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森と人とビジネスと(3):日本における燃料材需要の推移 by 長坂健司(GEN事務局)

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木質バイオマスの需要の推移は、今後の日本における木材利用にとって重要です。近年の需要の増加は木質バイオマス発電や熱利用に由来します。発電所の規模は、収益性と燃料調達先の考え方が影響しています。
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 さて、木質バイオマスの利用は、日本全体の木材需要のうちどれだけのシェアを占めているのでしょうか。図は、1955年から2020年までの日本の木材需要の推移を示したものです。林野庁が毎年、森林・林業白書の中で公表しています。このうち、一番上の水色で示されている部分が木質バイオマスの利用に相当する燃料材の需要の推移です。1955年時点では、おおよそ3割を燃料材が占めていましたが、その後1960年代に入ると燃料材の需要はどんどん減っていきます。家庭での薪炭需要がガスなどに置き換わっていったことがその原因です。「燃料革命」とも呼ばれます。その後は、虫眼鏡でなんとか見えるぐらいの需要で長年推移しましたが、2010年代の半ばから再び需要が増え出しました。この需要増の原因は、木質バイオマス発電や熱利用によるものです。

 林野庁が公表している平成30年木質バイオマスエネルギー利用動向調査結果によると、木質バイオマスを利用する発電機の数は290基です。その発電の規模は大小さまざまですが、それには理由があります。一般的に、発電事業はその規模が大きいほど、キロワット当たりの費用が安くなります。木質バイオマス発電も同様です。そのため、大規模な木質バイオマス発電所がいくつも稼働しています。昨年竣工した福岡県の苅田バイオマス発電所は、出力規模約75メガワット、年間約17万世帯が利用する電力の送電が可能です。ただし、大規模になるほど、海外からの輸入を含め、遠方からバイオマス燃料を調達しなくてはなりません。

 一方、2000キロワットに満たない小規模な木質バイオマス発電所も数多く存在します。これらの発電所の多くは、比較的近隣からの調達で燃料材を賄える設計になっています。キロワット当たりの費用は高くなるので、発電だけでなく熱の利用も併せて行うなど、収益性を高める工夫が必要です。

 このように木質バイオマスの利用は、今後の日本での木材利用のあり方を考える上でとても重要です。そこでGENでは、GENなんでも勉強会オンライン「木質バイオマスことはじめ」を企画しました。2023年1月19日(木)19時開始、参加費は無料です。多くの方の参加をお待ちしています。詳細はGENの会報やホームページ等で確認下さい。(続く)

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