ニヒル牛のおかやん様の話

少し前にTwitterにて
「物を作る時の心意気などに影響与えた四天王は
【巻上公一】
【平沢進】
【横川理彦】
【ニヒル牛のおかやん様】だよ」と呟いた。

このラインナップで、なんでおかやん様が出るの、とツッコミ少々有り。
でも、実際この四人の中でおかやん様がある意味一番、私の心の灯火だったりする。

今回は、その話。
ほんの少し昔。
まだ、おかやん様がニヒル牛で店番していた頃の話。

先にちょっと書いておくけども、うちの親は客観的に見て毒親の範疇に入る。
なので、そういう話が駄目な方はごめんなさい。
何がどうとか詳細は気が向いた際に他の記事で書くかもしれないが、まぁ今回の話はそんな親が発端だった。

ニヒル牛で細々と自分の作品を置いていた私に母が言ってきた。

「お前如きの作品が売れるなら、私の作品の方が売れるに決まってる。箱に置いて売ってこい」

母も手芸はやる方だったが、イヤですよ。
あと、そんな売れてるわけじゃないですよ。

「売り上げに貢献してやろうとしているのに、その態度はなんだ」
「お前のなんかより高級なものを売らせてやるって言ってるのに」

高級品を売りたいわけじゃないよ。
そういう所じゃないよ。ニヒル牛に行ったこともないでしょ? 

人の話を聞くようなら毒親じゃないよね。
挙句に父や兄まで入ってきた。

「どうせ、お前のなんか安物でゴミみたいなもんだろ。それより良い物を置かせてやるって言ってんのが判らないのか」
「お前は家族の優しさが判ってない」

等々、云々。
いやー、本当にありがたくないわ。
そういう場所じゃないんだってば。
多分、箱代を私に払わせ、諸々の手配とかも私にやらせて、面倒と責任はおっ被せて。
売上の上前だけはねたいって事なんだろう。
だから、そんな儲けてないってば。

他にも、ここで書いたら各方面に無礼千万な発言を朝な夕なに3人がかりでされ続け。
数日戦ったが、多勢に無勢。
致し方なし。

自分の作品と一緒に、母の作ったものをニヒル牛に持っていった。
材料は高級かもしれないが、手間も愛情もこもってない何かを。

ここまでが前フリ。
長い。
あと、こういう話が嫌いな方はごめんなさい。

さて、いつも通りニヒル牛に納品に。
元気に店番をするおかやん様に迎えられながら。
おかやん様は、いつも楽しそうに大切そうに作品を見て下さる。
だから、申し訳無さでいっぱい。
その日は一応、普段通り納品をして帰った。

その後。
しばらくして、また母が自信満々に売り物を持ってきた。
「こないだのも売れてる筈だから、これを納品しがてら金も回収してこい」
そう言って渡されたものは、なんか既に材料も高級品でもなんでもない何か。
なんの根拠があって、そんな自信満々になれんの。
虚無感増しましつつ自分の作品が出来た頃に、とぼとぼとニヒル牛に母の売り物も持っていった。

この日も、おかやん様が店番をしてらして。
いつも通りに納品しようとした時に、おかやん様が静かに言った。
「これ、あなたの作品じゃないでしょ?」
「…あはは…判りますか…」
「判るよ! 全然あなたの作品と違うもの!
 誰かに、箱に一緒に置けって言われたのかい」
「…はい、まぁ…そうなんですけども…」
「あんたは人がいいから断れなかったんだろう。
 自信を持ちなよ。あんたは良い物を作ってるよ。大丈夫よ。
 だから、あんたは、あの箱をあんたの好きな物でいっぱいにするのよ。
 気を遣わなくていいんだから。大丈夫よ」

ちょっと泣いた。

「だからね。これも、この前のも持って帰って突き返してやりゃいいよ」

おかやん様はお見通し。
自分の意に沿わない物を持って行って本当にごめんなさい。
そして、本当にありがとうございました。

母の売り物は突っ返した。
なんか言っていた気がするけど、もう覚えてない。

あの時の事が、とても大事に胸にあるんですよ。
あれから、しょーもなかったり拙かったり、時間かかったりしても自分が好きな物を作り続けてるし、作るたびに楽しいのは
折に触れて、あの時のことを思い出すからなんですわ。
まぁ、相変わらず売れてるわけじゃないけど(笑)

おかやん様、本当にありがとうございました。
そして、本当にあの時はごめんなさい。
時間はかかってますが、自分の好きな物でもっといっぱいにしていきますね。

いつも、いつまでも元気にお過ごし下さいね。

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