かぜくい小おに

 町はずれに、小さなおにがすんでいました。心のやさしい小おにでした。
 けれどもいつもひとりきり、小さなつのをこわがって、だれも友だちになってはくれません。ひろばでみんながあそんでいるのを、いつもこっそり見てました。
 ある日、小おにはかんがえました。
(にんげんのふりをすればいいんだ)
 ようふくをきて、ぼうしをかぶると、ほんとうに、にんげんとそっくりでした。きばがみえないように口をぎゅっとつぐむと、ちがっているのは、かおがすこし赤いことくらい。
 こうして、小おにはみんなと友だちになれました。いっしょにあそべて、小おにはとてもうれしかったのです。
 ですが、ひろばにあつまる子どもたちが、だんだん少なくなってきました。小おには、
(ぼくがほんとうはおにだから、みんなあそびたくないのかな)
と、おもいました。
 そうしてとうとうだれもこなくなってしまいました。小おにはくやしくなってないてしまいました。ひろばにたったひとりでした。
 その夜、小おにはみんなのゆめの中でいたずらしてやろうとおもいました。
(ゆめの中でみんなをいじめて、もっとこわがらせてやる)
と、おもったのです。
 町じゅうをかけまわりました。夜じゅう、かけまわりました。そして小おにはわかったのです。子どもたちはみんな、ひどいかぜをひいていたのでした。だからひろばであそべなかったのです。
 みんな、まっかなかおをして、くるしそうにねむっていました。
 小おには、かぶっていたぼうしをぬぎました。つのがぴかぴかとひかり、きばがにょきにょきとのびました。こわいこわいおにのかおになりました。
 小おには、ねむっている子どものあたまをしっかりとつかまえると、がぶりとかみつきました。子どもは、びっくりして、目をさましました。それから、小おにをみると、びっくりしてきをうしなってしまいました。
 一晩じゅう、小おには町じゅうの子どもたちのあたまにかみついてまわりました。みんなあまりにこわくて、うなされたりきぜつしたりしました。
 つぎの日、小おにはひどいかぜをひいてしまいました。たった一人で、みんなのかぜをたべてしまったからです。
 ひろばでは、子供たちがげんきにあそんでいます。けれども小おには、赤いかおをもっと赤くしてねむっているのでした。
 とてもかなしそうなかおです。みんなこわがって、もういっしょにあんでくれない、そうおもっているようです。
 けれどもほら、きこえてきます。子どもたちの声です。ひろばにあつまったみんなが、大きな声でうたっているのです。
 
 「かぜくい 小おに
  かぜくい 小おに
  はやくげんきになーれ
  かぜくい 小おに
  かぜくい 小おに
  はやくひろばにでておいで」

 みんな、小おにのやさしいきもちにきづいていたのです。
 そのうたがきこえたのでしょうか、小おにのかおもいつのまにかにっこりとしています。みんなとあそんでいるゆめでもみているのでしょう。
 はやくげんきになりますように。

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