キャバクラに行きたい

 わはは、ラッキーだね。誰のだか分かんないけど、お気の毒さま、こんなに分厚いお財布おっことしちゃって、ホントついてないよね、拾ったこっちはラッキー最強、おかげでこれから飲みに行けちゃうもんね。
 こないだ先輩に連れてってもらったキャバクラ、何だか気に入っちゃって、二か月前くらいか、ずっとまた行きてえなと思ってて、先立つものはとりあえず無いは、優しい先輩は会社の経費の使い込みがばれて遠い小島に流されちゃうやら、このご時世でボーナスも当てになんないし、しばらく行くことはできないだろうなとなかばすっかり諦めてたのにね、はい、ラッキー、とお店に到着。
 センサーで扉が開いて、吸い込まれるように中に入り、くんくんと匂いを嗅いでみるとそれは魅惑のウナギのかば焼き、匂いを嗅ぐだけでそのままご飯が何杯か食べられる、なんてくらいの魅惑のかば焼き、あ、違う、それじゃ蒲蔵、ウナギの倉庫、行きたいのはキャバクラ、キャバクラだってば、って、あれ? どんなんだっけかな、と考え込む。
 あれ? 気に入ってたんじゃなかったか、また行きてえと思ったのは嘘か、優しい先輩、島流しの先輩と一緒に行ったあの店は、そもそもそんなことはあったのか?
 ぐーるぐーると色々思うけれど、さっぱり要領を得ないので、ま、手にしたお財布の厚さだけを酒の肴にしようと、手にしたものを見つめると尾頭付きの鯖、目が死んでる。
 生臭いねえ。
 なんだかね、走るかね。
 走らなきゃ、かな?

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