南天門自然植物園の現在 by 高見邦雄(GEN副代表)
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5年ぶりに訪れた南天門自然植物園。木々は大きく育ち、日陰斜面も日向斜面もそれぞれの特徴を発揮しています。自然の森林再生を主に、人がそれを応援した理想的な姿だったと思います。
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緑の地球ネットワークは1992年1月から25年間、山西省大同市で緑化協力事業に取り組んできました。建設した緑化プロジェクトは200か所あまり、植えた苗木は1900万本、面積5900haにのぼります。2017年からは東隣りの河北省張家口市蔚県に場所を移して協力事業を継続しています。
2024年4月、蔚県での日程を終えてから大同市にまわり、最初に霊丘県の南天門自然植物園を訪れました。なんと、5年ぶりのこと!
私の立場としては、どのプロジェクトも同じようにかわいい、と言わなければならないでしょうが、残したいものを1つだけ選べ、となると、迷うことなくここ。
面積は86haですが、低いところは900m、高所の南天門は1318mで、高低差は400mあります。4つの谷筋と4つの稜線があり、地形は十分に複雑です。多くの種類の植物を育てるにはそのほうが都合がいいという、立花吉茂先生の意見に従って選びました。
1999年春に着工し、25年になりますが、もっとも目立つのは高所の日陰斜面(陰坡)でみごとに森林が再生していることです。李向東以下5人のスタッフが、近くの自然林にはじまり、河北省、北京市、内蒙古自治区などに足を延ばして種子を集め、苗に育てて植え広げました。しかしそれは管理棟近くの低いところで、1100mを超える高所は自然に再生してきたものです。
代表的なのはナラ、シナノキ、カバノキなどの落葉広葉樹で、大きなものは樹高15mまで育ってきました。長年にわたって柴刈りや放牧が繰り返されてきたところで、地上部はなくなっても、根株は残っており、回復が速かったのです。
困ったのはこれまでと同じ場所、同じ方向で写真を撮ろうとしても、立ち木がジャマ(!)になって、撮れないこと。なにかいい方法を考えないといけません。
それにたいして日向斜面(陽坡)は植生の回復がむずかしく、出発時は樹木はもちろん草も生えていませんでした。そのために雨で土が流され、岩盤がむき出しになる悪循環です。それでも年月を重ねるうちに草や灌木が増え、緑に変わってきました。おもしろいのは、植物の種類は日向斜面のほうがずっと多く、地元のスタッフによると、敷地内で82科523種の植物が確認されていますが、その多くは日向斜面のものです。
私たちは大同での協力を2016年で切り上げ、それ以後は東隣りの河北省張家口市蔚県に場所を移しました。南天門自然植物園の管理を地元の上寨鎮政府に委ね、数年は従来のスタッフが管理していましたが、彼らも70歳を越え、管理は手薄になりました。
敷地内には南天門の稜線までのコンクリート階段道があり、1100mのところから水平に伸びる観察道があります。道の側に植えたアブラマツなどの横枝が伸び、道が崩れているところもあり、とても歩きにくいのです。年齢のことも考えて、私は1100mまで登り、それから先は諦めました。でも、人が入りにくいということは、樹木にとって悪いことではありません。
そして、人工的に植えた林は枝打ちや間伐などに人手をかけないと育つことができません。ところがここに再生している林は、話がべつ。この先、育ちが悪くて、隣の木の陰になり、弱って枯れるものがでてきても、それは自然の摂理によるもので、その過程が森林再生を研究する貴重な材料でしょう。