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『 制作 』 .4   「 画材の使い方 」 




画材の使い方など試行錯誤する中で、結局3種類のものを使う様になり、それぞれ中々に難しく、ある程度使えるようになるまで結構な時間を費やす事になってしまいました。もちろんこれは自分の要求から来たもので必然の事だったのですが、個展の時などにもよく若い方からどんな画材を使っているのですか?と聞かれたもので、もしこのような画材を使おうとする人がいたら何かしらの参考になるかとも思い、少し紹介したいと思います。


『 岩絵具 』



こちらは最初に始めた岩絵具です。日本画の方のアトリエには、よく大きなガラス瓶に入ったものを見かけますが、私はもちろんそんなお金の余裕もなく、この様な小さな瓶に入れて使っています。(直径24mm  高さ54mm の小瓶) 絵の具自体の値段も高く、これだけ揃えるだけでも大変でした、私の場合はさらにベタベタと厚塗りをしたり、画面全体にタップリ塗った上で全体を削ったりと乱暴な使い方をするものですからさらに金銭的に大変です。



こちらは、岩絵具を使う時の絵具皿や筆などです。基本的には日本画の道具を使っています。絵具の接着にはリキテックスのマットメディウムを使っていて、小さなグラスに入れたものをスポイトで一滴一滴づつ加えています。大体ですが、絵具とメディウムの割合は 1:1弱 位です。(勿論これは臨機応変です)これに水を加えて調整します。筆も日本画のものが中心ですが、私の場合はもう少し乱暴な使い方をするので、油絵やアクリル用などの柔らかい毛先のものなら何でも使っています。


大体こんな感じで絵の具を作っています。前にも書きましたが、隠蔽力がありませんので何回も塗り重ねなければなりません。日本画の場合は乾燥は勿論自然乾燥でしょうが、私の場合はそんな気長には待てずにドライヤーでガンガン乾かしちゃってます。この辺りは楽です。



『 岩絵具 白(びゃく)』




岩絵具 白(びゃく)も同じく小瓶で保管しているのですが、描画の時はこの様に小さな菊皿に振り分けて、筆にマットメディウムを着けてそのまま絵の具をつけ、紙パレットの上で混ぜて使います。マットメディウムはもう最初から紙パレットに出しておけば楽です。これで以前の岩絵具の時に比べると格段に岩絵具を手軽に使えるようになりました。乾くと暗くなってしまう点に慣れなければいけませんがー


『 アクリル絵具 』



こちらはチューブのアクリル絵具です。中心はリキテックスアクリルガッシュの「和」のシリーズを使っています。「和」の方は、私はもともと日本色が好きで岩絵具を使っていたものですから、私には願ったりの絵の具です。
これにライトモデリングペーストを混ぜて描画用絵の具にしています。前にも書きましたが、これを混ぜるとアクリル特有の人工的な色合いが緩和され、かつ絵の具にボリュームがつき私にもってこいの絵の具に成ります。今はこの絵の具を中心に制作を始めています。こちらも紙パレットでの作業になります。



『 下地作り 』


私の場合、有元利夫さんに影響を受け、紙ヤスリによる研ぎ出しをするので、その時の風合いを考え、あらかじめキャンバスにテクスチャーを付けておきます。
これは上記のアクリル絵具+ライトモデリングペーストのものをペインティングナイフや筆などでたっぷりと塗り着けたり、さらに荒い筆や櫛や歯ブラシなど色々なもので凹凸を付けたりしています。その上に岩絵具や他の絵具を塗ったあとに研ぎ出すと色々の風合いが生まれるのです。
参考に、今まで撮っておいた作品の途中段階のものを紹介します。

(  1   )

これは最初の下地作りです。


これは下地の次に岩絵具で上に描画を始めてから、一度削った段階です。




(   2 )


下地作り


描画を経てからの最初の削り



( その他の参考例 )









こんな感じで下地を作っています。最終的には静かな落ち着いた絵にしたいので下地は結構ラフに塗っています。しかし、下地の効果だけを考えて絵を進める訳にもいかないので、下地が必ずしも上手く生かされる訳ではなく、やって見なければ分からない所があって中々思う様にはなりません。削りもどこまで削ればいいのか分からないもので、やめて置けば良いものをもう少し削ってみたらさらに良くなるのではーと欲を出し、何枚オシャカにしてしまったか分かりません。逆に予想もしてなかった良い結果にびっくりしたりと、中々面白いものです。そこが難しくもあり、また楽しい所でもあります。

最後に使っている筆や下地用の道具を紹介します。


左から段々と毛先が柔らかいものになっていきます。これはいつも使っているもので、他にもまだまだ色々あります。長い事やっているとこんな事になってしまいます。絵具を3種類も使っているので仕方がありません。



これ等は、下地用のテクスチャーをつけるための道具です。何も決まったものがある訳ではなく、自分で使える物を見つけてきては利用しています。
筆などは一度固めてから毛先をギザギザにハサミでまばらに切ったりしています。櫛なども有用です。



『 最後に 』


これまで3種類の画材を紹介して来ましたが、それぞれどれも中々に難しく苦労したものです。しかしそれぞれ どれも自分の要求から求めて来たものだけに、どれも自分が魅かれて止まないものがあり、そしてそれぞれ一長一短があり、良い所を生かせればーとシンプルに思います。しかしながら、その組み合わせともなると無限に展開する事になってしまい、この辺がなんとも難しい所ですが、これまで長きにわたりやってきた自分の直感を頼りにやっていくしかないのでしょう。

これまで紹介して来た画材や手法など、何か参考にしていただける所でもありましたら幸いです。


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