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ドラゴンラージャの私的偏愛ポイント備忘録

この記事は集え!#ドラゴンラージャ電子版復活ありがとう の祭り Advent Calendar 2023 の20日目の記事です。

昨日は池田りるはさんの記事でした!私事ですが、直近ではじめてTRPG(狂気山脈)を遊んで「TRPGおもしれ~」ってなったので、確かにドラゴンラージャの舞台でキャラ設定もちゃんと作ってトークしたら最高に面白そうですね!

さて今回のイベントですが、過去に自分が夢中になって読んだドラゴンラージャのAdvent calendarが開催されていたので勇んで参加しました。旅とドラゴンと剣と魔法と、ファンタジー小説の魅力を全部乗せして、独特な哲学をふりかけたような作品、ドラゴンラージャの魅力をひとことで語るのはとても難しいので、「ここめちゃくちゃ好き!!」って断片を寄せ集めて語ってみようと思います。

※ネタバレを含むため未読の方はご注意。
※中学生のころに一気読みして、最近になって再読しました。


ドラゴンラージャの私的偏愛ポイント

読んでいた時に「ここいいな~」って思ったポイントを書いていきます。

・おしゃれすぎる章タイトル

「やかんと頭の比較」「星は見つめる者に光をくれる」「前をみるがうしろを考える」などなど、直球すぎず少しひねってあって、ちゃんとタイトルの説明も本文中でしてくれる章タイトルがめちゃくちゃ良い。

・旅の醍醐味

主人公は物見遊山で旅に出るわけではないんですが、各地を回る中で旅の味を知ります。

「この仕事がうまくかたづいたら、大陸のあちこちを渡り歩いてみたいな」
「旅の味を知ったな、こいつ」
「うん。こうやって村をでてこなかったら、オレは〈十二人の橋〉という神秘的な場所も知らずに人生を終えたはずだ。大陸にはほかにも、オレの知らないすごいものがもっとあるんだろうな」

こういうの読むと旅に出たくなる。

・皮肉とユーモア

ドラゴンラージャは、何を言えば人を効果的にからかえるか、実にわかりやすく読者に教えてくれます。

うしろでサンソンが、ばかみたいに口笛をふいた。
「ヒューヒュー。立ちよった村ごとに、恋人ができるんだな」
「からかいやがって!」

サンソンは嬉しそうに、そう、故郷でオレがいつもそうやってきたように、歌をうたいはじめ た。この機会をねらっていたのか、その声は歓喜にふるえている。
「レナスのユスネは。ああ、彼女の心を盗んで逃げだした。カーライルのエデリンは。ああ、おそれおおくも、彼女の胸に抱かれた。イラムスのメリーアンは。ああ、ついにベッドにひきずりこんだ。おお、偉大なる冒険家フチ・ネドバル」

あとは、随所に出てくる、カールが「外交的に」相手を当てこするのも好き。カールの迂遠な皮肉で国王がピキピキするシーンとか笑ってしまった。

・職人技に対する敬意

主人公がロウソク職人だからこその視点だと思うけど、随所に職人に対するリスペクトが感じられるのが良い。

そのコックはフライパンとフライがえしを見事にあやつっている。めんどうくさそうな目つきと、いいかげんなしぐさだが、ステーキが落っこちて油がはねることはない。こげつかせるなんて考えられないくらい、なめらかな動きだ。やはりどんな技術でも、達人になれば無造作にやっているように見えるもんなんだ。完全に手が覚えてしまっている。

オレの親父がロウソク型に煮こんだ脂を注ぐときも、こぼれようがあふれようがどうってことないと、いいかげんにやっているように見えた。だが絶対にこぼすことも、あふれさせることもない。一方、オレがロウソク型に脂を注ぐときは、それこそ真剣な表情だ。山奥に閉じこもって修行する聖職者に劣らないくらいの真摯な態度でのぞんでいる。にもかかわらず、しょっちゅう、こぼしたりあふれさせたりしてるんだ。

・壮大な伝説と等身大の人間

ルトエリノ大王とドラゴンロードの戦いのような、スケールの大きい伝説は読んでいてわくわくします。その一方で自分は、ペレールが土を耕して50人の子の面倒を見たような、現実味のあるエピソードに惹かれます。

「五十人の子らと大魔術師ペレールの話を歌にして、大陸のあちこちに広めてくれませんか」
「ぷはははは」
クライルがふきだした。ターカーの顔にも笑みが浮かび、サマンダは感心したようにペレールを見つめている。ペレールはにこにこしながら言う。

「大陸には〈十二匹のドラゴンと大魔術師ハンドレイク〉〈百人のデスナイトと虹のソロチャー〉といった壮大な物語ばかりが広まっています。なんと暮らしにくい世のなかでしょう。〈五十人の子らと大魔術師ペレール〉のような素朴な歌が、暗い酒場の片すみで歌われたら……………。そして、 その歌を聴いた客たちが柔和な表情で、心あたたまるいい歌を聞いた、と胸を熱くしてくれたら……。悪くないでしょう?」

もちろん、ペレールのしたことがスケールが小さいなんて言うつもりはないです(十分すごい偉業だと思います)。

・人が成長するさまを見れる

長い旅のなかで、登場人物たちは成長を遂げます。フチはカールの知恵や各種の伝説から学び、イルリルは人間を知って友となる。個人的に好きなのは、見掛け倒しのいんちき魔法使いから更生したアフナイデルが、見栄を貼ることをやめ、自身の魔力でできることに目を向けはじめるシーンです。

「私は、お師匠さまもごぞんじのとおり、微力な才能しかありません。しかし、彼らは私の微力な才能を思うぞんぶん発揮できる機会をくれます。そしてその少年は、高級な魔法でなくても、助けになる魔法が最高だと言ってくれたんです。私は・・・・・・私ははじめてでした。 私が誰かの役にたてるということ・・・・・・見かえりを求めずに、純粋な善意で、私の魔力を使えるということ・・・・・・」

・王道の「行きて帰りし物語」

物語の類型のひとつに「行きて帰りし物語」というものがあります。ざっくり言うと「主人公が日常世界を離れて、それまでまったく縁がなかった人たちと出会い、様々な経験をして成長し、一回り大きくなって有形無形の宝物を得て日常世界に戻ってくる」というストーリー展開のことです。

ドラゴンラージャはこの「行きて帰りし物語」の魅力を存分に味わえる作品だと思ってます。ヘルタントの片田舎の少年が故郷を離れて旅に出て、各地を回って、数々の魔物やドラゴンとやり合って、セイクリッドランド、永遠の森、大迷宮、褐色山脈…数え切れないほどの冒険を経て、成長を遂げて帰ってくる。

帰路で、行きの旅で出会ったさまざまな人(レディー・ユスネを除く)と再会するシーンが、行きて帰りし物語の一番おもしろいところだと思います。フチは旅を通して、爵位だの宝石だの領地だの、有形無形の富を得たんですが、これを惜しげもなく他の人に与えてしまう。そのうえ「これは善人ぶった行為じゃなくて、自分のためにやってるんだ」というスタンスでいるので、なんとも格好いいですね。

・その他、細かいけど好きなポイント

・ときおり挿入される「上品で気高いケンタン市長マレス・チュバレクの助力で出版された、信頼されるバイサスの市民 でありケンタン史料官として奉仕した賢明なトロメニ・アップシリンガーがバイサスの国民に告 げる神秘的でありながらも価値ある話」。サンソンがめちゃくちゃ美化されてて笑ってしまう。
・定期的に現れる執念深いオークたち
・はじめてコーヒーを飲んだフチが「毒を盛られた」と誤解するシーン
・シリキアン男爵の両足をつかんでベランダからぶら下げて左右に行ったり来たりするフチ
・男爵から馬を失敬して「ラショナルセレクション(合理的選択)」と名付けるイルリル
・ウンチャイとネリアがフチを伝言役にして口喧嘩するやり取り

まとめ

読んでる途中はこんな小難しいこと考えてなくて、「ネリアかわええ〜」「ウンチャイかっこええ〜」ってテンションで読んでました。ってか記事書いてたら普通にまた再読したくなってきたな。

余談ですが、ドラゴンラージャ発売当時の読者の声を見る機会がありました。「続刊が待ち遠しくて死にそう」とのこと。

ドラゴンラージャの続刊の発売をリアルタイムで待ってた子は、それこそ一日千秋の思いだったんだろうな…。それはそれである種とても幸せな時間だと思うけど。

まとまらないですが、今回の記事は以上です。明日はトロメニさんの記事の予定です!このあとの記事もお楽しみください!!

最後までお読み頂きありがとうございました!