京都の断片を書き留める Xデザイン学校校外研修・京都#2#3の2

京都のフィールドワークとKA法講座、全4日のうち2、3日目のリフレクション。

「らしさ」が覆い隠すもの

朝から東京の満員電車に揺られ、京都で吸い込んだ養分が、さっそく抜けていく。

「京都らしさ」という言葉は、京都をよく知らない人も、うっかり使ってしまう。
例えば、ちょっと意地悪な京都出身者を見聞きした時に「京都人らしいね〜」と言ってしまうように。

その「知らないのに知っている感じ」が、京都の独自な存在感を表している。
そして、理解を妨げているのではないか。

京都で聞いた言葉から、京都という街の手がかりを考えたい。
この講座のメインの内容とはあまり関係がない。
ただの私の興味。

(※あえて店名などの固有名詞は伏せています)

①今のオシャレなカフェは、コーヒーに寄せて店を作っている

京都市山科区出身、今はイギリス在住という女性。
イギリス人の夫と1歳半の長女と三人で、1か月間の帰省中。
今の実家は一乗寺。

夫はイギリスでコーヒー専門店を開いている。
女性も御所近辺でカフェ勤務経験がある。
二人とも、京都の新しいカフェに詳しい。

「10年くらい前に、町屋ブームってあったじゃないですか。あの時にできたカフェは、京都に合わせた店づくりだったのに。最近のおしゃれなカフェは、コーヒーに寄せて店を作っているんですよね」

「例えば、壁が真っ白で、すごくシンプルで、綺麗で。店の中だけを見たら、ヨーロッパのカフェみたいな。店の中だけを見たら、おしゃれで綺麗。でも京都ではない。東京みたい」

「でもある店は、全力で和を推しているんですよ。中庭とかあって、もう素晴らしいですよ」

「京都の人は、いきなり距離を詰められたくない。でも距離をとって話し始めると、気さくですよ」

②花見で誰もレジャーシートを敷かない

京都在住の先輩記者の話。

花見が自由で驚いたと。
一人で本を読む人、楽器の練習をする人、寝ている人。

「でも誰一人レジャーシートを敷いていないの。それは美しくないからなんだろうね」

浅野先生が奇しくも似たことを言っていた。

「鴨川沿いでテントを立てているやつがいる。あれは京都人ではない。みんながそれをやった時に美しくないことがわかっているから」

③鴨川に沈む夕陽を見て、ええなあこのままでと思った

18年前からカフェを営む男性。
エリアに複数ある人気カフェの先駆け。
常連はカウンター。一見はテーブル席。満席でなくても入店を断っていた。
下鴨神社近くに住む。

「生まれも育ちも京都。バリバリの京都人ですよ」

「でも僕はオープンな方。京都人には珍しい」

「18年前、このへんはなんもなくて。何もない雰囲気が好きやったんですよ。店出す言うたらみんなやめとけって反対しましたけど」

「人もマンションも、欲しくないんですよ。来なくていいのに。全て資本じゃないですか。資本が街を壊すんですよ。そうせんと生きていけん人がいるのはわかるし、時代で変わっていくのはしゃあないですけど、限度っていうもんがある」

「全てがつながってるんですよ。例えばカフェ行っても、インスタでバズったとかで、わっと人がきて、行けなくなる。そうやって自分の場所が壊れていくんです」

「京都人は足るを知るのに、京都京都をやりすぎる。コロナ前のインバウンドで行くとこまで行ったかなと思ったけど、また戻ってきてますね。もう滅びるしかないですわ」

「みんなコロナの時に、店が閉まってやることがなくて、つまらないって言ってたじゃないですか。僕は逆やった。(店を開けられず)鴨川で沈む夕陽を見て、ええなあこのままでと思った。だって住みにくくなるだけやん。欲望を満たすツールがあるのが前提で考えてるやろ、みんな。そんなんなくてもええのに」

この店の外観は、出店前そのままと思われる、古い倉庫のよう。
中に入ると趣味全開。
漫画、レコード、アートがぎっしり。
①の女性のように、街並みを乱さないというスタンスなのだろうか。

①②③からは、街=公に対する視線を感じた。

「自分で準備したキャンバスに、自分の絵を描き、自分が気に入ったら満足」

これをNGと感じる人がいるんだな。
「コーヒーに寄せた店」という表現は、「その絵がどこに置かれるのかを考えているのか?(独りよがりで迷惑だぞ)」という指摘に聞こえた。

他者からの視線に敏感という点では、田舎のルールもそうではあるが、「掟」という言葉がふさわしいような、「よく知らないが、そう決められている」という鎖のようなもの。

「美しい」「ふさわしい」を一般市民までがジャッジする街は、京都以外にあるのだろうか。

④30分待ってパンを食べるってなに?

③の常連の男子大学4年生。
広島出身だが、マスターに「この人は京都人っぽい」と気に入られている。
映画や小説などカルチャー系が好きでイベントの手伝いなどしている。
西陣のゲストハウスでバイト中。
中学時代からアコギを弾いている。

「僕が雰囲気いいなと思う店は二つあって。一つは安くて酒が飲めて、さくっと帰れる。二つめは、おしゃべりができて、通いたくなる店」

「新しい店とか行列とかって、斜に構えちゃうんですよね。並んでまでご飯食べるか?と。この近所のパン屋もものすごい行列ですけど、30分待ってパン食べるってなに?と。僕が買うのは、おばあちゃんでも子供づれでもサッと行ける店」

「今日はこの店の次は、あと1軒、一乗寺の店に行きます。ここと同じでマスターや常連の人と話せるのが楽しいんですよ。そういう店が3〜4店できました」

「例えばこの店で誰か他の常連さんの話を聞いて別の店でその人に偶然会って。『ああ、お噂はかねがね』みたいに繋がる。同じ店で再会することもある。京都は狭いと聞いてたけれど、確かにと」

「この繋がっていく感じが面白い。でもむやみに広げたいわけじゃない。インスタとかで友達募集したいわけじゃないし。むしろ1〜2回会っただけで連絡先交換交換するか?と」

「ふらっと一人で入る店も、チェーン店もいいんですけど、最近こうして人と話せることが楽しくて店に来ています。サードプレイスみたいな」

「僕の勝手なイメージですけど、西陣の人ってビジネス寄り。なにしてるかわからんけど稼いでる人がいる。左京区は金はいらんから俺はこれを突き進むっていう人」

「知り合いのカフェ店主が、街には衰退があると言っていて。西陣は織物が衰退して町が衰退して、今空いた土地に新しい人が入って活動を始めている。今からまた登っていく始めのところかもしれない」

⑤通りに面した窓が小さかったから、大きくした

③近くにある人気カフェの一つ。
店主は東京・渋谷で店を出していたが、6〜7年前に京都に引っ越し。
モーニングが人気で、朝9時から観光客が10人以上並んでいた。

「この店も、通りに面した窓が小さかったから、大きくしたんですよ。京都は建物の作りも閉鎖的なんでしょうね」

「京都の昔ながらの人たちと接点はないです。僕は全然拒んでいないですよ」

京都の建物は外から中が見えないと一般論を言った時のレスポンス。
確かに窓枠部分だけ、木材が新しい。色を寄せているが、微妙に違う。
よくよく見ると、③と好対照な外観をしている。
道から店主こだわりの内装が見える。
③は中が見えない。

もしかしたら、これが京都の美しさを重んじる人にとって嫌な例なのかもしれない。
ただ、客には⑥のように京都の人もいる。
東寺の近くから来た親子4人もいた。

店内には伝言板があり、客が友達を募集している。
「フランス人の夫と住む近所の女性で、フランスに行くときに猫をどうするか困っていたので猫仲間を募集している」のような近所パターンだけでなく、東京など他地域の人も。

⑥若いのは苦手なので

⑤に夫と子供と来ていた女性。
鴨川の対岸から歩いて来る常連。

「この辺り、いい店が増えましたよね。10年前は何もなかったのに。昔はこの辺で食べるってなくて、四条まで行ってた。最近はこの辺ですむようになったから、四条まで行かなくなった」

「ぱっと見て雰囲気がいいなと思ったら入ってみる。いいなと思うのは、なんやろ、ごちゃごちゃしてない・・? でもこの店はごちゃごちゃしてるな。好きなんですけど。蛍光色とか、若すぎる雰囲気は苦手かも」

「あとはインスタで知り合いが上げている店を見て、近くだったらいいなと思って行く」

「ゼロウェイストスーパーは、できた時に行ったけど、子供が産まれてからは行ってない。普通に近所のスーパーに行く。容器を持っていくの大変やし」

夫「このへんは賑やかになりましたよね。知り合いでこの辺で店を開きたいっていう人が増えている印象。賑やかだからって」

⑦東京人は、余裕がなさすぎ

一緒にフィールドワークをした滋賀在住の方。

「移動の概念が違うのかなって。目的地につくのに多少遅れてもいいと思っているから、声をかけられても応じる。僕から言わせると、東京の人の方が余裕がなさすぎですよ」

東京で街頭声掛けをすると、半分以上は断られる。
知らない人に声をかけられて、耳を傾けるなんてほぼない。

京都では、2日間で20人近く声をかけて、断られたのは1人だけ。
意外だったという私の発話へのレスポンスが上記。

⑧閉鎖的って多義的だなと

⑦と同じ方。

「③のマスターは『僕はオープン』というけれど、よその人からしたら十分閉鎖的。京都は閉鎖的って言うけれど、多義的だなと」

一言さんの私たちに話してくれる点において、③のマスターはオープン。
客には東京から移住してきた人もいるとのこと。

一方で、京都のルールを守ることにかけては思い入れが強い。
守らない相手にははっきりと嫌悪感を示す。

誰から見て、なにをもって「閉鎖的」と言うのか。
実はまだバリエーションがあるのかもしれない。


以上、昨日書けなかった、断片の記録。
流石に疲れすぎた。寝ないと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?