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植物を育てる(5)by立花吉茂

硬実休眠型種子
 前記の硬実型と休眠型をあわせもつ型で、いまのところはヤマウルシだけしか見つかっていない。ヤマウルシは取り播きしても翌年春に少し生えるだけである。硫酸処理をするといくらか発芽率が上がる程度であるが、処理後1ヶ月以上低温におくと高い率で一斉に発芽する。低温処理だけでは発芽率はきわめて低い。

後熟型種子
 種子をふくむ果実が熟しているように見えるが、実際には未熟で発芽力がなく、親木から離れて後、時間経過によって成熟して発芽力を持つようになる。いまのところ、モチノキ属植物の多くの種に見られるだけである。親木から離れて一定期間休む休眠型とまぎらわしいが休眠型種子はすでに成熟しているので、休眠打破すれば発芽させることができる。後熟型では未熟なので熟するまではどうしても発芽しない点が異なる。
 クロガネモチのような常緑性の種は、沖縄に分布し、そこでは後熟性を持たず、すぐに発芽する。そこでは開花から成熟まで1年かかっているが、近畿地方では開花から半年で冬がきて果実が色づいてしまう。そこで成熟まで日数が足らず、もう半年後熟になるのであろう。モチノキ属植物は液果であるから、果肉をきれいにとって乾燥させないように貯蔵する必要がある。
(緑の地球71号 2000年1月掲載)

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