『異世界から転生された方ですね!手続きしますのでこちらへ』「めっちゃ事務的な人来た」

案内人「転生ご苦労様です。
これからこの世界で生きる為に色々手続きしますから。
こちらの椅子にどうぞ」
転生者「すっごいこなれてる」

案内人「前世確認させて頂きますね。
……なるほど、壮絶な最後だったんですね……
まぁ、こちらの世界は気楽なもんですので、肩の力抜いていきましょう!」
転生者「切り替え早くて着いていけない」

転生者「そういえば何で話が通じてるんですか?
明らかに貴方と見た目が違うのに……」
案内人「転生って、そうゆうもんですよ」
転生者「そうゆうもんなんだ」

転生者「質問があります」
案内人「どうぞ」
転生者「あまりにも貴方対応がこなれているんですが、
こうゆうのって普通なんですか?」
案内人「そうですね、あなたで648件目、ですかね」
転生者「やたら多いな」

案内人「じゃあまずは……
はい、こちらで生きていく上で重要な身分を見繕いました。
お名前とかこちらでいいですか?」
転生者「ちゃんと名前も付くんですか」
案内人「そりゃ、名前がないと生きていけませんから」
転生者「……」
案内人「後こちらの鏡ご覧下さい。
見た目はこういった感じですが宜しいでしょうか?」
転生者「転生前と変わらないですね」
案内人「まぁ、そちらの世界にもいらっしゃったと思いますが、人間と近しい種族の方はそのままな場合が多いですね」
転生者「はぁ」
案内人「まあ、いきなり無機物だったり魔物だったり世界を救う使命あったりしてもただ困るだけですから。
普通の生活が一番いいんですよ」
転生者「何か色んな方面に喧嘩売ってる感覚がする」

転生者「そういえばこのお召し物なんですが……」
案内人「あ、Tシャツ短パンの、ネトゲ初期アバターみたいな格好ですいませんね。
転生後すぐはそうなんですよ。
他の衣服はこちらから順次支給をしていきますので。
……あの!脱がないで下さい!」
転生者「……?
これが普通なのでは……」
案内人「それは元の世界の話です!
困りますから!早く着てください!」
転生者「???」

転生者「凄い締め付けられてる感じがする」
案内人「あぁ、もしかしたらそちらの世界には無かった物ですね。
そちらも初期装備として貴方の身体にあった物が付いてます」
転生者「窮屈なので取ってもいいでしょうか」
案内人「困ります。そうゆうもんなんですよ。
何人もそういった方はいらっしゃいましたが、
徐々に慣れてきますよ」
転生者「そうゆうもんなんだ」

転生者「ちなみにですが、私が住んでいた世界?の住人はこちらに転生する事はあるんでしょうか?」
案内人「もちろんありますが、確認したところ貴方と関わった方は転生しないようになってます」
転生者「そうなんですか」
案内人「まぁ、相当酷い事してますから転生の権利すらない、といった感じです。
ご安心下さい」
転生者「そうですか……」

案内人「しばらくはこちらの世界に慣れて頂くのに専念していただきます。
出来る限りサポート致しますが、先程も申し上げた通り、人間の前、特に異性の前では脱がないようにお願いしますね。こちらの世界の常識なので」
転生者「私のような者がすいません……」
案内人「卑屈にならないでください。こっちではそうゆうもんなんで」
転生者「そうゆうもん、なんだ」

案内人「そうだ、装備品で大事なのを忘れてました。
こちら着けて頂けますか?」
転生者「これは?」
案内人「人間の耳、ですね。
被せるタイプですので……
そう、そんな感じです。
どうです?私と同じ耳になって違和感ないでしょ?
付け根もいい感じに馴染んでますね。
聴覚を奪わない特殊設計になってますので、安心してお着け下さい」
転生者「どうゆう技術?」

転生者「ちょっと痛いんですけど……」
案内人「まぁ慣れないうちは大変だと思います。
ただ、こちらの世界に順応するにはそうしないと駄目なんで……
ご自宅では外して頂いても大丈夫ですよ」
転生者「ご自宅……?」
案内人「貴方が暮らす場所ですね。
ここでの手続きが全て終わりましたらご案内します。
一応暮らすために必要な家具、備品等はこちらで既に準備しております。
しばらくはこちらから支給致しますので、足りない物があれば私に言っていただければ」
転生者「そんな至れり尽くせりでいいんですか!?」
案内人「貴方の環境が異常だったんです……」

転生者「耳の件なんですが」
案内人「どうぞ」
転生者「もし着け忘れたらどうなるんですか?
また前世のような仕打ちを受けるんでしょうか……」
案内人「あー、その時に使える魔法の言葉があるんで伝えておきます。
……この言葉で大体乗り切れるんで」
転生者「聞いた事ない言葉だ……」
案内人「特にこの国だとこの一言で問題ないですよ」

案内人「……で、ですね。
こちらの世界にある程度慣れて頂きましたら、お仕事をして、完全な自立をしていただきます。
斡旋は致しますので、そちらもご安心を」
転生者「やはり、『御奉仕』でしょうか……」
案内人「近からず遠からずですね……」
転生者「私は男性を悦ばせる事しか出来ないので、そうなりますよね……」
案内人「ちょっと遠くなりましたね……」

案内人「内容としては、お給仕ですかね。
来たお客さんに飲み物や料理を提供してお喋りしていただく感じです」
転生者「お給仕……メイドさんのような物でしょうか?」
案内人「そんな感じですね。
今は色んなコンセプトがありますけど」
転生者「しかし私は、『御奉仕』をする事しか知らず……」
案内人「生活に慣れていただく過程で自然と身につきますよ。
この仕事の良い所は、むしろ先程の耳を着けない方が楽しんで貰える所ですね」
転生者「何でですか?」
案内人「先程教えた『コスプレ』を楽しむ場所なので」
転生者「そんな方もいるんだ……」
案内人「結構いますね。
男性のお客さんがメインなのですが、貴方の使う意味での『御奉仕』がご法度なのでご安心下さい。
男性側が強要しただけでしょっぴかれるので」
転生者「逆に怖い」
案内人「仕事場には転生して大体3年くらいの別世界の同種族の方が働いてるので、頼りにして頂ければ。
姐御肌の面倒見のいい方ですよ。
住所も近くなんで、近いうちに紹介しますね」
転生者「住所?」
案内人「住む場所を表す言葉です。
既に登録させて頂きました。
おいおい覚えていきますよ」

案内人「……以上で手続きは終了です。
他に何か質問はありますか?」
転生者「……どうして」
案内人「?」
転生者「どうして、私のような者にここまでして頂けるのでしょうか?」
案内人「この世界が、そうゆうもんだからですよ
幸せな第二の『人生』、楽しんで下さいね」

……
『元奴隷のエルフ』転生登録完了。
十何年受け続けた苦痛はすぐには癒えないだろうけど、何にも縛られない、自由な人生を。

さて、次にこの世界、日本への転生予定者は……

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