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細部へのこだわりがすごい作品は絶対映画館で観るべき理由

私のTLでは映画館でのスマホ話で盛り上がっているので、映画のマナーとも関連する「映画には映画館で観るべきものがある」という根本的な部分を書いてみようと思います。

「映画館で観るべき映画」で誰もが思いつくのは、アべンジャーズのようなハリウッド大作でしょう。大迫力で超美麗CG、3D、大量のキャストです。これは大正解で、低解像度の2D配信で観るのとIMAX3Dと比べたらその差は歴然です。しかし、映画はハリウッド大作だけではありません。他にも映画館で観るべき作品は沢山あります。

その判断要素の一つとして、ディティール=細部への描写のこだわりがすごい作品は映画館で観ることをおすすめします。というより映画館で観ることで最大限の効果を発揮できるのです。映画館の良い点として『作品の上映時間中は、映画以外の全ての要素を排除する』というものがありまが、これが実はとても大事なのです。

まずは、僕が映画館で観て良かったと思う作品を列挙します。
・山田尚子監督『リズと青い鳥』
-視線と足音だけで描く主演二人の心情描写。正に鬼のディティール。

・トッド・ヘインズ監督『キャロル』
-タクシーについた水滴越しに視線を交わす美しきカメラワーク。煙草の煙った空気感を再現したランチシーンなど、空気を舞う埃までも取りこぼさないかのようなキレキレな細部描写でした。

・ヨルゴス・ランティモス監督『女王陛下のお気に入り』
-自然光のみで撮影したこだわりのカメラワーク。魚眼レンズに望遠レンズと工夫を凝らしたショットは見事。

しかし、これらの細部に観客が心を配るには、家というのは誘惑が多過ぎるのです。ではTVを中心媒体にしている作品(アニメやドラマ)はどうなのか?実は、映画とはこれらは構成そのものが違います。TVは目を離させていけない、チャンネルを変えさせてはいけないという縛りがあり、また同時にながら見にも配慮した作りをしなければいけません。こういった厳しい条件下の中で、カメラワークをあれこれ工夫したり、背景や、音だけで描写をするというのは気づいてもらえない可能性が高く、なかなか実現できないものです。

私は家にホームシアターもありますが、実際にそれで観るときにわざわざスマホをOFFにすることもしません。少しでも尿意や空腹感を覚えたら一時停止して中座してしまいますし、エンドロールを最後まで観るのは稀です。家で観るとは、それだけで散漫な状態に陥りがちなのです。家でも集中できる環境を作り出している人はいるかと思いますが、それは家でもよそ行きの服装をし続けているのと同じくらい、心理的難易度の高いものなのです。

そう考えると、映画館がいかにパリッとした場所か分かってもらえると思います。いやが応にも集中した空間を強制的に作り出す場所として機能するのが映画館なのです。集中することで気づけることはとても多いです。デパートのエレベーター横にかかっている絵と美術館で見る絵とどちらをじっくり見るかというようなものです。

映画館と家での配信動画は同じ作品でも、そこに向かう姿勢は全く別物なのです。単純に設備的な価値だけではなくそういった部分にもお金をかけて行くのだということを知ると、映画の新たな楽しさが広がるのではないかと思います。予告編で細部に目がいったならきっと映画館向けです。

Netflix発の映画「Roma」がイオンシネマで後追い上映され、今でもuplinkでかかっているのはそういった部分が大いにあるのだと思います。
なぜなら細部にこだわっている作品は、映画館でこそ真価を発揮できるからです。

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