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全ては愛する彼らが幸せでいる為の決断だった

BTSというグループ、私の中では非常に珍しいアーティストだ。


今までに出したアルバムは日本バージョンを除いても15個以上ある。デビュー9周年にしてはかなり出している方ではないか。

私は元々アイドルではなくロックバンド界隈に居たのだが、年に2回以上もアルバムを出すなんてあり得ない。少なくとも私が知っている中でそんなバンドは居なかった。

そんなBTSのアルバムには、必ずコンセプトが存在する。もちろん自分達も制作に参加する。歌詞に関してはほとんど彼ら自身の言葉である。

まずそれぞれのアルバムのコンセプトを簡単に振り返ってみる。

デビュー当時ごろに出されたアルバムは学校シリーズ。それに合わせて制服を着て踊ったりもする。歌詞にも若さ故の恋愛感情だったり、怒りだったり、少し危なっかしく荒々しく、可愛げもある感じ。当時まだ未成年だったメンバーもいて、リアリティも感じる。

そこから花樣年華シリーズ。花樣年華とは“人生で最も美しい瞬間”を意味する言葉。メンバー達の年齢も平均20代前半。たくさんの人に出会い、経験し、悲しいことも嬉しいことも毎日のようにある、儚くもあっという間に過ぎ去ってしまうこの瞬間。私も歳をとってから思い出すのはきっとこの時期だと思う。その時期ならではの感情などが歌詞に反映されている。可愛げのある恋愛ごっこではなくなり、悲しい別れだって経験するし、愛というものを知る。メロディも儚く美しい楽曲が多い。
WINGSシリーズもその延長線上にあるといえる。

そしてLOVE YOURSELFシリーズ。“自分を愛すること”の重要性が込められたメッセージ。ワールドツアーなどを通して様々な国、人種、宗教のARMYたちに共通して伝えられる言葉。このシリーズで救われたARMYはきっと数知れない。

そこからMAP OF THE SOULシリーズ。結局は自分の中身の部分にフォーカスを当てられている。そしてこれまで7年間活動してきたこと、全てこのアルバムに詰まっているとRMは語る。
(長くなるのでアルバムのコンセプトの詳しい部分は省きます)


彼らの成長と共に綴られた繋がりのあるこのアルバム達は、幾つものシリーズに分けられた映画を見ているようだ。

彼らの伝えたいメッセージは、歌詞だけでなくダンス、MV、公演の演出、VCRなど、あらゆるシーンに散りばめられており、全てが意味のあるものとして完成されている。


ここまで歌唱力とパフォーマンス力を持ち合わせているのなら、伝えたいメッセージがあれば歌詞に乗せ、それをただ歌って踊るだけでも充分に見応えはある。

だけど彼らは絶対に細かい所まで手を抜かない。
もちろん彼らのメインである歌やラップ、ダンスの努力も計り知れない。
これらは私がBTSに惹かれた理由の一つでもある。



最初に言っておくと私はButterのカムバ前からの超ド新規なので、既にBTSが世界的トップスターに上り詰めた状態で彼らの存在を知ったことになる。

BTSがそうなったきっかけである「Dynamite」「Butter」「Permission to Dance」という前編英語歌詞の三部作が、アルバムではなくシングルという新しい形で生まれた。
パンデミックの中での心境を綴られたBEというアルバムも出た。これらはパンデミックによってMOSツアーが全公演中止にならなければ生まれていなかっただろうし、これらがなければ私はBTSとこうやって出会うことはなかったかもしれない。


私は遅かれど過去のアルバム達を狂ったように聴き込みながら、彼らは全編英語歌詞の楽曲を、パフォーマンスを通してどのような気持ちで世界中に届けているのだろう?どのようなコンセプトに基づいて、どんなメッセージを伝えたいと考えているのだろう?そう思いながら彼らを応援していた。

MOSまでのアルバム活動の彼らと、現在のアメリカ市場にまで拡大した活動を見比べてみると、新規にとってはまるで違うアーティストを見ているようだった。

しかし、デビュー年から見ても沢山の変化を取り入れ成長してきた彼らだ。そう考えると不自然でもなんでもなく、自然な移り変わりだと感じた。私はさらに新しい形で活動する彼らの未来がとても楽しみになった。


私がARMYになったのは2021年の春。この年、アルバムは一枚も出されなかった。今まで彼らは一年に平均2回ぐらいのペースでアルバムを出していたのだが。

BTSを好きになったきっかけが楽曲である私は、少しだけ残念に思ってしまった部分があった。次はどんなコンセプトでどんな楽曲が来るのだろうと楽しみにしていたので尚更。と同時に、なぜ出なかったのか疑問にも思った。

そうは言ってもDynamiteから世界中に知れ渡ったことで、グラミー賞にノミネートされたりビルボードチャートで1位になりまくったりしていた彼らは本当に凄いと思った。同じアジア人としてとても誇らしかった。

もしかしたら、これからは音楽市場最大規模のアメリカを中心に活動していく方向性なのかな、と私なりに考えた。正直彼らの母国語である韓国語で楽曲を聞きたいけれど、それはそれで応援しようとも思った。


しかし、グラミー賞を惜しくも受賞できなかった彼らは、悔しかったのは事実だろうが私にはそこまで悔しそうにも見えなかった。アメリカでの活動を目的にしているにしては、だ。

AMAsなどのアメリカでの活動で一生懸命英語で話をしている彼らと、ソウル公演にて韓国語で各々好きなようにクロストークしている彼らを見比べても、ソウル公演の方が口数も多く気楽で、心の荷が下りているようにも見えた。

彼らの本当の気持ちを知りたくなった。彼らは今、何を望んでいるのだろうか。


そうこうしているうちに2022年6月、念願のアルバムが出た。それは今までの活動を振り返ったベストアルバム的なやつだった。
少ないと文句を言っていた人もいたが、新曲が3曲も収録されていて私は嬉しかった。ARMYになって初めてのアルバム発売、嬉しくないわけがない。

今回のアルバムは、新たなチャプターへ幕を開けるために現時点で一旦区切りをつけ、過去の活動を“証明”するものだという。とても素晴らしいことだ。
彼らはもう10年目に突入する。過去の活動を振り返り整理することは、次へ進むための準備過程として必要なことの一つである。

私が10年以上応援しているロックバンドは、5年に一度のペースで“過去曲歌いまくるツアー”をやる。それを経て次のアルバムの準備に取り掛かる。BTSだけでなく、どのアーティストにも必要なことだ。

もちろん3曲の新曲もすごく良かった。
Yet To Comeをはじめ私の大好きなロックチューンのRun BTS、For Youth、全部期待以上だった。Disc3に関しては改めて記事に書こうと思っている。

Yet To ComeのMVは、これまでの彼らの全てを証明しているようだった。見ていて何だか遠くに行ってしまうような気がしたのは、一旦幕が降りるということにどこか寂しさを感じたのかもしれないが。

このアルバムを聞きながら、どんな展開がこれから待ち受けているのだろうと、次のチャプターが始まることへの楽しみも感じた。



そうして間もないうちに、久しぶりに防弾会食 2022が配信された。
防弾会食とは言葉の通り、彼らがお酒を片手に飲み食いしながら込み入った話をするという、普段は中々見られない様子がYoutubeにて配信されるもの。ファンにとってはめちゃくちゃありがたいコンテンツだ。2018年ぶりである。

またユンギさんのサラハンダが聞けるんじゃねぇのか〜?と呑気なことを思いながらも、リアルタイム字幕がなかったので後日字幕が付いてから見ることにした。


がしかし、最初は楽しんでいた様子のウリアミ達が配信開始から1時間ほど経つ頃に騒ぎ出した。どうも只事ではないようだ。Twitterを見る感じ、彼らの活動についての内容のようだった。


我慢できなかった私はYoutubeの自動翻訳や翻訳班に頼りながら急いで見た。

お酒を嗜み一通り食事を終えたあと彼らがARMY達に打ち明けた内容は、私が1番知りたかった、彼らの真の本音だった。


元々「ON」を中心に活動したMOSシリーズまでを、シーズン1として一旦区切りをつける予定だったようだ。そう言われるとMAP OF THE SOUL : 7のアルバムに7年間の全てが詰まっていると説明していたのも頷ける。
しかしパンデミックによりツアーなどの計画が全て崩れてしまい、そこで何かをやらなければと生まれたのがDynamite、Butter、Permission to Danceだった。幸いにもこれらが想像以上の爆発的な反響を呼び、今の結果に至ったと。

しかし、活動しているうちに自分達の方向性が分からなくなってしまった。
Dynamiteまでは自分の手の内にある状態だったけれど、Butter辺りの活動から自分達がどんなアーティストなのかを見失ってしまった。

冒頭に記したように、今までは伝えたいメッセージやコンセプトがあり、それに沿った歌詞を綴っていた。しかし今は何を伝えたら良いのかわからず、歌詞を書こうとしても浮かんでこない。自分の中にあるものを整理し、成熟させて引き出さないといけないのに、そうする時間すら与えられない。
それはグラミー、ビルボード、AMAsなどのアメリカでの音楽活動が増えたと同時に国連での演説、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談等のアイドルとは思えない活動範囲の拡大によるものだろう。

大勢の世界中の人々が彼らに期待し、求めている。自分達の中にあるものを引き出し、メッセージを発信し続けないといけない立場にいる。そのあまりに大きなプレッシャーが、彼らを苦しめてしまった。

メッセージ性を大切にする彼らにとって、かなりの致命傷である。


私の中での違和感がなくなった。全て伏線回収されたような気持ちになった。彼らはアルバムを出さなかったのではなく、出せなかったんだ。私は会食を見ながら涙が止まらなかった。


彼らは何もかもを成し遂げた。20代という人間的成長の著しい時間を、ひとつ残らず全てARMYのために使い切った。充分すぎるのではないか。

さまざまな経験をして人間的にも成熟する時間が欲しい、つまり少し立ち止まって休んで、考える時間が欲しいけれど、“ARMYにここまで育ててもらったのに、その人たちの期待を裏切ってしまうのではないか”という思いがあり悩んでいた。どこまで誠実な人たちなのだろう。彼らがファンに向けている思いは、私たちが思っている何倍も大きなものであると感じた。


更にジミンちゃんがARMY達に語りかけるように優しい口調で言った言葉。

僕たちのいう”ファン”と”ARMY”は、同じ意味であるということ。それらの意味を決して違うように考えてはいけないということ。

個人的に考えたこの言葉の意図は、彼らが「ファンの皆さん」または「ARMYの皆さん」とさまざまな場所で呼びかける時、「ARMY」ではなく「ファン」と呼ばれた人々は残念に思うことがあるかもしれない。「ARMY」という呼称に特別な意味があるために「ファン」と呼ばれると特別な存在じゃないような気がしたりする。その気持ちは私も分からないわけではない。

ジミンちゃんはその気持ちを全て理解した上で、「自分達の言葉をそのままの意味で受け取ってほしい」ということを心から伝えてくれた。

ここまで世界的なトップスターとなると、もちろんファンが大勢いる。と同時にアンチもいる。ARMYの数と同じくらい、いやそれ以上かもしれない。
もちろん影響力も物凄い。キムナムジュンがポケモンパンを買っただけでネットニュースで取り上げられ、品薄になる。SNSが中心の時代である今、彼らの言動により良くも悪くも世界中を突き動かしてしまう。

もしアンチが、彼らの発した言葉の意味を彼らの意図とは違うように捉え、それがあたかも事実のように発信していたとしても、“彼らの言葉をそのままの意味で受け取って”本人達を信じてあげることは、ファンの大事な役目であると思う。

彼らも、ARMYに対して自分自身の“気持ち”をSNS等で発信する時は、BTSという世界的トップスターの立場であることをまず頭におき、“言っても許される範囲”のラインを越えないように、言葉や言い回しを慎重に選ぶ。たとえそれが自分が本当に使いたい言葉や言い回しでなくとも、うまくそれらで伝えないといけない。彼らにとってARMYはメンバー達と同じぐらい大切な存在だというのに。

メンバー同士の関係性とは違い、“アイドル”と“ファン”という関係性はお互い必要とする存在でありながら常に“一線を置かれている”状態であるとも言える。それはこの先もきっと抗えない法則である。

もちろんその関係性だからこそ互いに愛し合えるし成り立っているのだけど、“全てを正直に話せないことが時々悲しくて、辛い時がある”とジミンちゃんは言った。この言葉は、彼らがARMYのことを家族や友達と同じように扱ってくれている証拠になるのではないか。家族や友達に話すように、ARMYにも胸の内を明かしたい時があるのかもしれない。声を少し震わせながら話す彼の表情や瞳に、偽りは無かったと私は思う。

もちろんその気持ちはARMYも同じで、彼らの正直な気持ちを知りたいと思うことは一度や二度ではないはず。友達や家族に話すように、全て打ち明けてほしいと思う。そして同じように悲しく、辛くなる時もある。

私はジミンちゃんの言葉を聞いて、Love Mazeという楽曲の歌詞を思い出した。この楽曲の歌詞について素晴らしく解説してくださっている方の、私がとても好きな記事があるので、そちらを是非見ていただきたいです。(勝手に引用してしまい申し訳ございません)


そして結果的に彼らが出した答えは、

BTSというグループとしてのアルバムはしばらく出さずに、様々なことに挑戦してみる、ということだ。

その一つがソロ活動に力を入れるということ。

活動休止なんかではない。彼らの主な活動であったアルバム活動とツアーをお休みするだけで、ソロ活動するし、CMも出るし、SNSもアップされるし、何かしら発売されたりするし、タルバンも続く。

なぜ今のタイミングでソロ活動をやっていくのかという疑問に繋がるのが、リーダーであるRMが言っていた、”自分の考えが果たしてグループの考えと一致しているのか”ということ。彼はBTSのリーダーの役目としてグループ全体の気持ちを代弁し世界中に言葉を発さないといけない。だからこそ一番悩んでいた人物であるかもしれない。

必ずしも自分のやりたいこと=グループの為になる訳ではないというのはアイドルだけでなく何事にも言えることだ。だからこそ個人活動を通して経験を積みたい、というのはとても真っ当な理由だと思う。

彼らはBTSというグループ活動のために、自分のやりたいことを制御してきた部分は沢山あっただろうと思う。というか、むしろここまで世界的トップスターのグループがソロ活動を一切していないなんて普通は考えられない。

7人でグループ活動することに執着してきた彼らのやり方も、それがむしろ魅力でもあった。箱推しやってるファンが多いのもそれが理由の一つだろうし、私もユンギペンであるが全員を同じぐらい愛していると自信持って言える。

彼らが兵役に行くのか行かないのか、もう決まっているのか決まっていないのか何ひとつ分からないが、1人ずつ順番に行かないといけないことになった時の事も考えてみると、ベストなタイミングではないかと私は思った。

ちなみに私は、Agust D単独ライブに行くのを夢見ているなどと冗談混じりに言っていたことが、この話で1%でも実現する確率が上がってしまい錯乱する程度にはソロ活動をめちゃめちゃに推している。2時間どころか5時間ラップしてても飽きないと思うよ。ユンギさん聞こえる?


それにしても、全員が同じタイミングでソロ活動をやっていくという事でも珍しいのに、場を設けてそうなったまでの経緯を添えファンにきちんと報告し、このように全ての気持ちを打ち明けてくれるアーティストが他にいるのだろうか?

私は他に知らない。

アルバムが2年、3年、5年間は出ていないアーティストは当たり前に存在する。何の前触れもなく脱退、解散するグループも山ほどいる。

正直BTSだって分からない。この先何があるか確信している人間など居ない。だから突然当たり前にBTSが活動できなくなる日が来るかもしれない。

だからこそ今、彼らの活動をどんな形であれ応援したいと思っていると同時に、ユンギさんが言っていたように彼ら自身に幸せであって欲しいと思う。

このまま自分自身を犠牲にしながらBTSとして活動し生きていった彼らに“BTSのせい”で苦しんで欲しくない。
死ぬ間際に”BTSとして生きてこれて幸せだった”と思って欲しい。

そしてそんな彼らに刺激を受けながら、自分自身も幸せであるために生きようと思う。




長々と書きましたが、とにかく今この瞬間に言いたいこと。

방단소년단, 사랑합니다!!!!!!!!!!!!

(バカデカイ声でソウルに向かって叫ぶ絵文字)


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