給料の上げ方

給料を上げたくてたまらないそこのあなた
ビジネスマインドチャンネルです

今回は、デービッド・アトキンソン氏著書の
給料の上げ方
について解説していきます。

本書は日本人が豊かになる為に、どうしたら給料が上がるのかを
明確に言語化した1冊になります。

それではさっそく本書の要点を4つお伝えしていきます。

要点1
日本人の給料が上がらない原因は、個人の能力不足ではない。理由の1つには、一般的に低賃金とされる層の労働参加率が高まったことなどがある。

要点2
個人が給料を上げるためにカギとなる選択肢は「海外」「給料交渉」「転職」「起業」の4つがある。

要点3
企業が給料アップのために取り組むべきは、未開拓市場の発見とイノベーションの創出である。

要点4
給料アップが見込めそうな企業の条件とは「生産性が高い業界に属していること」「規模が大きいこと」「ダイナミズムを有していること」「労働分配率が高いこと」の4つである。

ちなみに皆さんは今の給料に満足していますか?
満足できていない人は、ここから一緒に学んでいきましょう!

チャプター1!日本人の給料が低い根本理由


経済協力開発機構が発表した2021年の平均賃金で、日本は加盟国38カ国中で24位にとどまっている。
アメリカに1.82倍、ドイツに1.38倍の差をつけられるだけでなく、韓国にも追い抜かれたことは大きな話題になった。

1990年代からほとんど給料が上がっていない理由を、「日本人の能力不足」と考える言説はよく見かけるが、著者は別の理由を挙げる。
1つは、就業者数が大きく伸びたことだ。2011年から2018年にかけ、就業者は431万人も増加している。

その増加分のうち、高齢者や若年層など、一般的に低賃金とされる層が多かったことで、全体の平均賃金が押し下げられたと著者は指摘する。
加えて、女性の労働参加率が高まるにつれ、男性との賃金格差を背景に、全体の平均が押し下げられた。

給料は2つの要因で決まる。その2つとは、「付加価値」と「労働分配率」だ。

付加価値とは材料を仕入れ、何かを製造し、販売した際に生じる差額を指す。そして、付加価値のうち給料として支払った割合が労働分配率である。また、労働者1人が創出する付加価値を「労働生産性」と呼ぶ。

世界銀行が発表した2021年における日本の労働生産性は、経済協力開発機構平均の8割弱で、36位に甘んじている。一方の労働分配率は、国際労働機関のデータによると他の国と大きく差がついているわけではない。このことから、日本の低賃金の理由は労働生産性にあるといえる。

例えば、1990年の労働生産性を100としたとき、アメリカは2021年に160まで成長している。日本は117にしか成長していない。

日本は経済大国であるのに、なぜ労働生産性が低いのか。著者は、経済大国であることは生産性と直接的な関係がないと断言する。経済大国かどうかを左右するのは、国の経済規模だからだ。つまり、日本が経済大国であるのは、他国と比べて多い人口が影響しているのであり、生産性が高いからではない。

国の経済規模、すなわちGDPは付加価値の総和であり、「人口」「労働参加率」「労働生産性」を乗じて算出される。もちろん労働生産性が高ければGDPも大きくなるが、それ以上に人口が大きなファクターなのだ。

そもそも、日本の1人あたりGDPは世界35位であり、先進国の中で最低水準にある。それでもGDPが大きいのは、先進国中2位の人口を擁しているからにほかならない。

それでは、給料を上げるためにどうすべきか?
もはや政府頼みでは何も変わらないだろう。
日本の人口は1億2000万人以上に及ぶ。これほど人口が膨らんだ国において、給料を上げるには政府の力よりも、労働者個人の取り組みが重要になる。

例えば政府がゼロ金利政策へ舵を切って企業の設備投資に期待しても、実際には思い通りにならなかった。また、法人税率を引き下げて賃金上昇や積極投資による経済成長を期待しても、内部留保が増えるばかりだった。

金利や税率をコントロールする、こうした「マクロ経済政策」に日本政府はこれまで取り組んできたものの、経済成長の起爆剤にはならなかった。

個人が給料を上げるための選択肢は「海外」「給料交渉」「転職」「起業」の4つがカギとなる。

人口減少と高齢化に見舞われる中、日本から海外への移住は給料を高めることにつながる。海外在留邦人の数は1989年の59万人から、2019年には141万人にまで増えている。海外在留邦人のうち、女性が占める割合は7割に及ぶ。

とはいえ、海外暮らしをするには、語学力や生活習慣のハードルも高い。そこで2つ目の選択肢が給料交渉である。先進国では、自分の給料を交渉することは当たり前になされている。海外、特に先進国では7割以上の労働者が給料交渉をしているが、日本は3割未満にとどまる。

また、転職も手である。社内での給料交渉に際しては、他社の給与水準などがベースになるが、応じてもらえないなら、適切な給料を支払う他社への転職が近道になる。世界的に見ると、日本人の転職は統計的に少ないが、給料を高めるうえでは重要な戦略であると著者は説く。

最後に、自分で会社を立ち上げるのも選択肢の1つだ。
国の支援もあり、独創的なアイデアさえあれば、会社員として活動する以上の付加価値を生み出すことも十分にあり得る。

給料を高めるうえでは、会社への忠誠心を捨ててしまうことも肝要だ。
具体的には、経営者に対して転職する覚悟を見せることで、真剣に要求を受け入れてもらえる可能性が高まる。

「会社を辞めることは裏切りである」と捉える向きもある。著者自身も、最初に勤めた会社を辞める際は同様に感じていた。そんな著者に、父親が「あなたには会社に対する忠誠心があるかもしれないけれど、会社にはあなたに対する忠誠心はない」「どんな会社でも、誰かが辞めれば代わりの人間が現れるので、会社は問題なく存続する」と言葉をかけた。会社とは存続が前提となっている組織であり、労働者1人が不可欠な存在であることはあり得ない。

そもそも、昨今の日本企業は非正規雇用者が増えており、以前より簡単に人員を減らせるようになっている。また、正規・非正規雇用に関係なく給料を維持して抑え、その分、内部留保を蓄積してきた。
こうした経緯を踏まえ、「会社は従業員に忠誠心を求める資格を失っている」と著者は強調する。

経営者にとって、従業員の忠誠心が高いほど経営は容易になる。
従業員が辞めないので新規採用の必要性に迫られにくく、給料引き上げの圧力も高まらないからだ。

こと給料の上昇をめぐっては、忠誠心は無用である。経営者に「いつ転職してもおかしくない」と思わせることが、大きな武器になるのだ。


日本人はたしかに給料を交渉して上げてもらうという発想にはなりにくいですね!
居酒屋で低賃金について愚痴る暇があるなら、覚悟を見せて給料交渉をするべきなんですね!

チャプター2!給料アップのための企業戦略

しかし、やみくもに給料アップのための取り組みをしても、徒労に終わる可能性は高い。
そこで重要なのが、経営者を見極め、自身が勤め続けるのに値する会社かどうか判断することだ。問題ないのであれば、現職で給料交渉すべきだし、そぐわなければ転職をすればよい。

よい経営者とはどういう存在か。特徴の1つとして、イノベーションや需要発掘を重視していることが挙げられる。それほど普及していないものを発見し、イノベーションにより自社の成長エンジンとしていける才覚の持ち主こそ、優れた経営者だ。人口減の日本では、既存商品のパイを広げるのは難しい。
イノベーションをもとに、高い付加価値を生み出せるかどうかがカギとなる。

加えて、自社の客層をどう捉えているかも判断基準になる。
現状維持とは、すなわち衰退である。つまり、将来に向けた経営戦略をどう描き、対応するか。顧客は増えるのか、減るのか。この点に着目し、取り組む経営者は、「ついていくべき社長」と著者は考える。

需要発掘の点において、真剣に向き合うべき課題が高齢者マーケットである。日本において高齢者人口は増加の一途をたどっており、富も集中している。にもかかわらず、高齢者マーケットが手つかずに放置されていると著者は指摘する。

例えば、観光業はゴールデンウィークや年末年始など、会社・学校の連休の時期が稼ぎ時になっている。一方、高齢者の需要は平日や休日など関係なく、非常に伸びしろがあるといえる。

加えて、大学も需要発掘が遅れている分野だという。大学は増える一方、18歳の人口は減少している。有名大学が定数を削減しない限り、その他の大学は苦境に立つことになる。

そこで商機となるのが社会人教育である。アメリカでは社会人教育にGDPの2%以上に相当する金額を投入しており、欧州でも1%以上を投じている。これに対し、日本は0.1%にとどまる。人口の大半を占める社会人を市場と捉えれば、大きな需要が見込めるはずだ。

このほか、人口減少で多くの商品は売れなくなっていく。別商品を生み出すか、市場を切り替えるかしか生き残りの術はない。給料アップのためにも、重要な視点だろう。

「よいものをより安く」という方針を見直す必要性もある。賃上げのためには、高付加価値のものを高く売る企業が必要だ。そもそも日本はこれまで、よいものを安く売っていたのではなく、「そもそも安いものを、価格以上に丁寧につくっていた」だけであると著者は書く。

例えば日本製の軽自動車は、「移動のための機械」にとどまらず、丁寧につくられている。ただ、軽自動車はもともと高付加価値な商品ではなく、欧州の高級車のように1000万円規模で売ることは難しい。つまり、厳しい言葉で書けば、100万円程度の商品をどこよりも丁寧につくっているのである。ビジネスホテルや電化製品も同様の傾向がある。

これからは、このまじめさや丁寧さといった「強み」を「安モノ」に生かすのではなく、プレミアムな商品に生かすべきである。

チャプター3! 給料アップの可能性が高い企業の条件

日本が「貧乏な国」となったのは、企業経営に責任がある。給料を上げるには、イノベーションを起こせる企業でなければならない。では、どんな企業が該当するのか。

条件の1つが、企業が属する業界の生産性が高いことだ。生産性は業界ごとに異なり、高いほど給料も増える可能性が大きい。生産性が低いということは、企業に余裕がないことを示す。改革を行う資源に乏しく、必然的にイノベーションが起こる可能性も低まる。

また、会社の規模も重要だ。「規模の経済」という概念がある通り、会社の規模が大きければ生産性も高まる。すなわち、給料も高い可能性がある。実際に日本では、大企業の生産性が826万円に対して中堅企業は457万円、小規模事業者は342万円にとどまる。日本に限らず、欧州などでも同様の傾向がある。

会社の規模が大きければ、分業が容易になる。個々の業務を専門的な人材が担当することで、生産性が上がる。加えて、規模が大きいほど売り上げが増えるため、資金に余裕ができる。その余裕資金で専門的な人材をさらに増やせば、好循環が生まれる。

労働分配率が高い企業規模とは
イノベーションを起こせる企業の条件として、3つ目は「企業のダイナミズム」である。具体的には、環境の変化を先取りして、対応策を講じながら規模を拡大させているかどうかがポイントになる。

アメリカ経済が1990年代以降に急速な成長を遂げた背景には、このダイナミズムがあったからだとされる。特に従業員数が50~249人の中堅企業が成長する傾向にある。合併や買収、官民連携を含めて現状維持ではなく、適切なタイミングで適切に成長できているかは大きなポイントだ。

最後に、労働分配率もキーになる。一般に小規模事業者は労働分配率が高いとされる。しかし、労働分配率には役員報酬が含まれており、実際の従業員への労働分配率ではそこまで突出していないことがほとんどだ。その点、中堅企業は労働分配率が特に高いと、著者は指摘している。

まとめ
ビジネスパーソンにとって、「給料」は大きな興味をそそるテーマである。著者のデービッド・アトキンソン氏はウェブメディアなどでこの給料問題について積極的に発信している。
本書は、そんな著者が日本企業の現状や、企業や個人がとるべき戦略を示し、暗澹たる社会に希望の光となる1冊だ。33年間も日本で暮らしている著者だからこそ見える社会の内面と、海外に関する深い知見が見事に融合した快作だ。
書籍全体を貫く大きなメッセージは、労働者自身が行動しないことには、現状を変えられないということに尽きる。中でも転職のハードルを下げ、人材の移動が活発になることは大きなポイントになるはずだ。本書を読み、選ぶべき企業の条件を知り、ぜひアクションにつなげてほしい。

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