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【営業論】顧客心理を掴むための「行動経済学」

行動心理学:人間の行動を観察することで、人間の心理を研究する学問
認知心理学:人間の知覚や記憶、理解の家庭から人間の心理を研究する学問
社会心理学:人との関りや社会生活において、人間の心理を研究する学問
行動経済学:経済的な決定に、心理的な要因がどのように関連するかを研究する学問

行動経済学


行動経済学とは「人間科学の学問」です。
経済学との違いは、従来の経済学は人間を合理的な生き物と仮定していた。しかし、行動経済学では、人間の不合理な行動に注目して経済分析を行うことです。
伝説の相場師であるジェシー・リバモアはこのように言っています。
「人生の転機となるのが恋愛・結婚・子供・戦争・セックス・犯罪・情熱・宗教などであるように、理性に導かれて人が動くことはめったにない」

要は、人は理性ではなく感情で動く、と言うことです。

では何故、人は理性よりも感情で動くのか。その理由は脳にあります。
我々人類は、人に進化する前はサルでした。サルの時代にも脳(大脳辺縁系など)がありましたが、今の人間でいう「感情・恐怖・本能」を表現する機能ばかりです。
その後、人に進化するにつれて脳も変化していきましたが、昔からあった脳が新しいものに生まれ変わった、というよりも機能が外付けされた形です。
人に進化する過程で脳に外付けされた部分(大脳新皮質)は理性を機能させるものが多いです。
簡単に言うと、感情の機能はもともと持っており、理性の機能は後から付け足されたものです。それにより、後から付け加えたばかりの機能なので昔からある機能に負けてしまう訳です。

営業で大事になってくるのは、昔からある脳(大脳辺縁系など)を無意識に刺激して感情を揺さぶること、あるいは、揺さぶらずに済むか、ということです。。

プロスペクト理論(損失回避):お客様は失うことを恐れている


お客様が感じる価格の変化によるインパクトは、得をするか損をするかでその影響力が異なります。
価格が下がって得をするよりも、価格が上がって損をする方が受ける心理的なインパクトは大きくなります。
このような特性が、人の意思決定に大きな影響を与えているのです。これを行動経済学で、「プロスペクト理論」といいます。
例えば、スーパーに缶ビールを買いにいったとします。そこでは、6本パックの缶ビールを買うと携帯ストラップが付いてくるキャンペーンを実施していました。ただ、あなたは既にストラップを持っていたため、あまり魅力を感じません。
しかし、キャンペーンの案内をよく見ると、その特典の期限が明日までであることがわかりました。これを知った途端に、あなたは「いま買わないと損をしてしまう」と感じるはずです。
このように、特典が手に入るというメリットよりも、特典を入手することができなくなるというデメリットの方が感じるインパクトは大きいのです。このように、得をするか損をするかで、受け止める心理的な影響度は違ってきます。

 お客様は失う恐怖の方が大きい
そして人は、特典が付くという報酬よりも、「特典を手に入れることができない」という損失を避けたがる傾向があります。これを、「損失回避の法則」といいます。
つまり、期間限定で商品に特典を付けて売ることは、この損失回避の法則を活用しているマーケティング手法であるということができます。このように、お客様の心理を踏まえてセールスに取り組むことで、成果を高めることができることを営業マンは理解しなければいけません。
例えば、健康器具の販売員です。お客様にとっての利益、もしくは損益のどちらにフォーカスを当てるかで、セールストークの影響力は違ってきます。次の2つのパターンを比較してみてください。
「この快眠まくらでグッスリ眠れて質の高い睡眠を手に入ることができます」
「グッスリ眠れない一番の理由は自分にあった枕を選んでいないことが原因なのです」
どちらのセールストークの方が、まくらの大切さが実感できたでしょうか。圧倒的に後者の方がお客様の反応は良くなるのです。
これは、「質の高い睡眠」を手に入るというメリットよりも、「自分にあった枕を選んでいない」ことによるデメリットを避けたいと強く感じるからです。この「損失回避の法則」が働くため、商品の重要性をより強く訴求することができるのです。
このように、お客様は得をするか損をするかで、受ける印象は大きく異なります。そして、人は利益を手にして幸せになるよりも、失うことによる痛みの方が強いインパクトを受けます。そして、その損益を避けようとするのです。
セールスやマーケティングの世界では、このような人間の心理的特性を研究し、有効に活用しています。お客様の気持ちを考えることが、販売活動では最も重要であることを営業マンは理解しなければいけません。

※昔の生活では、食べ物を失ったりするなど「何かを失うこと」は生きていくうえで非常に重要な問題でした。そのため、損をすると脳の扁桃核が本能的に反応するようになっています。

例)これだけの売上が上げられます、も良いトークだが、
広告しているのとしていないのではこれだけ利益に差が出てしまっており、年間でこれだけの損失を出してしまっています。

クロージング時に双曲割引と共に話す。

認知的不協和理論:顧客の不安を取り除き信頼関係を深めるメソッド


お客様は商品を購入した後は、それが正しい買い物であったことを認めようとする傾向があります。たとえ、目に見える効果が感じられなくても、何かしらの理由をつけてそれを正当化しようとするのです。
これは、人は自分が認識している事実に矛盾が生じたとき、その矛盾を正当化しようとする心理が生まれるためです。
これを心理学で、「認知的不協和理論」といいます。
例えば、タバコの喫煙です。多くの喫煙者は、タバコは健康に良くないことを認知しています。このとき、ふたつの認知(事実)が存在します。
認知① 自分はタバコを吸っている
認知② タバコは健康に良くない
しかし、健康に良くないことを知りながら、タバコを吸っているという矛盾が発生しています。この矛盾を無くすためには、タバコを吸うという行為を辞めることです。しかし、喫煙者にとってタバコを辞めるのは簡単ではありません。
そのため、「タバコは健康に良くない」という認知を変えようとするのです。例えば、「タバコを吸っても健康な人はいる」「全ての喫煙者がガンになるとは限らない」というような考え方です。
認知① 自分はタバコを吸っている
認知② タバコは健康に良くない
認知③ タバコを吸っても健康な人はいる
認知④ 全ての喫煙者がガンになるとは限らない
このように、自分の中で矛盾(不協和)する認知が発生した場合、それを解消しようとする心理が働きます。ここでは、この心理現象が営業活動にどのような影響を与えているかについて考えていきます。

 人は自分を正当化しようとする
例えば、ある企業で業務システムの導入を検討しているとします。この企業では事務処理に膨大な時間がかかり、社員の残業がとても多いという悩みを抱えています。これを改善するために、業務システムの導入を考えているのです。
このプロジェクトのリーダーは、長い期間をかけて検討した結果、ついに導入することを決断しました。しかし、システムが稼働してから2週間たっても、目に見える効果が現れていません。
このとき、プロジェクトのリーダーが、上司にシステムの効果を聞かれたとします。そうすると、実際に効果が現れていないにもかかわらず、導入は正しかったことを証明しようとします。例えば、次のような説明です。
「実際に残業時間は減っていませんが、それは社員がまだシステムの使い方に慣れていないからです。時間が経てば必ずシステムの効果は出てきます」
これは、自分がリーダーとして判断したプロジェクトのため、「判断は正しかった」ことを証明しようという心理が働いているためです。効果がでていないという矛盾(不協和)を自分で認知していても、正しいと思い込ませようとするのです。

 お客様の不安を取り除く
お客様は商品やサービスを購入した直後は、正しい買い物であったのかが不安になることがあります。そして、認知的不協和により、自分の判断は正しかったと思い込もうという心理が生まれます。
そして営業マンは、このお客様の不安を取り除いてあげなくてはいけません。具体的には、商品やサービスを購入してもらった後に、「お客様の判断は正しかった」ことを証明してあげるのです。例えば、次のような説明です。
「今回、御社に購入していただきました商品、非常に売れ行きが好調なのです。実は同じ業界の、ある大手企業も検討しているところです」
このように、「他のお客様」も購入している事実を伝えてあげるのです。そうすることで、お客様は自分の判断が間違っていなかったことを実感することがます。他のお客様の「導入事例」というのは、商談中だけではなくアフターフォローでも効果があるのです。
お客様は商品を購入した後、正しい買い物であったのか不安になることがあります。とくに、目に見える効果が出ていないとき、その不安感は強まります。そして営業マンは、このお客様の気持ちを汲み取り、フォローをしなければいけません。
認知的不協和による顧客心理を理解することで、営業マンはアフターフォローで何をするべきかが見えてきます。

学習性無力感:トップ営業マンへ生まれ変わるための環境を理解する


営業のスキルアップに取り組み始めても、すぐに結果が表れることはありません。短期間で営業の実力が向上することはないからです。目に見える成果が現れるまでには、長い期間にわたって努力を続ける必要があります。
そのため、スキルアップを始めた当初は、思うような数字を残せない期間が続きます。このとき、多くの人は「頑張っても無駄なのではないか」という感情に襲われます。これを心理学で、「学習性無力感」といいます。
学習性無力感とは、現状を変えるための意欲がなくなる現象のことをいいます。
例えば、スポーツの練習を続けているのに上達が実感できないと、「頑張っても意味がない」というような無力感を抱きます。これが一定の期間続くことで、この「無力感」を学習してしまいます。そのため、練習という努力を行う気力がなくなってしまうのです。
ここでは、学習性無力感を理解することで、営業のスキルアップに必要な要素について解説していきます。

 学習の成果はすぐに現れない
実は私自身も、この「学習性無力感」を経験してきました。それは、IT業界で法人営業をやっていたときの話です。入社した当初、私は全く数字を残すことができませんでした。後輩に営業成績で追い越され、とても悔しい思いをしていました。
そこで、私は本を読んだり、営業セミナーに参加したりして懸命に勉強を続けてきました。そして、真剣にスキルアップに取り組み始めてから、4年目でようやく予算達成することができたのです。
ただ、最初の2年間はとても辛い期間でした。多くの時間と労力を使って勉強をしているのに、一向に成績が上らなかったからです。「頑張っても駄目なのではないか」というように、何度も挫けそうになったことを今でも良く覚えています。
しかし、この学習性無力感から抜け出すことができたのが「環境の変化」です。私はあるきっかけでビジネス・スクールの存在を知りました。
実績を残した経営者による講義からは、とても多くのことを学ぶことができました。しかし、それよりも大きな存在となったのが、そこで知り合った仲間達です。事業を拡大させるために学びにきた経営者など、とても意識の高い生徒ばかりでした。
この成長意欲の高い友人達と接することで、私のモチベーションは高まりました。非常に良い刺激を受けたのです。それまでの私は、職場の上司や同僚との付き合いが中心でした。しかし、スクールに通い始めてから、クラスメートとの交流が多くなったのです。
この「環境の変化」により、私は学習性無力感から抜け出すことができたのです。
営業のスキルアップに取り組み始めても、すぐに成果が現れることはありません。なぜなら、短期間で数字を残せる真の実力を身につけることはできないからです。そのため、少なくても年単位の努力を続ける必要があります。
そして、長い期間にわたり勉強を続けるときに、注意しなければいけないのが学習性無力感です。「努力をしても無駄なのではないか」という考えを克服しなければいけません。その最も効果的な対策が、環境を変えることです。
モチベーションの維持に必要な環境を整えることが、トップ営業マンへ生まれ変わるための条件であることを理解してください。

ジャニスの集団思考:営業組織の会議が機能しない本当の理由


会社という組織で意思決定を行うとき、メンバーの合意を得なければいけません。そこで必要になるのが会議です。複数のメンバーが会議に集まり、賛同をとったうえで取り決めを行うのです。
しかし、全メンバーが集まって合意したとしても、正しい意思決定が行われるとは限りません。これは、集団の結束力が、正しい意思決定の邪魔をするからです。これを心理学で、「ジャニスの集団思考」といいます。
例えば、営業部のメンバーで経費削減について考えているとします。コスト削減のために、今までお客様に送っていた年賀状を廃止することが決まりました。しかし、あなた自身は、年賀状は送るべきだと考えています。
このとき、「メンバーの皆で決めた施策なので、自分ひとりが反対する訳にはいかない」という心理が生まれます。そのため、間違っていると分かっていても反対することができず、同調してしまうのです。
この集団における人間心理は、組織のあらゆるところで見ることができます。ここでは、組織における個人の心理を理解して、営業組織に必要とされる会議について考えていきます。

 「みんなが賛成したから」は間違い
例えば、営業会議で新規顧客へのアプローチ方法について議論していたとします。既存のお客様からの売り上げが下がっているため、新規顧客を開拓する方法を話し合っています。
そこで営業マネージャーは、「週に5件、新規のお客様へ訪問する」という案を出しました。しかし、複数のメンバーが次のように反対したのです。
「既存のお客様へのフォローも必要なため、新規開拓に多くの時間は使えません。1週間に5件の訪問は現実的ではないと思います」
そうすると、マネージャーはメンバーからの同意を取るために、妥協したアイデアを考え始めます。例えば、次のような内容です。
「新規開拓はすぐに成果が現れないため週に5件でも少ないくらいだ。しかし、できないノルマを設定しても意味がない。週に3回ならメンバーも受け入れてくれるだろう」
このように、効果のない施策と分かっていても、メンバーの合意を得たいがために妥協してしまうのです。そのため、本来の目的に対して有効性がないと分かっていても、そのアイデアが可決されてしまいます。
営業組織において会議をマネジメントする立場の人は、このジャニスの集団思考の影響力を十分に考慮する必要があります。
メンバーから賛同を得ることではなく、営業予算を達成するという本来の目的を忘れてはいけません。
営業組織では、周囲の営業マンと足並みを揃えて働くことが求められます。そのため、新しい販売施策や戦略を考えるとき、メンバーの同意を得る必要があります。そこで必要になるのが会議です。
しかし、メンバー全員が参加したからといって、そこで可決されたアイデアが正しいとは限りません。周囲のメンバーから反対されるのを恐れて、賛同を得られやすい無難なやり方や方法論を提案しようという心理が生まれるからです。
つまり、集団の結束力が、正しい意思決定の邪魔をしてしまうのです。営業組織をマネジメントする立場にいる人は、ここで解説した集団心理を理解して、本来の目的を達成するためには何が必要かを真剣に考えてください。

心理的リアクタンス:お客様に選ばれる営業マンのアプローチ手法


お客様に嫌われる営業マンの特徴として、相手のことを考えないという共通点があります。顧客の立場を考えずに、自分の都合で一方的に売り込みをするのです。
たとえ、最初から商品を買うことを決めていたとしても、営業マンに売り込みをされるとお客様は背を向けてしまうものです。これは、他人に強制をされると、それに対して反発したくなる傾向があるからです。
人は本能的に「自分のことは自分自身で決めたい」という考えを持っています。そのため、他人に何かを押し付けられると、「自分で決めることができない」と感じるため、反発したくなる心理が生まれるのです。これを心理学で、「心理的リアクタンス」といいます。
ここでは、この心理現像を学ぶことで、営業マンに必要なアプローチ手法について考えていきます。

 頭ごなしに指示しても部下は動かない
例えば、あなたが大型の商談を進めていたとします。規模の大きいプロジェクトのため、上司と一緒に何度も足を運び、提案を続けてきました。その結果は、午前中の社内会議で決まることを先方の担当者から聞いていたのです。
そして、一本のメールを返信してから、お客様に電話をかけようと考えていたときです。あなたの上司から、次のように話しかけられました。
「あの商談がきまるのは今日の午前中だったよな。先方の担当者に電話したのか。ちゃんと報告してくれよ」
このように、自分が行おうとしていたにも関わらず、他人から指示をされると、つい反発したくなります。そのため、次のように感情的に回答してしまうのです。
「いや、午前の何時に終わるかまでは聞いていません。それに、もうすぐ昼食の時間帯なので電話はかけません。13時を過ぎてから電話をかけるつもりです」
相手が言っていることが正しいと分かっていても、強制されている感覚を受けると、人は素直に指示を受け入れようとしません。
部下に指示を出すときに、偉そうな態度で接する上司が嫌われる理由がここにあります。言っていることが正しくても、部下は感情的に反発しているのです。部下を持つ上司は、この「心理的リアクタンス」の影響を真剣に考えなければいけません。

 売ろうとするほどお客様は逃げていく
クロージングを行うまでの流れを考えたとき、お客様との距離を縮める期間はとても重要です。お客様との関係性ができていないのに、契約を迫っても良い結果に繋がることはありません。
たとえ、お客様が興味を持っていた製品でも、営業マンに売り込みをされると気のない素振りをしたりするものです。
例えば、お客様を目の前にすると、一方的にセールストークを続ける営業マンがいます。本人は製品を理解してもらえれば、お客様は購入してくれると考えているのです。しかし、お客様は売り込みをされるのを嫌います。
一方的に売り込んでくる営業マンに対して、お客様は強制的なイメージを受けます。そして、心理的リアクタンスにより、お客様に反発心が生まれます。そのため、提案を受け入れてはもらえないのです。
自分の都合で提案を進める営業マンの数字があがらない理由がここにあります。
営業マンは、お客様のニーズにあった提案を行わなければいけません。そして、その提案を押し付けるのではなく、お客様自身に選んでもらうことが大切です。これを理解することで、営業マンに必要なアプローチ方法がみえてきます。


返報性の法則:お客様に選ばれる営業マンが大切にしている心構え


売れている営業マンに共通することが、お客様に好かれているという特徴です。営業マンが積極的に提案をしなくても、お客様の方から声をかけてくれるのです。
それでは、どのようにしてお客様と、このような関係を構築すればよいのでしょうか。それは、「お客様にメリットを与える」という心構えで営業に取り組むことです。自分が得をすることを考えずに、お客様に喜んでもらうことだけを考えるのです。
お客様から声がかかる営業マンは、一方的に商談の話をもらっている訳ではありません。それ以上のメリットをお客様に与えているのです。そしてお客様は、その「お返し」として営業マンに声をかけているのです。
人は他人に何かをしてももらったときに、自分も同じように返してあげなくてはいけないという心理がうまれます。これを心理学で、「返報性の法則」といいます。
この心理的効果は、広告やマーケティングの世界で広く活用されています。ここでは、返報性の原則が、いかに営業活動に影響を与えているかについて解説していきます。

 与えてもらうだけでは気が済まない
人は他人の好意を受けたときに、「何か御礼をしなくては」と感じる傾向があります。例えば、誕生日プレゼントです。あなたの誕生日に、同じ営業部のメンバーからプレゼントを渡されたとします。上司や後輩、同僚たちが、あなたの誕生日を祝ってくれたのです。
このとき、「自分だけプレゼントを貰うのも申し訳ない。他のメンバーが誕生日のときは、同じようにプレゼントでお祝いをしてあげよう」と感じます。これが、返報性の法則によってうまれる心理的な変化です。
また、この返報性の法則は、日常のあらゆるところで目にすることができます。例えば、デパートの食品売場です。新商品の食品を一口サイズにして、実際にお客様に食べてもらうイベントを実施していることがあります。
そこでは、食品売場の店員が、母親と一緒に来ている子供たちに積極的に試食品を勧めています。そして、試食をしてもらった後に、その母親に購入を促すのです。そうすることで、「せっかくなので一つ買っていきます」と母親が決断する確率が高まります。
これは、「子供が試食品を食べさせてもらったので、何も買わずに立ち去るのは気がひける」という心理がうまれるからです。これは、返報性の法則をセールスに活用した、典型的な例といます。

 営業マンに必要な心構え
私がIT業界で法人営業をやっていたときの話です。この返報性の法則の効果を、強く実感した出来事がありました。私は、一ヶ月に60件の訪問件数というノルマに苦しんでいました。入社したばかりで、お客様の数が少なかったからです。
そのため、一社の法人企業に対して、週に2~3回のペースで足を運ばなければいけなかったのです。ただ、アポイントをとるためには、お客様と会うための理由が必要です。ですので、アポの口実を作るのに非常に苦労していました。
このような状況の中で、ある商談でコンペになったときです。3~4社の競合相手がいたなかで、私は受注することができたのです。その御礼を伝えるために電話したとき、お客様は次のように答えたのです。
「実は他社の方が価格は安かったのです。ただ、◯◯さんは何度も足を運んでくれて、丁寧に提案してくれたので選定しました」
当時は経験が浅かったこともあり、お客様が私に発注してくれた理由が理解できませんでした。しかし、この発注は、お客様の要望に応えるために懸命に提案を続けてきたことに対する御礼だったのです。
このように、お客様は自分のために真剣にメリットを与えてくれる営業マンに対して、「何かで報いてあげなくては」という感情がうまれます。
このことから、営業マンにとって、「お客様にメリットを与えつづける」という考え方が大切であることが理解できます。売り上げや利益のためではなく、お客様に喜んでもらうことだけを考えるのです。
そうすることで、お客様から声をかけてもらえる営業マンになることができます。返報性の法則を理解することで、ようやく営業マンに必要な心構えが見えてきます。

現状維持バイアス:変化を受け入れることで営業成績が向上する理由

人は現状の自分に心地よさを感じる傾向があります。そのため、自分自身や周囲の環境が変化することに対して強い抵抗を感じます。これは、無意識に「現状のまま変わらない」ことを望んでいるからです。これを、「現状維持バイアス」といいます。
例えば、あなたが好きでもない仕事に就いているとします。建築関連の仕事に就きたいという想いがあるのに、なかなか辞めることができません。職場の同僚とも仲良くなり、居心地も悪くないので、ついズルズルと続けてしまいます。
これは、変えた方が良いと分かっていても、「現状の自分のままで良い」という心理がうまれているからです。この心理が働いているため、あなたは変わることができないのです。
そして、この現状維持バイアスを外さない限り、あなたが営業として成長することはできません。ここでは、営業マンがスキルアップするために必要な心構えについて解説していきます。

 新しい取り組みに対するストレス
例えば、営業部署内で新たな販売戦略に取り組みはじめるとします。過去に購入実績はあるが、継続的な取り引きに至っていない法人顧客へ再アプローチを行うことになりました。各営業マンともにターゲットを絞り、週に10回の訪問というノルマです。
しかし、しばらくやり取りがないお客様のため、思うようにアポイントが取れません。また、訪問できたとしても他の業者との取り引きが強く、商談に発展することが難しいケースがほとんどです。このとき、多くの営業マンは次のように考えます。
「今までどおり取り引きの多いお客様に注力した方が効率的ではないか」
「見込みの低い顧客に対しては、従来の電話とメールのアプローチだけで良いのではないか」
このように、もっともらしい理由をつけて、新しいアプローチを避けようとするのです。これは、新しい取り組みを始めることで生まれるストレスに対して、無意識に元に戻ろうとする心理が働いているからなのです。

 バイアスを外すことで成長できる
この現状維持バイアスは、人間が変わることの大きな妨げになります。前述のとおり、人は変わることを本能的に嫌うからです。ただ、自分が変わることを避けていては、成長することはできません。
これは、私自身も実際にそうでした。私がIT業界で働いていたときの話です。勤めていた会社では月に一度、提携している企業の営業研修に参加することができました。思うように数字があがらずに苦しんでいた私は、積極的にこれを活用したのです。
ただ、平日は業務で忙しかったため、私は上司に承認をもらい休日の土曜日に参加していたのです。すると、これを聞いた同じ営業部のメンバーが、からかうように声をかけてきました。
「土曜日にわざわざ研修に参加しているのだ。ずいぶんと気合い入っているね」
これを言われたとき私は、「周囲のみんなは研修に参加していないのか。自分も研修なんかに参加するのはもう辞めようかな」と感じたのです。
しかし私は、数字が徐々に上向き始めていたということもあり、そのまま営業のスキルアップを続けていく決心をしたのです。
このように、今までの取り組みや生活習慣を変えようとすると、ストレスが発生します。それは、自分自身が抱く感情であったり、周囲からのプレッシャーであったりします。そして、多くの人が現状維持バイアスの影響により、元の自分に戻ろうと考えます。
ただ、このストレスに負けてはいけません。今までと違う自分を受け入れることができなければ、成長することはできないからです。自分が変化することを肯定しなければいけません。
あなたの営業成績が思わしくないのであれば、今すぐに自分を変える決心をしてください。自分の変化を受け入れることで、ようやくトップセールスへの道が開けてきます。

サンク・コスト効果:自分の誤ちを認めると売上があがる理由


人は過去に費やした時間やお金を、無駄にしたくないと考える傾向があります。この影響により、正しい判断ができないことがあります。これを心理学で、「サンク・コスト効果」といいます。
サンク・コストとは、今までに費やしてきた時間や費用のことをいいます。サンクとは、「埋もれた・目に見えない」という意味です。また、コストというのは、金銭的な費用や人的な労力のことを指しています。そのため、埋没費用とも言われることもあります。
このサンク・コストはビジネスに大きな影響を与えおり、日常のあらゆるところで見ることができます。ここでは、このサンク・コスト効果を理解して、営業活動に必要な心構えについて考えていきます。

 自分の誤ちを認めたくない
例えば、中古のパソコンを10万円で買ったとします。しかし、購入してすぐに故障してしまいました。その修理代に3万円かかったのです。しばらくは問題なく使えていたのですが、また故障してしまったのです。

販売店に持って行っていくと、今度は修理に5万円の費用がかかると言われました。とても古い機種のため、非常に壊れやすい状態という案内をされました。そのため、店員は15万円で新品のパソコンを買うことを勧めてくれたのです。
今後も故障する確率が高い中古パソコンを修理するよりも、新品を購入したほうが良いのは誰にでも理解できます。しかし、今までに支払ってきた「13万円」を無駄にしたくないという心理が生まれます。
この考えが邪魔をして、正常な判断をすることができなくなります。そのため、中古のパソコンを修理して、使い続けようとしてしまうのです。これが、サンク・コストが与える影響です。

 無駄だと分かっていても続けてしまう
営業組織において、このサンク・コストの影響が顕著なのが会議です。会議をおこなう効果を感じていないにもかかわらず、続けている組織は多いです。主催者の多くは、メンバーを招集する必要性を聞かれても明確に答えることができません。
営業マネージャーによっては、「今までやってきたから」という理由で定期的に会議を実施する人さえいます。ここには、「辞めてしまうと今までの会議は全て無駄であったことになってしまう」という心理が働いているのです。これが正常な判断の邪魔をしているのです。
さらに、このサンク・コストは営業マンのアプローチにも大きな影響を与えています。例えば、長期間にわたり大型案件の商談を続けてきたとします。しかし、お客様に、「他社の製品を選ぶ方向で進んでいる」ということを告げられます。
このとき、契約になる可能性がないと分かっていても、提案を続けてしまうのです。これは、その商談にかけてきた労力が無駄になるのを認めたくないという考えが働いているのです。
このように、サンク・コスト効果により正常な判断ができないケースは多いです。そのため、ビジネスの状況をさらに悪化させたり、時間の浪費が発生したりします。サンク・コストに惑わされず、冷静に判断しなければいけません。
過去に費やした時間やお金は取り戻すことはできません。それよりも、そこから何を学べるのかを考えるのです。そうすることで、サンク・コストを貴重な経験へ変えることができます。
過去の経緯にとらわれず、営業として正しい判断を行うことを心がけてください。サンク・コストに惑わされないマインドを身につけることで、ようやく予算達成が見えてきます

⇒二次販売で今までかけたお金があるせいで、それを使えないともったいないという思考から新しい効果のあると思っている物を導入することが出来なくなってしまう。
サンクコストを貴重な経験に変えさせ、新しい決断をさせる。

ウィンザー効果:何がお客様の心を動かしているのか


お客様は営業マンが話す内容よりも、商品に対する第三者の評価を信頼する傾向があります。人はその人本人よりも、第三者の発言のほうが信憑性が高いと感じるからです。これを心理学で、「ウィンザー効果」といいます。
例えば、あなたが飲食店を探すときに、インターネットでお店のレビューなどを確認することはないでしょうか。 いわゆる、「クチコミ」です。
多くの人は、お店のホームページに書かれていることよりも、実際に食事にいったお客様の評価を信頼します。これは、クチコミに書かれていることで、その事実が世の中に広く知れ渡っているという印象を受けるからです。
まさにクチコミは、ウィンザー効果の影響が働いている典型的な事例といえます。このように、ウィンザー効果は日常のあらゆるところで見ることができるのです。ここでは、ウィンザー効果が営業やマーケティング活動に与える影響について解説していきます。

 第三者の影響力
例えば、あなたの上司が、あなたに対して大きな期待を抱いているとしますこのとき、次の2つのパターンを想定して、どちらが信頼できるかを考えてみてください。
最初に、あなたの上司から直接、「鈴木君なら今年も営業予算を達成できると思っています。私はとても期待しています」といわれるケースです。
もう一方は、同僚から「山田部長が鈴木なら今年も予算達成できると言っていた。とても期待している様子だった」と伝えられたとします。
このとき、どちらのパターンが「部長の期待」を強く実感できるでしょうか。多くの人は、同僚から伝えられた方が高い信ぴょう性を感じます。これは、部長本人からではなく、第三者である同僚から聞かされたため、すでに社内に知れ渡っている事実である印象を受けるからです。
このように、人は当の本人から言われるよりも第三者から伝えられる方がその情報を信用する傾向があります。

 なぜ「お客様の声」は有効なのか
営業活動において、このウィンザー効果を活用しているのが「お客様の声」です。営業マンが商品を懸命に勧めると、どうしても売り込みのイメージが強くなってしまいます。そのため、お客様は営業マンの話を素直に信じることができません。
そこで、第三者である「商品を購入したお客様」に代わりに伝えてもらうのです。例えば、製品を使ったことによる効果などをお客様にヒヤリングして、それを提案書の中に導入事例として盛り込むのです。
そうすることで、「製品の効果」を第三者の声でお客様に伝えることができます。第三者の声を信じるウィンザー効果の影響力が働き、営業マン本人が伝えるよりもお客様は信用してくれるのです。
例えば、私がIT業界で営業を行っていたときの話です。大掛かりな業務システムの導入になると、数千万円の費用がかかります。そのため、お客様も簡単に決断をしてくれることはありません。
そこで私は、既に業務システムを導入している企業に、「商談中のお客様」を連れていくという提案を行なっていました。営業担当である私から話すよりも、既にシステムを使っているお客様の感想を聞いてもらう方が効果が高いからです。
このように、営業マン本人から言われるよりも、第三者から伝えた方が提案の信頼性を高めることができます。第三者から言われたことで、すでに世の中にその事実が広まっているという印象を受けるからです。
何がお客様の心を動かしているのかを考えて、あなたの商談に活かすようにしてください。

双曲割引


双曲割引とは、人は「今」という時間を強く重要視する傾向があります。そのため、同じ金額ならば「今貰える報酬」より「将来貰える報酬の価値」の方が低くなります。
その価値の減り方が反比例(双曲)のグラフになる為、双曲割引と言われています。

1.今日10万円もらえます
2.来週10万円もらえます
これなら絶対に1を選ぶと思います。しかし、
1.1年後10万円もらえます
2.1年1週間後10万円もらえます
このふたつの選択肢であれば、1だが最悪どちらでもいい気がしませんか。なので反比例になります。

営業では、まず今の利益をニードの最重要項目にすることが大事と考えることが出来ます。
また逆に、「今2万円の出費は痛いかもしれない、しかしその今の痛みを我慢できない理由は双曲割引という効果が働いているからです。将来の利益の為に今我慢しましょう。」と伝えるのも効果的です。
売上不振な経営者など生活が不安定な人は、この双曲割引が強くなると言われています。
今広告費をかければまだ経営を回復させることが出来る段階であったとしても、そこにコストをかけず失敗(自滅選択)してしまう現象を「時間的非整合性(選考の逆転現象)」と呼びます。

「将来の為に投資をした方が良いと思っている自分」と「今生活するための資金が必要な自分」が対立している状態を「エージェンシー問題」といいます。

例)オーナー、エージェンシー問題ってご存じですか?{知らない}まさに今のオーナーの状態を言うんですけど。「将来の為に投資をした方が良いと思っている自分」と「今生活するための資金が必要な自分」が対立している状態を「エージェンシー問題」といいます。このように考えてしまうとどうしても人間は「今」に焦点を合わせてしまいます。理由は、私たちも生物なので、昔からある本能的な機能がある脳の影響力が強く残っています。特に、未来に向けて行動するというのは、後から進化した脳の部分なので負けてしまう訳です。ちなみに双曲割引(自滅選択)はネズミでも確認されています。このように、自滅選択してしまうのは脳の仕組みから見れば当たり前と言えるわけです。
では、今オーナーがどうしたらいいかと言うと、自分が将来どうなっていたいかを表明し、そのための「今」しなければならない行動を確実にすることです。

ザイオンス効果


ザイオンス効果とは、同じ人や同じ物に接触する回数が増えるほど、その対象に対しても次第に好印象を持つようになる心理現象の事。
ザイアンスの法則、単純接触効果などとも呼ばれる。
例えば、スーパーマーケットへ買い物に行った時に、知っている商品と知らない商品があれば、知っている商品の方が安心出来たりすることがあります。親近感を抱くことで、その商品を買いやすくなります。
インターネットを使って接触回数を増やすためには、メールマガジンを配信したり、ブログを更新してウェブサイトに何度も訪れてもらうようにします。

時間的非整合性(選考の逆転現象)


計画時に長期的な利益のための意思決定が行われても、短期的な利益と相反するため、実行時に計画と整合性のない行動をしてしまうこと。



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