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沙棘(サージ) by 高見邦雄(GEN副代表)

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 人手をかけて植えるのも必要ですけど、できることなら自然の力で広がってほしいものです。そのような可能性をもつのが今回の沙棘(サージ)です。
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 張家口市蔚県での緑化協力、来年、なにを植えるか相談中ですが、現地から「沙棘(サージ)を植えたい」と言ってきました。うわー、なつかしい!

 グミ科の樹木で、学名はHippophae rhamnoides subsp. sinensis。幅広い環境に適応し、乾燥が厳しいと灌木になり、水条件に恵まれると樹高3~4m・直径15cmの小喬木になります。
 放線菌・フランキアと共生することで、空気中の窒素を固定し、自力で肥料分を補給できるため、ひどい痩せ地でも育つことができます。根にたくさんのコブがあるのがそれで、マメ科の根粒菌のように働きます。
 ほかの樹木を植えるのが困難な荒廃地で、土壌浸食をくい止めるための貴重な樹種として利用されてきました。これを植えることで、土壌が改良され、やがては他の有用植物を育てることも可能になります。


 秋になると、アキグミくらいの大きさの、オレンジ色から赤に近い実をびっしりと着けます。食べてみると、かなり酸っぱいのですが、冬に凍ったり融けたりを繰り返すと甘くなります。
 この実にはさまざまな栄養・薬用成分が含まれているそうで、中国ではジュースに加工したり、薬材にしたりします。とくに種から搾った油は貴重だとききました。それにしても、こんな小さな実をどうやって集めるのでしょう。枝ごと切ってきて、寒さで凍らせると、実だけが簡単にはずれるそうです。それにしても、冬に仕事がなく、人件費が安い黄土高原の農村だからできることでしょう。逆にみれば、農村経済の助けになる。
 立花吉茂先生がこの沙棘に関心をもたれ、大同市南郊区に開いた協力拠点=環境林センターに、その見本園をつくりました。で、私は大同の西隣りの朔州市右玉県にあった沙棘研究所を訪ねたことがあります。さらに寧夏回族自治区銀川市の沙棘研究所とも連絡をとって、ロシアやモンゴルのものを含め20種以上を集めたのです。


 野鳥にとって沙棘の実はいいエサです。そして彼らは肥料(糞)といっしょにこの種を蒔き広げてくれます。蔚県では野鳥保護の活動もはじめていますので、その点でも意味があります。そして、この木を植える予定の陽眷鎮白草坡村は、土壌浸食が激しく、浸食谷がたくさんある厳しい環境にあります。自然の力で緑が広がっていくのは、とてもいいことです。
 そして沙棘の名のとおり、鋭いトゲがあります。私たちの重要プロジェクトを放牧のヒツジなどから守るため、柵の代わりにこの沙棘をズラーッと植えたことがあります。


 ところで最近、自宅近くの園芸店で、これと同列の苗木が売られているのをみました。なんとその商品名が「ロシアンオリーブ」、人の背丈ほどもある苗ですけど、1本が6480円もします。
*沙棘に従来ヤナギハグミの和名をあてていましたが、これが沙棗(Elaeagnus angustifolia)にも使われているようなので、誤解を避けるため今回は和名を使いません。

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