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森と人とビジネスと(7):製材工場 今昔 by 長坂健司(GEN事務局)

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林業だけでなく製材工程でも機械化が進んでいます。今回は、現代風の製材工場がどのような様子かを紹介します。
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 製材は、昔から世界中で行われていました。木材は建材として古くから使われてきたので、当然といえば当然です。下記のイラストは、中世ドイツの製材の様子ですが、このように人手で製材する時代が長く続きました。
 


 機械による製材が日本で始まったのは19世紀半ばです。1861年に江戸幕府がオランダから製材機械を長崎造船所に導入したという記録があります。日本ではそれから100年ほど、小規模な製材所が多く動いていましたが、現在、その数はかなり減っています。このような小規模な製材所は、役物(特定の用途でのみ用いる建築材料)などの単価の高い木材を挽くことが多いのですが、そのような役物の需要が減っているのが原因です。また、このような製材所で多く使われている帯鋸の目立て職人がほとんどいなくなってしまったことも課題であると聞いています。

 日本でも欧米でも、このような大規模な製材工場が一般的になりました。その理由は、コストダウンです。特に近年では、国内でも、住宅や家具があらかじめ規格の決まった材で作られることがほとんどです。

 住宅の建て方は、昔とは大きく変わっています。今、腕の良い大工が腕を振るって建てる家はほとんどありません。あっという間に古い住宅が更地になり、そこに小さな木造住宅がいくつも建つ様子がよく見られますが、このような住宅は、規格材をプレカットしたものを現場で組み立てるだけなので、傍から見ていると工作のようです。

 大規模な製材工場では、自動化が進んでおり、建物は大きいですが労働者はかなり少人数です。原木からどのように板を取るかが、製材における歩留まりを決める重要な工程なのですが、このような大きな工場では、そこで人の目が入ることはありません。
 現代風の製材ラインは、下記のYoutubeをご覧いただくと分かりやすいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=vft6IlJXgUM
 
 ここ10年程、国内の大手製材メーカーが、スギやヒノキといった国産材を取り扱うことが多くなりました。さらに最近は、大手製材メーカーが自社で山林経営に取り組む例が増えています。製材メーカーが山林経営に取り組む理由は、原材料の確保という理由はもちろんありますが、単に原木を確保したい、ということではなく、原木の出どころが確実に分かる、という理由もあるようです。

 世界的に見て、現在の木材流通の最大の課題は、違法伐採の撲滅です。日本でもそれは例外ではなく、例えば宮崎県では違法伐採の事例がいくつも報告されています。違法伐採対策として、木材流通にかかわる企業が積極的に取り組んでいる「トレーサビリティ」の現状については、改めてご紹介したいと思います。
 

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