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植物を育てる(4)by立花吉茂

休眠性種子
 休眠性種子は液果(種子の周りに果肉のあるもの)に多い。樹木を例にすると、バラ、リンゴ、ナシ、サクランボ、ウメ、サクラ、アンズ、スモモ、シャリンバイなどバラ科の植物に多い。モチノキ科のウメモドキ、フウリンウメモドキ、アオハダ、ナナミノキ、ソヨゴ、クロガネモチ、モチノキ、シイモチ、タラヨウなどは、液果ではあっても休眠ではなく後熟性種子(後述)である。
 休眠性種子は、温帯、寒帯などでは冬の間休むように仕組まれたものが多く、日本の気候では3~6カ月間休眠するものが多い。また熱帯では乾季・雨季のある地方で、乾季の期間中休むものがある。したがって、湿潤地帯では、休眠するものは比較的少ない。
 液果の種子の果肉には発芽抑制物質が含まれ、果肉が腐ってしまうのに数カ月かかるから、ちょうど休眠が破れたころに春になるわけである。鳥獣に食べられた果実は、種子が糞とともに排出され、乾燥しなければ発芽能力があり、遠くまで分布を広げるのに役立っている。
 
休眠打破の方法
 温帯の休眠性種子の休眠打破には冬の条件を早く与えると早く休眠が破れるから、温室などに蒔いて早く育てたいときは冷蔵庫を用い、2カ月ほど2~6℃におく低温処理が良い。
 果肉のついたまま、土に埋め、春に掘り出して蒔いても生えるが、発芽不揃いの傾向があるので、着色した果実を1週間ほど後熟させ、手でもんできれいに水洗し、乾燥しないようにビニールの袋に入れて低温の場所におけば良い。また、きれいにした種子を「取り播き」してもよい。取り播きとは、種子を貯えず、すぐに苗床に蒔くことを意味する。
 薬品処理は、多くの薬品が使われるが、植物ホルモン系の薬品を使うことが多い。オーキシンやジベレリンAがもっともよく使われ、30~300ppm程度の濃度に数時間浸し、水洗してから蒔く。除草剤を薄くして使うこともある。また、低温処理とホルモン処理を組み合わせてやることもある。硬実・休眠両方持つ種類では、硫酸処理して後、ホルモン処理をおこなう。
(緑の地球70号 1999年11月)


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