「嘘つき」と思われない「両面提示の法則」
ビジネスも人間関係と同じで「嘘つき」と思われないことが大切。
今回は、「正直なイメージ」で信頼感や好感度を高められる、「両面提示の法則」を紹介します。
「両面提示の法則とは?」
人は商品の「メリット」ばかりを並べて自画自賛されると、
「嘘っぽい・騙そうとしているのでは」と身構えますが、
「デメリット」も正直に伝えることで広告のコピーに強い説得力が生まれます。
その心理は「両面提示の法則」と言われています。
「両面提示の法則」とは、
「メリットだけではなくデメリットも合わせて一緒に提示して明らかにすることで、信頼感・説得力・好感度が高まる心理法則」のことです。
「両面提示の法則」は、「片面提示の法則の短所・欠点」を補ってマーケティング・広告の説得力を高めてくれる法則として理解できます。
「片面提示の法則」
とは、「商品のメリットだけを提示してアピールすることで、そのメリットを強く認識させられる心理法則」です。
しかし、メリット以外の面に対する疑惑・不信が強まってしまいやすい短所も併せ持っています。つまり「あまりにおいしすぎる話は信用できない」ということです。
誰もが「完全無欠な人はいない」「全く欠点のない商品はない」ことくらいは知っています。そのため、メリットだけを殊更に強調する「片面提示」をすると、逆に「この人は嘘をついて私を騙そうとしているのでは?」と警戒されやすいのです。
そこで、メリットと合わせてデメリットも正直に提示する「両面提示の法則」を使うことで、「片面提示の法則の欠点である不信感・疑い・警戒心」を無くすことができます。
例①
例えば、「高級ブランド・ルイヴィトンの財布を1万円で大安売り」の広告は「うまい話で怪しい」と思わせる片面提示ですが、
「10年前のモデルで色あせ・使用感・複数の傷があります(写真付き)」という安売りの理由、デメリットもきちんと提示する両面提示によって「顧客の安心感・信用度」が高まり売れやすくなります。
富士通やNECなどの大手ECサイトでも、「パソコンの特別割引・格安販売」を一年の大部分にわたって実施しています。中には「こんなハイスペックなPCなのにどうしてこんなに安いの?」とびっくりするような価格設定のパソコンもありますが、その安売りの理由は「訳あり品としてのデメリットの記載」によってすぐに分かるようになっています。
「型落ち品・中古品・キャンセル品・箱や包装に傷あり・アウトレット・不人気なカラー」などが安売りの理由として明記されています。
格安PCのメリットとデメリットの「両面提示」によって、顧客は安心して安売りのPCを購入できます。
「両面提示の法則」を使った広告・マーケティング事例
「両面提示の法則」を使用するメリットは、「売り手の正直で誠実なイメージ・好感度がアップすること」や「広告内容の信頼度・説得力がアップすること」、「後でデメリットが発覚してクレーム(裏切られた気持ち)になることの予防」にあります。
人は商品のメリットとデメリットの両方を認識させてくれる広告を、「本当のことを伝えている信頼できる広告」と認識するので、必然的に広告の説得力が高まるのです。
「両面提示の法則」を使った広告・マーケティング・ビジネスの事例を紹介していきます。
●ゼクシィの広告コピー
「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」
結婚情報誌ゼクシィが自らの存在意義をいったん否定するかのように、「結婚しなくても幸せになれるこの時代」という広告のコピーを打ち出しましたが、このコピーは近年では稀な大勢の人に共有された「両面提示の法則」が効いたコピーです。
ゼクシィは結婚したい人が手に取ることで利益を生み出す結婚情報誌ですから、本来であれば「結婚のメリット」と「結婚しないと幸せにはなれない雰囲気」だけを打ち出す「片面提示」でも良かったと思います。
しかし、敢えて結婚に対する価値観が多様化した現代にフィットするコピーで、「結婚情報誌にとってのデメリット(別に結婚しなくても幸せになれる)」を提示し、その後に「あなたとだから結婚したいと思える幸せ」という結婚にしかない強烈なメリットを提示したことで広告の説得力が格段に強まっています。
●キューサイの青汁のコピー
「まずい!もう一杯!」
「両面提示の法則」を使用したテレビCMの元祖として、キューサイの青汁の「まずい!もう一杯!」の広告コピーがあります。
当時、飲食品の商品広告に「まずい」というデメリットの言葉を入れること自体が完全にタブーでしたが、キューサイはこの両面提示の法則が効いたコピーで、健康食品らしさを感じる「良薬口に苦しの効果」を視聴者にアピールすることに成功しました。
●ドモホルンリンクルのCM
「初めての方にはお売りできません」
再春館製薬のドモホルンリンクルのCMは、企業が顧客を選ぶようなデメリットを伝える「初めての方にはお売りできません」という衝撃的なコピーを採用しました。
それまでのマーケティングの常識は「自社商品が欲しいお客様にできるだけ早く売ること」にありましたが、ドモホルンリンクルは両面提示を実施して、「必ず試供品を使って頂き、その効果に納得されたお客様だけに売る姿勢」を明らかにしたのです。
その結果、「商品の自信・効果」が顧客に伝わり、「理不尽なクレーマーの事前排除」に成功しました。
「両面提示の法則」をマーケティングに活用するコツは、お客様の目線になって広告を見直してみること
「両面提示の法則」を自社のマーケティング・広告に活用したいのであれば、まず「売る側の都合・仕掛け」ではなく「買うお客様の目線・気持ち」になって、自社の広告がどう見えるかを見直してみましょう。
そこにメリットばかりが書き連ねてあったら、売り手のあなた自身も「そんなにうまい話はない・何か裏(隠し事)があるのでは?」と思ってしまうのではないでしょうか。
「両面提示の法則」の活用とは、突き詰めれば「お客様が知りたい本当のところ・お客様が不安に感じている部分」を分かりやすく伝えて、信頼感や説得力を勝ち取るテクニックです。
人は「うますぎる話・おいしい話」を警戒して疑う傾向があるので、自分から敢えて「お客様が知りたい本当の情報=デメリットになる点」を明らかにすることで、顧客に対する広告の説得力が高まり売上がアップしやすくなります。
ぜひ、「正直者が得をする」の要素もある両面提示の法則をマーケティングに活用してみてください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?