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植物を育てる(14)by立花吉茂

野生樹木の種子採取と貯蔵
 杉や桧の造林と違って自然林の復元のための育苗は、種子の採取が大変な作業であることを前号に記した。今回はその貯蔵方法について述べよう。まず、乾果、液果と殻斗果の3グループに大別する。
 
乾果の類
 多くのマメ科、マツ科、アオイ科、カエデ科などで、成熟した種子を日陰でよく乾燥し、紙袋に入れて、低温、暗黒に近い条件の場所に置く。注意することは、虫の存在である。マメ科では、コクゾウムシが種子に卵を生みつけていることが意外に多い。一昼夜水に浸し、浮いたものを捨てる。虫がいることが確認できたら燻蒸殺虫せねばならない。密封できる容器に種子を入れ、二硫化炭素、クロールピクリンなどで一昼夜燻蒸する。種子を蒔くのは翌春である。硬実種子は水浸してふくらんだものだけを蒔き、他の種子は硫酸か熱湯で処理してから蒔く。
 
殻斗果の類
 クリ、ツバキ、シイ、カシの類で、いわゆるドングリ類である。これらは乾燥すると死ぬから、採集後速やかに水洗し、すぐに苗畑に取り蒔きするか、春まで貯蔵する。木箱に砂と種子を混ぜて入れ、箱のまま土中に埋める。翌春取り出してフルイにかけて種子をより出して蒔く。二重のビニール袋に入れて貯蔵することもできるが、黴が生えたりするから、ときどき水洗してやる必要がある。5℃前後の冷蔵庫に蓄えるのが安全である。この類の種子はでんぷん質のものが多いので、ネズミなどの食害が多いから蒔いた直後は十分に注意する必要がある。
 
液果の類
 種子の周りに果肉のあるもので、しばらく後熟させてから果肉を取り除き、取り蒔きするか、蓄える。大きい種子は殻斗果と同様でよいが、小さい種子はビニール袋に入れて乾燥を防ぎ、低温(2~10℃)で貯蔵する。この類は休眠種子が多く、低温で2~3か月置くと休眠が破れる種類が多い。いずれにしても乾燥すると死んでしまうから保湿に留意せねばならない。モチノキ科の植物は後熟種子で、翌年には発芽しない種類が多いから注意する必要がある。翌々年に発芽するから取り蒔きの場合には除草の時に種子を浮き上がらせないように注意せねばならない。
 
前処理
 硬実種子、休眠種子は蒔く前に発芽促進処理が必要であるが、これについては昨年の春季に記述したので植物を育てる(6)をご覧いただきたい。
(緑の地球82号 2001年11月)


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