鳴り止まない脳内ミュージック

気に入った曲をリピート再生して聞きまくっていると、いつしかその曲を聞いていないときでも脳内でその音楽が流れるようになる。これをとりあえず脳内ミュージックと呼んでみる(検索したら、イヤーワームというらしい)。

もちろんそれは好きな曲だから不快ではないんだけれど、読書や、文章を書くなど言葉を扱うことをしているときに限っては、脳内ミュージックはノイジーなものになる。

音楽は耳で、文章は目でとらえるものだけれど、脳内に入ると言語という同じ単位のものになって同居する。同居人どうしは折り合いが悪いらしく、喧嘩をはじめる。自分が脳内で考えている文章と、曲の歌詞が重なって、思考がごちゃごちゃになってしまう。考えている文章の言葉がまとまりを失って、雑然と散らかっていく。

この脳内ミュージックは、音楽プレイヤーの停止ボタンを押すように簡単に止めることはできない。しかし文章に集中したいときにはどうにかして止める必要がある。

解決策は2つあって、ひとつは脳内ミュージックが鳴り止むまで時間をおくこと。音楽断食。ただこれはいつ鳴り止むか分からないし、鳴り止んだと思ったら、ふとしたワードをきっかけに他の曲が流れ出したりするから、なかなか容易じゃない。

もうひとつは、歌詞のない曲を聞いて、脳内ミュージックを上書きすること。これはわりと有効にはたらく。ただしアップテンポの騒々しい音楽はかえって集中力を削ぐから、スローめのさりげない音楽がいい(カフェとかでそういう音楽を流しているのは作業に集中できる効果があるからだろうか)。これを実践していくうちに、素晴らしいインスト曲をいくつも知ることができて得した気分になった。

きっと音楽は麻薬みたいなもので、一度その刺激を覚えた人間は離れられない。音楽によって、人間はたやすくハイになれる。中毒症状にもなる。ただし、静かな環境でものを考えないといけないシチュエーションは必ずあって、そんなときに音楽の沼にはまって慢性中毒になっていると、脳内でクリアな思考を保てなくなる。

きっと音楽を日常的に聞かない人は、静かで凪いだ海みたいな思考環境を持っているのだろう。それは少しうらやましいけれど、自分が音楽を聞かない生活をずっと送れるかと問われれば、それは無理だ。

NO MUSIC,NO LIFEなんて言葉があるけれど、人間は音楽がなくても肉体的に死ぬことはない。しかし音楽のない世界は、一度その鮮やかさを知った人間にとっては、きっと味気ない灰色の世界だろう。

だから音楽に対しては、どっぷりハマって溺れるでもなく、潔癖にはねつけるでもなく、つかずはなれず、時々背中を押してもらったり、まれに寄っかかったりするくらいの関係性が理想的なんじゃないかと思う。

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