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ふるくてあたらしい街をあるく #台南 #台湾

 昨年2月に台湾は「台南」という街にはじめて訪れてからというもの、この街に魅了され続けている。数えて5回目となる古都台南への旅。訪れるたびにあらたな感動がある。

今回の旅のテーマは、16年ぶりに台南で開催される「台湾ランタンフェスティバル」を見ることと、古きを残し新しく活かす台南風リノベーション事例を改めて見て回り、その知見をみなかみへ持って帰ること。

開府(大航海時代にオランダ人が現在の安平に上陸して近代都市の開発がはじまって)400年の記念すべき2024年は、「台南400」と銘打った様々な企画やイベントが行われている。台南は台湾のはじまりの地でもあるのだ。


この街の
人は、素っ気ないようであたたたかく
景観は、雑多のなかに洗練があり
社会は、適当なようで合理的

歴史的に価値ある数多の建築物とリノベーションの息吹が調和する。

それらのギャップが魅力でもある、古くて新しいまち。

車やバイクがビュンビュン走っていて排気ガスが気になるのに、夕方になると西の空はいつも美しい夕焼け色に染まる。

安平地区にて

印象的なのは街全体に神様の気配が漂っていること。

それは、市中に点在する「廟(びょう)」という日本でいう神社のような存在による。大きな通りに面して堂々と在ったり、路地裏にひっそりと在ったり、街を歩くと至るところで目にし、日常的に神様へ祈りを捧げる人たちを見かける。道行くと突如あらわれる刺々しい彫刻で象られた原色のお社に線香の煙がたなびく様子は異国情緒にあふれ、旅の色を濃くする。

市中には大小様々な「廟」が点在する

この街を訪れるようになったきっかけは台湾からみなかみへの訪日観光客誘致に携わるようになったこと。みなかみ町と台南市は行政単位の友好協定を結んでいる間柄で、観光や物産をはじめ教育やスポーツなどの面で様々な交流が活発に行われている。人口規模で100倍の差がある台湾有数の大都市と対等にリスペクトを持って交流をし続けることができるのは、陰日向で双方のつなぎに奮闘する“アープー”と呼ばれるこの人の功績によるところが大きい。

今回の旅でも現地で落ち合ってディープ台南を案内してもらった。市場やカフェで知らない人から”アープーアープー”と声をかけられまくるほど台南で有名人なアープー氏。

右がアープーこと阿部氏。左が筆者(台湾通名小剛)
台南を歩くときは"MINAKAMI"のTシャツを互いに意図せず大体着ている

台南旅では、古都ならではの史跡めぐりに胸を踊らせつつ、古きと新しきが混ざり合う路地裏を歩き回り、小吃(シャオチー)と呼ばれるストリートグルメに舌鼓を打つ。そして台湾ビールと台湾ビールと台湾ビール…旅の愉しみは尽きることがない。

台湾で飲むと格別に美味しく感じるのは何故なんだろう

人のあたたかさに触れる旅

 安平会場と高鉄台南駅会場のランタンフェスティバルの作品の数々も壮大で壮観であったが、今回の旅の感動はまたしても「人」によるところが大きかった。

フライトの都合で夜遅くのチェックインとなってしまった初日のゲストハウスでは、所定の時間を大幅に超えてもオーナーご夫婦が待っていてくれた。しかも、お腹空いたでしょうと台南風ポークサンドと豆乳のお茶まで用意してくれて。サンドもお茶もまだあたたかかった。

台湾風古民家をリノベーションしたゲストハウス
昨年に続き二回目の宿泊

二日目に宿泊したゲストハウスでは、朝食付きプランで予約していたが、急遽朝早くに出発する用事ができてしまっため、その旨伝えると、「少しだけ待ってて!」とスタッフの方が大急ぎで朝食をお弁当にしてくれた。しかも、サンダルで駆けて外の通りの向かいに出ていた屋台から何かを買ってくると、それも合わせて手渡してくれた。「台南はいま、とうもろこしが美味い季節なんだ」と。それがまた、ひたすら美味しかった。

見たことのない色と食感のモチモチ茹でとうもろこし
露天で蒸してそのまま手渡す

三日目には、台南駅から鉄道に乗って40分ほどの場所にある「新化」という旧市街へ行き、適当なところで適当に肉燥飯(台北でいうところの魯肉飯)を屋外席で食べていたところ、店主と思しきおじさんに「ジャパニーズか?」と聞かれ、そうと答えたら、支払った肉燥飯代40元をまるまる返してくれた。「なぜ??」と言ったら「オレは日本人が好きなんだ、祖先が世話になったからな。これは奢らせてくれ」と。何故日本人かわかったかというと、肉燥飯を食べながらビールを飲んでいたからだろう。こちらの人は昼間に、特に食べながらビールを飲む習慣がない。

飾らないストリートグルメがとびきり美味しい

このように人のやさしさに触れてグッとくるエピソードに事欠かないのが台南の旅。毎日何かしらの感動がある。旅人に少しでも良い感想を持って帰って欲しい、自分たちが誇りとする自分たちの街のことを。そんな、地域愛と想いが垣間見える。旅の満足度は上がる。だから、また台南へ行きたくなる。

台南人のメンタリティ

 国際都市である台北のことはよくわからないが、台南の飲食店界隈には共助と水平分業が根付いている。例えば、手作りケーキが売りのお店があるとする。日本の場合、客単価を上げようとケーキに合うコーヒーや紅茶を用意し、観光地であればお土産を販売し、ニーズをできるだけ取りこぼさないよう囲い込もうとするのが定石である。が、台南の場合、ケーキのお店はひたすらケーキだけを売り、コーヒーの店はコーヒーだけを売る。もちろん全部ではないが。そして、互いの店への持ち込みがOKなのだ。市場でも、肉だけを売る店、魚だけを売る店、雑貨だけを売る店と、よくみると販売品種は少ない。それでも、肉屋と魚屋と雑貨屋が隣に並んでいるので買い物に不便はしない。また、肉屋は隣の魚屋と雑貨屋で買い物し、魚屋雑貨屋は肉屋で買い物をする。こうした共助の上で地域経済が成立している。新規参入がしやすいといわれているのも台南の特徴であると聞いた。目抜き通りで最初におにぎり店をはじめた人が居て、人気が出たとすると、次の人が目の前でおにぎり店をはじめる。そこで驚くべきは、最初の人は次の人を競合であるにも関わらず応援するというのである。もちろんそこに競争原理は存在するが、ニーズのパイを取り合うのではなく分け合い、互いに手を取り合ってニーズそのものを大きくしていこうと考えるらしい。ローカルで世界を相手にするときのヒントがここにあり、実に学び深い。

繁華街の夜空を彩る手作りランタン

人にやさしく、お互いを支え助け合う精神性。

昔の日本にあったはずのメンタリティが、台南にまだ存在している。その背景には、歴史的に政治や軍事の面で列強の脅威にさらされ続けてきたということがあるのかもしれない。あるいは、冬でも穏やかな陽気で外のベンチに腰掛けてぼっとするだけでも心地よい、所謂そんな南国気質の大らかさがそうさせているのかもしれない。

本当のところはわからないが、それでも旅人にとっては、居心地がよく旅の魅力にあふれ、目指すべき地であることには違いない。

台湾が近代都市の形をとって400年の記念すべき年である2024年、いま世界が台南へ熱い視線を送っている。

▼「世界の訪れるべき30カ所」に選出=ナショナルジオグラフィック


▼「2024年に訪れるべき場所」に選出=米CNN


紙幅がいっぱいになってきたので、台南リノベーションのことはまた次回に。

アープーに連れてきてもらった台南ディープな小吃「炭火麺」が激ウマい


あー、また台南へ行きたい。

Text & Photo : Kengo Shibusawa

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