや思惑があるにせよ、私たちは世界の人と少なくとも表面上は平和理に交流し合って生きていくものと信じていた。
地球は、もう戦争には耐えられないのだから、そんなことをするのはナンセンスだと、それが21世紀だと思っていた。

しかし、気づけばコロナ禍が二極化と分断を進め、富は集中し貧しい者は益々貧しくなり、アフガニスタンはタリバンに、ミャンマーは軍に再び支配され、独裁的で強権的な勢力の前に民主主義は押され気味になってしまった。

最近、私は、よく、日本で開かれたラグビーワールドカップを思い出す。
あの時は、本当に楽しかった。
試合会場や特設会場に足を運び、色々な国の人と気軽に交流した。
町には観戦に来た外国の人が溢れ、みんな一緒になって他国の国歌を歌い、応援した。

それが、今は、儚い夢のように思える。

ウクライナに再び平和と自由が訪れることを願ってやまない。
日本も、これからどうなっていくのか分からないなかで、私はどうすればいいのか。
今は少額の寄付しかできない。
とにかく、何があっても、差別だけはしないように心がけたいと改めて思う。

オーケストラの演目の最初は、シベリウスのフィンランディアだった。
司会の説明で知ったが、この曲は、帝政ロシアの圧政下にあったフィンランドで、独立運動の一環として上演された民族史劇の曲らしい。
今もフィンランドでは第二の国歌と言われる程に大事にされていて、映画『ダイハード2』のエンディングにフィンランディアが流されているのは、監督がフィンランド人だからだという。

今日、久しぶりに『ダイハード2』を見直してみた。
血みどろになって孤軍奮闘するマクレーン刑事が、空港をジャックしたテロリストを倒す圧巻の最後のシーンからエンディングにかけて、高らかにフィンランディアが鳴り響く。

悪いヤツをやっつける。そのための手段は問わない。
SNSもないiPhoneもない90年代の牧歌的な映画。
けれど、ラストで、不時着した機体の周りを、「ホリー、ホリー」としつこいくらいに妻の名前を呼びながら探し回るマクレーンの姿がやけに新鮮に映った。
機体は破損もせず無事に不時着したのだから、妻は無事に決まっている。
待っていれば、そのうち降りてくる。
それなのに、不安で仕方ないマクレーンが、滑稽で愛しい。
彼が妻に会えた瞬間、ああ、これで本当に戦いは終わったんだと観ている方も、やっとホッとする。

ウクライナの人が家族と抱き合って、本当にもう安全なんだと平和を実感できる日が、一日も早く来ますように。
朝起きると、戦争終結の報が流れていないかと、つい期待してニュースを確認してしまう。
高らかなフィンランディアの調べを聞きたい。

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