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盆花を代表する「ミソハギ」

「千屈菜」の名で知られる下痢止めの生薬

日本では古来より伝統行事が大切にされてきましたが、昨今は季節との結びつきが薄くなっているようです。しかし、お盆(盂蘭盆会)の行事だけは昔と変わることなく月遅れの旧暦に近い日に行われています。
お盆の時期に仏前に欠かせないのが、盆花または精霊花です。
植物学者の丸山利夫先生は、お盆の仏前に供える花の条件を次のように挙げています。

1 野生の草本が多い
2 お盆の頃に咲き、色が鮮やかである
3 比較的咲いている時期が長い

こうした条件においてミソハギは盆花にふさわしいといえます。ただ、近年はミソハギを目にする機会が減っており、盆花として飾られることも少なくなっています。また、昨今は栽培品が主流となり、野生種を主とした盆花の地位が落ちているようです。
ミソハギはミソハギ科の多年草で、本州以南のやや湿った場所に広く自生します。高さは1m前後、茎は地下茎から直立分枝し、細長い葉はほとんど葉柄がなく、対生しており、尖った披針形で基部が狭くなっています。夏の頃、葉腋に小さく短い集散花序をつけ、紅紫色の小花をつけます。ミソハギの仲間のエゾミソハギは、茎、葉ともに細く、細毛が密生しているので区別できます。

盆花の代表といわれるミソハギは、お盆に関する詩歌が多く見らます。

みそ萩の 花さく溝の 草むらに 寄せて迎火 たく子等のをり

若山牧水

みそはぎや 水につければ 風の吹く

小林一茶

牧野富太郎博士は植物名について、「ミソハギは禊萩の略であると言われ、溝に生えるハギ、即ち溝萩とするのは誤りである。漢名は千屈菜」と述べています。ただ、植物名については諸説あり、一般に広く伝わっているのは、お盆の精霊祭に用いることから「禊萩」の略で、「みそぎ萩」がミソハギになったという説です。あるいは、水辺に生えた花が萩に似ていることから「ミズハギ」が転じてミソハギになったという説もあります。

別名には「精霊花」「盆花」「盆草」「霊の屋草」など、お盆に関係する名前があります。精霊棚に水をかけるために使う花であることから「水掛草」の別名もあります。江戸中期の国学者である天野信景の随筆集『塩尻』(1687年)の中で、「昔の医書にこの植物は咽の渇きを止めるのに効くとあるから、亡者たちの渇きを癒すために、この草で水を掛けるようになった」と記しています。ほかにも、萩に似て小さいことから「微萩」、花穂を鼠の尾に見立てて「鼠尾草」などの別名があります。

学名はLythrum ancepsで、属名はlytron(血)を意味し、花の色に由来します。種小名は二稜形で、茎の形を示しています。
薬用には、花の終わる頃の全草を用い、生薬「千屈菜(せんくつさい)」として下痢止めや腸カタルに使われてきました。
花言葉は「悲哀」です。

出典:牧幸男『植物楽趣』

盆花を代表する「ミソハギ」

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