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外出自粛期なので「帚木」を読む(2)


こんばんは。第二回・自粛してる窮屈な気分を「物忌み」に見立てて『源氏物語』の「帚木」を読む会です。

梅雨で宮中待機が続く頃、一日雨に降りこめられた、そんな宵。光源氏は上級の男ですから、そんなときも優雅な雰囲気が文面にまで溢れ出てるのです。

・読者として、光源氏との距離感


あ、読者としての光源氏との距離感なのですが、彼についてはイメージしにくい部分はあるのですが、素面で「よくわからない男」を見る態度と、紫式部先生の新作を楽しみにしていたであろう当時のギャルたちがしてたかもしれないように「最高の王子様」を映し出すような眺め方とを行き来しながら読んでいます。ここはいちおう、彼が素敵な感じに描かれてて物語の初めのほうなので、素敵さをイメージしようとしています。

・頭中将に手紙を見られる


宵になっても雨は降り続き、しんみりと、まったりとしています。灯をともしてーー枕草子を読んだときの感じだと灯をともすのは豪勢なことのようでしたーー、なんとなく本(漢籍)を読みつつも、周囲には女たちからの色とりどりの手紙(この頃は紙へのこだわりからも女らしい趣味のよさが伝わるようなのです)や、そんな手紙を入れとく手紙箱が置いてあったりするんです。光源氏は白く柔らかい気楽な服装をしています。手紙を引き立てるかのような配色。

で、ここで、仲の良い年上のオニイサン、政略結婚した年上妻の兄でもある、頭中将がやって来ます。女たちからの恋文を拾って
「これはAさんで、こっちはBさんからかな」
「煮詰まってるヤツを読みたいんだけど」
などと構います。

・人物の描き分け


ところが、そもそも光源氏はホントにヤバイ手紙はそもそもこんな人目につきそうな場所に保管したりしないんです。だからその辺に出してあるのは見られてもいい、いわば二軍の手紙。

それを「オニイサンの手紙も見せてくれたら、ワタシのも見せてあげますよ?」なんて駆け引きしてみる。

光源氏、怖いですね。自分のほんとの恋バナは隠したまま、相手の恋バナには興味を示す。まあ、彼の場合、ホントに言えない恋もあるんですが。

また、ここで見せて欲しがる頭中将は、手紙の管理はヤバイのも安穏なのも一緒くたかもしれない。ところが、光源氏は隠し手紙箱が三段階くらいはありそうです。

むかし、京都の老舗を舞台とした漫画で、こんな場面を見たことがあります。結婚するにあたって「はい、これが通帳」「さまか通帳一冊て訳は無いですよね」「こっちが隠し通帳、もう秘密はありません」と言いつつも、実はまだまだ別の隠し口座があるという。そういう京都っぽい(京都に住んでたことないの持つ京都民のイメージです)用心深さを、光源氏は持っているのかもしれません。

ちょっとダークな魅力を感じさせるひとこまでした。

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