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マンガが好きなあなたに「ひら☆マン」をオススメする理由 第12回 「SF×マンガ卒業生対談(前)」

みなさんこんばんは。ゲンロンスタッフの遠野よあけです。
「マンガが好きなあなたに『ひら☆マン』をオススメする理由」、第12回の更新です。第7期ひら☆マン申込期限まで更新するこの連載記事も、期限延長とともに三月に突入しました。いわば第2クールのはじまり。というわけで、記事タイトルが長ったらしいなと思ったので思い切って「ひら☆スス」という略称をつかってみました。文字数が減るとなんかすっきりした気持ちになりますね。

本日は、ひらめき☆マンガ教室の卒業生である富田童子さんと、SF創作講座の卒業である藍銅ツバメさんの対談(前編)を紹介します。
初出は、昨年開催されたゲンロン友の会第13期総会の即売会企画「ゲンロン・シラスコミュニティマーケット」にて頒布された同人誌『せい☆ぐん』です。(ちなみに今年のゲンロン総会でも、スクール卒業生制作の同人誌を頒布する予定です。そちらもよろしければぜひ)

『せい☆ぐん』表紙絵

さて。富田さん藍銅さんの対談はおよそ1万文字とそこそこのボリュームがあるため、前後編の2回にわけて掲載いたします。富田さんも藍銅さんも、それぞれマンガと小説で商業で本を出されているプロの作家さんです。聞き手として、ぼく(遠野)も参加しています。
内容としては、マンガ卒業生とSF卒業生とがお互いから見た両スクールの話を語っており、「ひら☆マン」の外部から見た教室の様子や、外部の人へと教室を説明するくだりもおおく、「ひら☆マン」の雰囲気を知ってもらうにはちょうどよい対談記事になっています。
もちろん、対談としても読んで面白い記事ですので、肩の力を抜いてふつうの記事としてお読みいただければうれしいです。

前置きが長くなりましたが、ここから対談本編となります。


■1

――お二人は今日が初対面ですよね。

富田童子:ですね。でも私、藍銅さんの小説は最終実作の「めめ」が好きで何度も読んできたんですよ。私は二次創作つくるのが好きなんですけど、「めめ」は二次創作したいって欲が湧く! キャラがすごい立ってるから「このキャラ使って、朝ごはんとかつくらせたい」みたいな。大正浪漫っぽい雰囲気も、「このぐんにゃりした世界観でなにかつくりたいな」って思う。読んでてすごい二次創作やりたくなる。

――お二人はこれまでの人生で二次創作はいろいろ触れてきた感じですか?

富田:私はバキバキでした。

――バキバキ!?

藍銅ツバメ:私は二次創作から小説を書き始めました。

富田:イェーイ。だからかな。藍銅さんの小説は読んでてしっくりくるんですよね。

藍銅:自分の小説には二次創作の文法が反映されているんだと思います。pixivとか。そもそも携帯小説時代からのインターネット書き手だったから。妄想の余地を残した書き方が好きで、キャラ図鑑みたいなのはあんまり興味なくて。物語のなかの空白のほうに興味がある。

富田:わ……………………かるっっっ!!

――共感がすごい(笑)

富田:キャラ萌えしないと気持ちのらないんだよね。

藍銅:やっぱキャラですよね。富田さんの『BOYS OF THE DEAD』の湖の話もキャラがすごいよかったし、『戸村助教授のアソビ』も絵を見てすぐ「はー、私これ好きだー」ってなりました。とくに『戸村助教授』の地蔵の話が絵もストーリーも一番好きかも。一話だと「なんかやべえヤツ来たぞ」って感じだったはずの主人公が、地蔵の話だとめちゃめちゃうろたえてるのとかすごい好き。あと主人公の自転車が盗まれる話があるじゃないですか。あれも好きで。自転車がなぜか牛柄なんですよね。なんでこんなに牛柄に執着しているんだこいつ……。

富田:それ実は原作者さんのネームにはなくて、牛柄は私が勝手に付けた設定です。ただの自転車だとつまらないなって思って、最初はなんか旧式の自転車みたいなのを考えてて。でもそれだと作画が間に合わないと気づいて、作画間に合う範囲で明らかに変な自転車だと読者にわからせるためには……柄だな、って。

藍銅:ここ読んでてめちゃめちゃウケました。牛柄の自転車だぞ、タイヤカバーまで牛柄だぞ、ヤバくない? って激ウケしてた(笑)。あと表紙もすごい好き。

富田:この表紙ね、主人公が座ってるだけの絵を描いて、デザイナーさんに「好きに遊んでください」って渡したら……。

藍銅:顔がめっちゃ増えてる(笑)

富田:まさかこうくるとは思わなかった。しかもデザイナーさんから「顔切り抜くの大変だったから、次から追加料金ください」って。嘘だろ(笑)

藍銅:そんなことあるんだ(笑)

富田:でもめっちゃ格好良いデザインになってたのでまあいいかなって。だから2巻の表紙を依頼するときは身体のパーツをレイヤー分割して渡しました(笑)

――『戸村助教授』は次で完結ですよね。2巻はもうすぐ出るんですか?

富田:4月末に出ます。ちなみに私、藍銅さんの小説は『鯉姫婚姻譚』もkindleで買ったんですけど、まだ最初のほうしか読めてなくて。すみません。

藍銅:買ってくれたのうれしいです! この本は好きなもの詰め込んでるから、流血し放題で書きました。

富田:ん、この表紙で? 思ってたんとちがう(笑)

――表紙から察するに、新潮社は『鯉姫婚姻譚』を恋愛物語として売り出してますよね。

藍銅:編集さんから「恋愛描写をもっと足してください」って言われまして。流血とか村がひとつ滅ぶとかは書きやすい部分なんですが、恋愛描写は苦手なんで結構しんどかったですね……。でも編集さんが恋愛描写多めの方が届けたい層に受け入れてもらえるって言っててそれはそうだなと思ったし、婚姻というテーマ上正しい流れだと思ったのでがんばってエモい描写とかを足しました。

富田:プロだ。足せる人プロじゃん。

藍銅:もう恋愛描写書きたくない……。

(一同笑)

藍銅:と言いつつ次も恋愛ものに挑戦しようと思ってまして。いまは新潮社から出す二作目の長編を準備してるんですけど、明治時代が舞台のラブロマンスなんです。

富田:ふんふん。

藍銅:没落した武家の姫君と、日露戦争でめちゃくちゃ儲かった武器商人の息子が出てくる話で……。

(藍銅、次回作の構想を話す)

藍銅:……で、最終的に姫君が××になる。

富田:ん、ちょっと待って。思ってたんとちがう(笑)

ーー:途中で恋愛要素消えてない? それ編集さんのOKもらえたんですか?

藍銅:OKもらえました。……××になるって言ってないから。

(一同笑)

ーー新潮社の二作目は恋愛物語を描いた方が良くないですか?

藍銅:まあそうですね……恋愛描写足したおかげで『鯉姫婚姻譚』は親しみやすくなったと思うし、実際表紙がかわいいから手に取ってもらえた部分は大きいんじゃないかな。がんばって書いた恋愛描写も編集者さんが褒めてくれたし、私が苦手だと思ってる部分に意外と需要があるのかなと。まあ次もどうにかやってみます。

――『鯉姫婚姻譚』のネットの感想とか見ると「ラストが悲しくてつらかった」みたいなのあるけど、でも逆に「このラストが好き」って感想もけっこうあるじゃないですか。毎回そういう賛否両論になる恋愛物語を書く作家として認知されるとよいんじゃないですかね。

藍銅:ああ、毎回賛否両論になればいいのか。それでいこうかな。でも別の出版社から本出すときは血みどろの話を書きます。恋愛と血みどろの両輪でがんばる。新潮社のとは別に、いま準備してるやつに江戸時代末期が舞台のブロマンスがあるんですよ。

富田:いいじゃんいいじゃん。それ気になる。

藍銅:富田さんにはちょっと読んでほしいかも。

富田:読みますよ。二次創作脳だから、勝手にキャストとか考えたい(笑)

藍銅:もしよかったら、本になるときに表紙とか描いてくれませんか?

富田:描けますよ、描けますよ。いいじゃないですか、スクールの縁で仕事につながった! みたいな。

藍銅:よかった! じゃあこの本(『戸村助教授』)、編集者さんに渡しておきます!

――いや、その本は対談の資料として持ってきただけだからあげないよ?

藍銅:え、くれないの?

富田:なんで? あげないの? あげなよ?

藍銅:くれよ。

――それぼく(遠野)がオフィスから持ってきた本だから……。

富田:ゲンロンのオフィスの? それ私が2、3冊送ったやつじゃない? もともと私があげたやつでしょ?

――え……それを言われると弱い……。

富田:(笑)

――……わかった。富田さんもこう言ってるし、この本は藍銅さんに差し上げます。

藍銅:やったー。

――お二人の仕事につなげてください。あとでオフィスにはこっそり同じ本を戻しておきます……なんか本をカツアゲされた気分だ、こんな対談の現場は初めてだよ(笑)

藍銅:あ、これサイン本だ!

――え、これ勝手に藍銅さんにあげたら、ぼくあとで怒られるのでは!?

富田:怒られない、怒られない。

――じゃあ誰かに問い詰められたら「富田は怒らないって言ってました」「富田の指示でやりました」ってぼくは言うことにします(笑)

富田:うんうん。

――ちなみに、対談資料として持ってきた『鯉姫婚姻譚』もありますけど、富田さんはさっきkindleで買ったと言ってたから、よかったら差し上げましょうか? いまなら藍銅さんのサインももらえますよ。

富田:藍銅さんは来期のひらマンに行くんだよね。私、たぶん遊びに行くから、そのときまでに紙の本を買っておいて「サインください」って言いに行きます。

――え。いい人じゃん……。ぼく、いま富田さんにもカツアゲされる流れしか想像してなかった……。

富田:かわいそう……そんな思考になっちゃったんだ。かわいそう(笑)

藍銅:被害者慣れしてんね。

――被害者慣れ!? ……コイツ……よりにもよってカツアゲした張本人が「お前、被害者慣れしてんね」って言ってきたんだけど!

(一同笑)

富田:めちゃめちゃおもしろい(笑)

■2

――そろそろですね、ゆるゆるとスクールの話にも入っていきますよ。いま一瞬話題に出ましたが、藍銅さんは来期のひらめき☆マンガ教室を制作コースで受講されるんですよね。

藍銅:そうです。でもマンガは完全に初心者です。マジでなにもわかんなくて。今日は枠線の引き方から聞こうと思ってiPadを持ってきています。

(一同笑)

藍銅:あとで最初から全部教えてください。

――藍銅さんは、お絵描きアカウントがTwitterにありますよね。

藍銅:猫とかハムスターとかのめちゃめちゃゆるい絵を描くアカウントですね。

富田:小説の作風との乖離を感じる(笑)

藍銅:ちょうど昨日、最初の課題がメールで来たんですよ。それ読んだら、SFと空気が全然ちがうなって思いました。なんというか、課題の文章が明るくて、元気。

富田:マンガだから(笑)

藍銅:あと、「この課題文にはこういう意図があるから、こういう風にちゃんと描いてね」というのがすごい丁寧に書いてあって感動しました。SF創作講座の課題文ってもっと冷たいじゃないですか。「ぼくからはこういう課題を出すけど、これをどう解釈してどういうものを書くかは君たちの自由だけどね」みたいな。

富田:SFの課題は、月一で出される感じ? そこはひらマンと同じ?

藍銅:ほぼ同じですね。マンガ教室のほうが月一でネームを提出するみたいに、SFだと梗概を提出します。梗概は、プロットみたいなものです。それが評価されて選出されたら、じゃあ来月までに実作を書いてきてね、って言われる。

富田:なるほど。

藍銅:こっちだと選出されなくても実作を書いてくるやつがめっちゃいるんですけど、そこはマンガ教室も同じですか?

富田:おんなじです。完成稿は基本みんなやった方がいいよ、出した方が上手くなるよ、って。でも割とゆるくて、出さなかったとしても「なんで出さなかったんだ!」みたいには言われない。

藍銅:ひらマンってクリスタの使い方を教えてくれる授業もあるんですよね?

富田:来期から新しくできたんですよ。ツールとかみんな独学だったんだけど、それだとグループで同人誌を作成する課題で、原稿の入稿サイズが違うとか、ばらばらのデータ形式で描いていたりとか頻発してたから、こういう授業あってほしいなー、やってほしいなー、って飲み会の場で言ってたらできた(笑)

藍銅:そのおかげで私は授業でクリスタ教えてもらえるんだ。やったー。

富田:まあ、もともと予定していたのかもしれないですけどね。

藍銅:現在のマンガ教室のイメージって、明るくて丁寧、みたいな感じなんですけど、割と合ってる感じがしてきた。

富田:そんな感じだと思います。喧嘩もしないし。SFって喧嘩はする?(笑)

藍銅:SFも喧嘩はそんなないかな。

富田:なんかこういう機会、新鮮ですね。おなじ場所でやってるスクールなのに、お互いすれちがうこともないじゃないですか。SFの人たち、本当にいたのか? 見たことないぞ? みたいな。わたしSF創作講座の知り合いが遠野さんくらいしかいないし、遠野さんはSFの人というよりも、喫煙所で会う人だったし(笑)

藍銅:今日会えてよかったです。

富田:遠野さんがやりたいことの第一歩な感じもして、ウフフってなりました。遠野さんはいろんな人をひろくつなげていきたい感じなのかなって勝手に思ってます。

――そうですね。SFとマンガの合同授業を提案したり、そういうことやってくのがぼくは楽しいですね。

富田:合同授業すごいおもしろかったですよ。遠足みたいな楽しさがあった(笑)

――そういわれると確かに遠足感ありましたね。学校行事みたいな。

富田:会場行くのも、駅からけっこう歩いたりして。遠足気分で、みんなでおやつ食べようと思っていっぱい買ってったけど、会場行ったらおやつ食べてる人いないし、そもそもおやつスペースもないし、あ、そっか、遠足じゃないのか、すみませんでした、って思ってた(笑)

藍銅:なんか楽しそう。

富田:楽しかったですよ。合同授業は今年もやるのかな?

――今年もやる予定ですよ。

藍銅:わー楽しみ!

――合同授業の中身もすごい喜ばれたのでうれしかったですね。SFの受講生が自分の作品の紹介文を書いて、マンガの受講生はそこから面白いと思った作品のイラストを描いて。SFの中野伶理さんの作品は、マンガの人が二人もイラストを描いてくれてたんだけど、「中野さんから見てこの絵はどうですか?」って講師から聞かれたとき、中野さんは「言葉にならないくらいうれしいです!」って答えてて、新人賞を獲ったかのように喜んでた(笑)

富田:それ覚えてる! なんかもう恍惚した感じで、「はぁ……」って(笑)

――「あれ? もしかしていま優勝決まった?」って思いそうになるくらいうれしそうだった(笑)

(後編へつづく)



いかがだったでしょうか。途中でぼくが藍銅さんに本をカツアゲされている件ですが、のちにこの縁で、藍銅さんの雑誌連載小説の挿絵を富田さんが担当するという仕事に結びつきました。いい話ですね。

しかし第2クールに入ってとつぜん記事が長くなりましたね。今回と次回だけだと思いますのでご容赦を。

明日の更新は、対談後編をお送りします。
ひきつづきよろしくです。(遠野よあけ)

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