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近代イタリア音楽の概要

イタリアの20世紀の器楽音楽は1880年前後に生まれたAlfredo Casella(カゼッラ 1883 - 1947)、Gian Francesco Malipiero(マリピエロ 1882 - 1973)、Ildebrando Pizzetti(ピッツェッティ 1880 - 1968)、 Ottorino Respighi(レスピーギ 1879 - 1936)、 Franco Alfano(アルファノ 1875 - 1954)などの時代に大きな転機を迎えました。彼らはそれぞれ多様だったのはもちろんのこと、多彩な生徒も多く輩出しました。また、彼らの同世代の中でも革新的な音楽を目指したFrancesco Balilla Pratella(プラテッラ 1880 - 1955)、Luigi Russolo(ルッソロ 1885 - 1947)なども忘れてはいけません。つまりこのイタリア近代器楽音楽の黎明期から非常に多くのベクトルが内在していて、到底「一つのイタリア音楽」として語ることはできません。しかし、今日でもイタリア音楽はしばしば外部的な目線、価値観で語られることが多く、一面的な紹介しかされないことが多いです。中には器楽も少し残している人もいますが、オペラやバレエなどの分野で活躍したItalo Montemezzi(モンテメッツィ 1875 - 1952)、Riccardo Pick-Mangiagalli(マンジアガッリ 1882-1949)など他にも素晴らしい多くの作曲家がいますが、器楽曲、特に室内楽曲を多く書いた作曲家に焦点を当ててみたいと思っています。

 これらの世代の輝かしい作曲家に隠されがちになってしまうのですが、 Vito Frazzi(フラッツィ 1888-1975)、Guido Guerrini(ゲリーニ 1890 - 1965)、Mario Barbieri(バルビエーリ 1888 - 1968)、Carlo Jachino(ジャキーノ 1887 - 1971)、Ettore Desderi (デスデリ 1892-1974)、Giorgio Federico Ghedini(ゲディーニ 1892 - 1965)、Mario Castelnuovo-Tedesco(カステルヌォーヴォ=テデスコ 1895 - 1968)、Barbara Giuranna(ジュランナ 1898-1998)、Achille Longo(1900 - 1955)なども続きます。

 また、1880年世代からイタリア近代の器楽音楽は語られることも多いですが、それより前の作曲家も見落とすことはできません。恐らく、まだまだ注目されていない作曲はまだまだいると思うのですが、思いつく範囲で挙げてみると、パガニー二を生で見ているAntonio Bazzini(パッジーニ 1818 - 1897)に始まり、Giovanni Sgambati(ズガンバーティ 1841 - 1914)、Giuseppe Martucci(マルトゥッチ 1856 - 1909)、Vincenzo Ferroni(フェローニ 1858 - 1934)、Ferruccio Busoni(ブゾーニ 1866 - 1924)、Leone Sinigaglia(シニガーリア 1868 - 1944)、Lorenzo Perosi(1872 - 1956)などが挙げられます。オペラ全盛のイタリアでも、器楽音楽の伝統派脈々と養われていたことになります。この中で誰をイタリアの器楽音楽のキーマンとするかは、見方によって意見が分かれるのですが、伝統派、国民楽派ならぬ地域楽派、イタリア的、という要素を兼ね備えた人は恐らくLeone Sinigaglia(シニガーリア 1868 - 1944)のような気がしています。


 その所謂第一世代の次の世代、つまり第二世代とも言われる今回のプログラムの世代には、Luigi Dallapiccola(ダラピッコラ 1904 - 1975)、Goffredo Petrassi(ペトラッシ 1904 - 2003)、 Giacinto Scelsi(シェルシ 1905 - 1988)、Nono(ノーノ 1924 - 1990)、 Franco Donatoni(ドナトーニ 1927 - 2000)、Luciano Berio(ベリオ 1925 - 2003)など早い段階から国際的に知名度が上がった人も多いですが、それは彼らが海外の現代的な書法を積極的に取り入れたことと無関係では無いように思います。この中ではPetrassiは特に一概には語れないのですが、音楽の手法の革新に一定の距離を置いたかのようにも見えるLino Liviabella(リヴィアベッラ 1902 - 1964)、Valentino Bucchi(ブッキ 1916 - 1976)、Otello Calbi(カルヴィ 1917 - 1995)、Giulio Viozzi(ヴィオッツィ 1912 - 1984)、Raffaele Gervasio(1910 - 1994)などはしばらくの間国際的には評価されず、現在も決して十分ではないのですが、主にイタリア国内から国外へ向かって評価が進んでいます。また映画音楽の作曲家として著名なNino Rota(ロータ 1911 - 1979)もクラシック的な曲を少なからず残しており、ここで名前を挙げるのが適当なように思います。彼らと同世代で、さらに伝統派的な、ただ実際は伝統的な書法を少しずつ昇華することを試みた、特に近年のイタリアで再評価が著しいFranco Margola(マルゴラ 1908 - 1992)、Virgilio Mortari(モルタリ 1902 - 1993)、Enzo Borlenghi(ボルレンギ 1908 - 1995)、Elsa Olivieri Sangiacomo(サンジャコーモ 1894 - 1996)、Carlo Mosso(モッソ 1931 - 1995)、Adriano Lincetto(リンチェット 1936 - 1996)の6人を今回のコンサートでは取り上げてみる予定にしています。各作曲家について、作品についてはまたそれぞれの記事を書く予定にしていますが、第一世代との接点についていくつか触れてみます。

 これらのほぼ全員がその上の世代の作曲家、音楽家に音楽院(コンセルヴァトーリオ)などで師事していたのは当然なのですが、特にMortariはこの時代の最重要人物とされるCasellaとオーケストレーションに関する本(La tecnica dell'orchestra contemporanea)の共著を残しています。おそらく、若いときからその才能に注目されていたのでしょう。MargolaもCasellaに注目された作曲家です。Borlenghiは資料があまり残っていないのですがお父さんも作曲家だったようです。もしかしたら1880年世代の方かもしれません。Elsa RespighiことElsa Olivieri Sangiacomo(サンジャコーモ 1894 - 1996)はOttorino Respighiの妻として知られ、夫の活動を支えたため、あまり多くの曲は残っていないとされているのですが、その才能にはすばらしいものがあります。


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