胎動

心の質感がいつもとちがうとき。
ドロリと重く流れるような時もあるし、場所をズラそうと触れたところからボロボロと崩れるような時もある。
いまは後者で、ただ風が吹くだけで粒が落ちていってしまう。
軽くて、硬くて、少しの衝撃で、ホロッと。
乾いていて、ビニールに包まれたラムネみたいな、麩菓子みたいな、そんなふうに。


凪いだ場所にいたら、崩れなくて済むんだろうか。それはいつまでの話なんだろう。澄んだ水面には、きっと何もないから澱まないだろう
に。

心がひしゃげるよりも、1人になる方がこわい。何も変わらないでいてほしい。でもきっと、ひしゃげきってしまえば、見えるものもあるのかもしれない。

なんの激しさもない、ほとんど音もたてないまま。
渇きに似た感覚が、その薄膜が、しずかに張り詰めて、湾曲したその表面があとどれくらいで音を立てるのかは、まだわからないけど。

望まない胎動が表面を動かしてしまう。
笑うと裂ける唇のように、加熱したソーセージのように。
もうこれ以上は辞めてほしいと思うのに、孕んだ種はその身じろぎをやめない。
堕胎しないかぎり。


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